■中期経営計画



網屋<4258>は2023年3月30日に2023年12月期から2025年12月期までの3年間を対象とした中期経営計画を発表し、最終年度の2025年12月期の業績目標として、売上高6,000百万円(2022年12月期実績は2,986百万円)、営業利益600百万円(同263百万円)を目指す方針を打ち出した。対象期間中の売上高成長率(CAGR)は年率25%超と成長加速が見込まれるが、これをけん引するのが、(1) 主力製品である「ALog」をクラウド&サブスク化し、収益構造の転換を図ること、(2) 「CSIRTサービス事業」、「セキュリティエンジニア養成事業」を新たに開始し、年間の売上高10億円を目指すこと、(3) セキュリティ総合プロバイダとして、必要となる構成要素に対して提携や投資を積極的に実施すること、(4) 労働者不足を解消する「SaaSインフラサービス」のストック率を55%から64%へ高めること、などが掲げられている。主力製品のサブスク化を中心としたストック売上の大幅拡大を目指しており、同社では全社ARRを2025年12月期の中期経営計画最終年度に2022年12月期比で2.3倍に設定、2020年12月期から2022年12月期3年間におけるARR成長率135%に対して、本中期経営計画期間中は180%へ伸長させる計画である。



同社が2023年12月期より進めている「ALog」のサブスクモデルへの転換については、従来の売り切りモデルから年間定額モデルへの移行を進めており、新規顧客については2023年春から、既存顧客については2024年から順次シフトする計画である。従来の販売モデルにおいては、新規のソフトウェア購入時に顧客が150〜200万円を導入費用として支払い、その後は約10%の保守費用のみが顧客の負担となっていたが、新しく導入されたサブスクモデルにおいては、顧客は150〜200万円を毎年継続して支払うことになる。一見すると、単純に支払い費用が大幅に増加するかのようだが、従来のオンプレ型では顧客の総負担額としてソフトウェア導入費用だけにとどまらず、サーバ費や構築費などが必要となるため、新モデルのクラウド型へ移行することでこれらの負担が不要となり、5年間のサブスクとした場合の総費用はオンプレ型と大きく変わらないように設計されているのがポイントである。また、ログに関しても従来はファイルサーバのみを対象としていたが、新しい「ALog Cloud」においてはシステム全域が対象となっており、従来のファイル操作の監視だけにとどまらず、サイバー攻撃の監視や怠慢勤務の監視、内部不正の感知などセキュリティ対策をひとまとめにすることができるため、顧客が負担する総費用は軽減される仕組みとなっている。



また、これまでのオンプレ型の「ALog」においてはサーバ費なども含めた初期導入コストが高額となるなど、準大手・中堅・中小企業においてはサイバーセキュリティへの対策が大企業と比較すると後手に回っていた。一方、セキュリティリスクを意識した顧客やサプライチェーンの上流にある大手企業側が、サプライチェーンの下流にある中小企業に対して、「セキュリティ対策を適切に行っているか」をチェックする動きもあり、これら準大手・中堅・中小企業においても、今後徐々にセキュリティ対策に本腰を入れる動きが強まることが想定される。そのようななか、同社はクラウド版である「ALog Cloud」の導入により、従来は大手偏重だったものが、準大手・中堅・中小企業まで販売領域を拡大できる。さらにはログをクラウド上に集約できるため、同社がセキュリティの運用を包括受託する事業機会の拡大につながると見られる。それでも顧客にとっては5年間で1,000万円前後の総コストが発生するため、同社では比較的規模が大きな準大手や中堅企業から導入を促進する方針である。今後はさらに導入コストを廉価にした簡易的なクラウド版を導入することで、小規模の企業への導入促進を狙うものとみられる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)