■クリーク・アンド・リバー社<4763>の業績動向



2. 事業セグメント別動向

(1) クリエイティブ分野(日本)

クリエイティブ分野(日本)の売上高(社内取引含む、以下同様)は前年同期比15.8%増の17,343百万円、営業利益は同1.3%減の1,460百万円となった。シオングループほか2社を子会社化(出資比率100.0%)したことにより、売上高で1,243百万円増加し、のれん償却(35百万円)後の営業利益も数千万円の増益要因になったと見られる。増収にも関わらず減益となったのは、好採算案件がなくなった反動でゲーム分野が減益となったことや、収益認識会計基準の影響(第1四半期)によりWeb分野で30百万円の減益となったこと、また積極的な新卒採用(前年同期比175名増の277名)に伴い人件費や教育研修費が増加したことなどが主因だが、おおむね会社計画どおりの進捗となった。



領域別業績の前年同期比伸び率を同社が開示している売上高構成比から試算すると、映像(テレビ、映画)分野は33.0%増収、23.4%増益となった。M&A効果を除くと、1ケタ台前半の増収増益だったと見られる。テレビ放送各局の番組制作需要を的確に捉えた自社企画・制作番組が堅調に推移した。また、シオングループとの協業により企画・制作した番組も中京圏で1件の実績を挙げており、今後も両社の得意領域を融合した新たな番組の企画が進展するものと期待される。



ゲーム分野は15.8%増収、6.7%減益となった。旺盛な制作受託ニーズに対応するために、業界未経験者の育成や外国籍人材の積極的な採用を進めたことで、売上高は2ケタ成長を継続したものの、好採算案件がなくなり減益となった。また、上期中のリリースを予定していた次世代拠点シミュレーション×NFT軍団バトルゲーム「HERO SPIRAL(ヒーロースパイラル)」については、共同開発先で同社の出資先でもあるシンガポールのDigital Entertainment Asset Pte.Ltd.(以下、DEA)からの仕様変更の要望もあり、リリース時期を延期した。同タイトルはDEAが運営するWeb3※上のゲームプラットフォーム「PlayMining」でプレイでき、同社は開発費のほかパック形式で販売されるNFTカード等のレベニューシェアを得るスキームとなっていた。



※Web3は分散型インターネットと呼ばれており、ブロックチェーン技術を用いてデータを分散して管理することで、データの改ざんを困難にしている点が特徴として挙げられる。暗号通貨の送金やNFT商品の売買などで利用されている。





Web分野(紙媒体含む)は1.4%減収、2.5%増益とほぼ前年同期並みの水準にとどまったが、納品のタイミングや収益認識会計基準等の影響によるもので、実際には企業や官公庁からの受注は旺盛で繁忙状況が続いていると言う。官公庁案件としては新たに防衛省から「令和5年度 自衛官等採用広報媒体の制作」を受注し、自衛官採用に向けた広報・プロモーション活動を支援した。



電子書籍・YouTube等分野は22.8%減収、7.5%減益となった。「漫画LABO」で制作されたオリジナルコミックの販売が低調に推移したことが主因だ。オリジナルコミックの販売回復時期については2025年2月期以降になると見られる。電子書籍の取次販売についても巣ごもり需要の一巡により伸び率が鈍化した。Youtube関連は広告収入が競争激化による単価下落の影響で減少したものの、企業やテレビ番組のYouTubeチャンネルの運用受託が着実に増加し、全体では若干の増収増益となった。総チャンネル数(ネットワークするYouTubeクリエイターのチャンネル含む)は2023年8月末時点で500チャンネルと前年同期の400超から拡大したが、前期末比では横ばい水準にとどまっており、下期以降は伸び悩む可能性がある。



新規エージェンシー・その他分野(建築、コンピュータサイエンス、ライフサイエンス、アグリカルチャー、CXO、アスリート、舞台芸術、XR等)の売上高は15.8%増と伸長したが、引き続き投資が先行し1億円強の損失を計上したと見られる。建築分野において、一級建築士等の紹介及び設計・建築の受託案件が堅調に推移したほか、コンピュータサイエンスやライフサイエンスなどのエージェンシー事業が伸長した。また、2020年に開始したCXO分野についても、登録者数が1,500名程度まで増加するとともに紹介案件も増え始め、増収に貢献した。XR(VR/AR/MR)分野においては、「ファストVR」の販売が堅調に推移したほか、XR導入支援等のコンサルティング等を行い、ハードからコンテンツまで一貫したソリューションの開発・販売に取り組んだ。建築分野で2021年12月にオープンしたVR建築展示場「XR EXPO(R)」や、2022年11月に提供を開始したメタバース上の住宅展示場プラットフォーム「超建築メタバース」は時代を先取りしたサービスとして展開しているが、普及するまでにはしばらく時間がかかるものと見られる。



(2) クリエイティブ分野(韓国)

クリエイティブ分野(韓国)の売上高は前年同期比3.5%減の1,709百万円、営業損失は14百万円(前年同期は3百万円の損失)となった。主力となるテレビ局向け人材派遣(エージェンシー)事業の売上高が、景気低迷の影響で同6.7%減の1,612百万円と落ち込んだことが減収要因となった。ただ、人材派遣事業は黒字を確保している。一方、デジタルコミック(Webtoon)を中心としたコンテンツ事業は増収となった。その主因は、2019年に韓国で配信を開始したオリジナルWebtoon「猟犬たち」がNetflixオリジナルドラマとして放送されるなど、収益拡大につながる新たな仕組みづくりが順調に進んだことのほか、オリジナル作品の海外での配信にも引き続き取り組んだことにある。ただ、制作コスト負担が重く損失が続いていることから、今後は制作プロセスの見直しによるコスト低減も図りながら、早期に黒字化を実現する方針だ。



(3) 医療分野

医療分野では、子会社の(株)メディカル・プリンシプル社(出資比率100.0%、10月決算)で「民間医局」ブランドによる医師紹介事業を中心に、医学生・研修医を対象とした合同説明会「レジナビFair」や「レジナビFairオンライン」、臨床研修情報サイト「レジナビ」、若手医師向け情報収集サイト「民間医局コネクト」等のサービスを提供している。また、2021年6月に介護事業を含む効果的な地域医療周辺サービス事業や新規クリニック経営支援サービスを展開するために、(株)コミュニティ・メディカル・イノベーション(出資比率100.0%)を新設した。



売上高は前年同期比5.1%増の3,347百万円、営業利益は同2.5%増の1,175百万円と過去最高を連続更新した。新型コロナワクチン接種に係るスポット案件の減少が173百万円の減収減益要因となったが、全国各地での慢性的な医師不足を背景に、医師紹介案件の増加が続いたほか、「レジナビFair」も大規模会場でのリアル開催を再開したことで増収増益に貢献した。クリニック経営支援サービスは顧客先が2施設と変わらず、売上高は横ばい水準にとどまったが、2025年2月期には新規施設を追加し、将来的に47都道府県で展開することを目標としている。なお事業別の売上高は、エージェンシー事業が同1.2%増の2,460百万円、「レジナビFair」を中心としたプロデュース事業が同18.2%増の592百万円、その他が同16.3%増の294百万円となった。その他については、医師向けの保険販売代理店事業(医師賠償責任保険)が含まれており、会員数の増加に伴って販売額も伸びている。同社の販売する保険商品は団体割引が適用されており、個人で契約するよりも料金が20%安くなるメリットがあるため、「民間医局」の会員数増加とともに販売も伸び続けている。



(4) 会計・法曹分野

会計分野は子会社のジャスネットコミュニケーションズ(株)(出資比率100.0%)、法曹分野は(株)C&Rリーガル・エージェンシー社(同90.0%)でエージェンシー事業を中心に展開している。売上高は前年同期比13.0%増の1,272百万円と過去最高を更新し、営業利益も同47.4%増の92百万円と2期連続の増益となった。



同社が開示している分野別売上高構成比から試算した会計分野の売上高は前年同期比15.8%増の1,086百万円、営業利益は同76.8%増の75百万円となった。コロナ禍が一巡し、企業の会計業務に関わる人材需要が回復してきたことに加え、セミナー開催等による認知度向上を図り、会計士や税理士等の登録者数増加に取り組んできたことが増収増益要因となった。一方、法曹分野については若干の減収減益となった。弁護士登録数は前期末の約2.2万人から着実に増加しているものの、紹介案件が上期は伸び悩んだことが響いた。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)