■網屋<4258>の事業概要



2. 事業セグメント

(1) データセキュリティ事業

データセキュリティ事業は、国内外5,500以上の契約実績(累計)を誇るログマネジメントサービス「ALogシリーズ」を中心に展開している。独自のログ翻訳変換技術と人工知能(AI)の不正予兆検知により、専門知識やノウハウがなくとも、高度なログ活用を実現できる。ファイルサーバだけでなく他のサーバやネットワーク機器のログを広範囲に管理できるため、内部不正対策やサイバー攻撃対策、障害原因の追究、ワークスタイルの変革などの課題解決に活用されている。



同事業で販売する製品は、富士通<6702>、デル・テクノロジーズ(株)などのサーバに付帯するセキュリティソフトウェアである。そのため、ハードベンダー、またはそれらを再販売するディストリビュータ(流通業者)などが主な販売代理店となっており、販売代理店を経由した間接販売が中心の事業である。いずれも大手企業のため、債権回収リスクの低減にもつながっている。



売上高は、(1) スポット売上高として「ALogシリーズ」のソフトウェアライセンス販売費、導入に関わる設計・構築費など、(2) ストック売上高としてのソフトウェア年間保守料、から構成される。新規ソフトウェアライセンス販売により、翌年以降ソフトウェア年間保守料が売上に上乗せされる構造となっており、順調に利益は拡大を続けている。2022年12月期のストック売上比率は63.0%(前期58.8%)を占め、売上総利益率は81.1%(同84.0%)と利益率は高い。主な売上原価は、開発費、保守サポート要員の労務費及び外部委託費である。一方、同社では主力製品である「ALog」のクラウド版リリースに伴い、料金体系をサブスクモデルに変更することで収益構造の転換を図るほか、教育事業等の新規事業も加わり、2025年12月期までにデータセキュリティ事業にて年平均成長率(CAGR)30%以上を目指す。



データセキュリティ事業ではあらゆるログを管理できるソフトウェアを開発・販売する。ログ管理は、監視ビデオと同じように事件後の追跡素材や証拠資料として重要な役割を担う。例えば、社内関係者によるデータ持ち出しの監視、外部からのサイバー攻撃検知、テレワーク下での労務管理など、あらゆる企業運営に関わる挙動に対してログが利用されている。同社が提供する「ALogシリーズ」には、サーバアクセスログ管理ソフトウェア 「ALog ConVerter」(エーログコンバータ)と統合ログ管理「ALog EVA」(エーログエヴァ)、そして2023年2月28日にリリースされたクラウド版ログマネジメントサービス「ALog Cloud」(エーログクラウド)の大きく3種類のラインナップがある。



(a) 「ALog ConVerter」

「ALog ConVerter」は、情報漏洩など内部不正の抑止のために使用されるログ管理製品である。重要データが格納されている大規模なファイルサーバやストレージサーバの操作を記録するものとして利用される。誰がいつどこでファイルを編集・削除・持ち出ししたのかを記録することで、社内において情報漏洩を監視・抑制できる。特長は、複雑なログを分かりやすく視認できるものに分析変換する加工技術である。他社製品の多くは大量かつ複雑なログをそのまま記録保管するのみだが、「ALog ConVerter」は、それを見える化する解析処理技術を有している。ログが分かりやすいため、有事の際には即時検知に役立てることができる。他社のログ管理製品は、パソコンからログを取得するPCログ管理製品がある。PCログ管理製品の場合、PC全台にエージェント※システムを設置してすべてを監視する必要があり、運用に相当の手間がかかる。また、PC台数分のライセンスが必要なため、高額なコスト負担が発生する。「ALog ConVerter」は、重要データが保管されているファイル共有サーバに焦点をあてており、PC全台の監視を要さないことから、導入が容易でコスト負担が低い。さらに、従業員を監視せずにデータのみを監視できるため、プライバシーを保護した形でセキュリティ対策ができる。



※「代理人」を意味し、IT分野では、指定された情報を自動的に取得するなど、利用者や他のシステムに代わって動作するソフトウェアのこと。





(b) 「ALog EVA」

「ALog ConVerter」がファイルサーバのログ管理に特化しているため、ファイルサーバ以外のあらゆるログを広範囲に管理できる製品を提供するべく「ALog EVA」が開発された。「ALog EVA」はあらゆるサーバやネットワーク機器などのログを管理する製品で、統合ログと呼ばれる製品カテゴリに属している。複雑な設計を要さないようにあらかじめ設計済みのテンプレートを標準提供しており、サイバー攻撃検知やテレワーク下での勤怠管理などが簡単にログで実現できる。



従来のログ管理製品は、大量かつ複雑なログを効果的に活用できずにいた。同社では、ログの整理化、意味付け、活用方法を展開したテンプレートを標準付帯として提供している。また、AI機能が搭載され、不審・不穏な挙動を過去のログから自動判定する機能を提供している。事後追跡としてのログの活用から、予兆検知による不正の未然防止として利用できる。



(c) 「ALog Cloud」

同社では2023年2月28日に、ログ管理製品「ALog」がクラウド対応したSaaS版「ALog Cloud」を販売開始した。今までは顧客が「ALog」ソフトウェアライセンス及び「ALog」用サーバを購入し、顧客自身が「ALog」を運用してログ管理を行っていた。そのため、「ALog」はシステム運用スキルを持つ大手企業が主要な販売領域になっていた。一方、「ALog Cloud」では、インターネット上のSaaSサービスとして提供されるため、顧客によるサーバの購入やシステム運用の必要がなく、導入と運用が飛躍的に簡便化されたことで準大手・中堅・中小企業でも導入しやすい。同社ではこの「ALog Cloud」を大手企業に比べて圧倒的に企業数が多い準大手・中堅・中小企業に向けて販売を強化していく方針である。大手企業を中心に既に「ALog」は導入が寡占化されており、今後は製品競争力の高まりに加え、市場規模拡大の起爆剤となり得る。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)