■エルテス<3967>の決算動向



事業別の業績は以下のとおりである。



(1) デジタルリスク事業

売上高は前期比23.4%増の2,374百万円、セグメント利益は同23.0%増の883百万円と増収増益となった。IPO検討企業や製薬企業などでソーシャルリスク対策に係る大型案件を複数受注したほか、営業秘密持ち出し事件をきっかけとして「内部脅威検知サービス」が大きく成長した。また、アクターの連結化も増収に寄与した。利益面でも、高収益の「内部脅威検知サービス」の伸びや生産性向上により大幅な増益となり、セグメント利益率も37.2%(前期は37.3%)と高水準を維持した。



(2) AIセキュリティ事業

売上高は前期比84.5%増の1,334百万円、セグメント損失は34百万円(前期は52百万円の損失)と増収及び損失幅が改善した。売上高については、ISA(株)(及びその関連会社SSS(株))の連結化が増収に寄与した。特に、PMI推進本部を中心とする(株)And Security及びISA(株)・SSS(株)の営業体制整備が功を奏し、警備事業の売上が成長した。また、警備DX受発注プラットフォーム「AIK order」についても登録者数の拡大が続いており、2023年2月には登録警備会社の対応範囲が全国47都道府県を網羅するに至っている。利益面では、増収により損失幅が改善したものの、投資フェーズにある(株)AIK(警備DXサービス)への先行費用に加え、M&Aに係る一時的な費用及びのれん償却費などによりセグメント損失の状況が続いている。



(3) DX推進事業

売上高は1,037百万円(前期は38百万円)、セグメント損失は84百万円(同65百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。売上高については、(株)GloLing及び(株)メタウンの連結化に加え、それぞれのPMI推進が増収に大きく寄与した。また、行政の住民サービスのデジタル化を実現する住民総合ポータル「スーパーアプリ」のリリースや包括連携協定を通じた自治体DXサービスも軌道に乗ってきた(詳細は後述)。利益面では、M&Aに係る一時的な費用及びのれん償却費などにより損失幅が拡大したが、第4四半期だけで見ると黒字化を実現しており、収益の底上げが進んでいる。



3. 2023年2月期の総括

以上から、2023年2月期を総括すると、戦略的M&Aを通じた業績の拡大はもちろん、成長基盤の整備により3つの事業の底上げが図られてきたこと、需要が拡大している「内部脅威検知サービス」等の営業体制が強化されたことなど、今後の成長加速に向けて多くの成果や方向性を示すことができたと評価できる。また、成長に向けた先行費用を投下しながらも、M&A先のPMI推進や高単価・高収益サービスの伸びにより利益体質への転換も進んできた。創業来、ソーシャルメディアにおけるリスクマネジメント(風評被害対策など)を軸に成長してきた同社であるが、市場の大きなセキュリティ(警備)領域や、デジタルガバメント関連、さらには「メタシティ構想」に至るまで、同社ならではの価値提供により事業領域を拡充し、進化していく道筋が具体的に見えてきたと言える。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)