■今後の見通し



2. 中期経営計画と長期ビジョン

(1) 中期経営計画

神戸物産<3038>は2024年10月期からスタートの3ヶ年の「中期経営計画2024-2026」を発表した。中期ビジョンとして「PB商品を強化し、業務スーパーを中心として事業の継続的な成長を目指す」ことを掲げ、その実現に向けた基本方針として、1)業務スーパーの継続的な成長、2)国内PB商品の生産能力強化、3)外食・中食事業の拡大、の3点に取り組んでいく。業績目標としては、最終年度となる2026年10月期に売上高5,430億円、営業利益370億円を掲げた。3年間の年平均成長率は売上高で5.6%、営業利益で6.4%となる。また、収益性指標としてROICを重視し、2023年10月期の13.6%から2024年10月期以降は10%以上を維持し、毎期向上を目指す方針とした。



主力の業務スーパー事業では、店舗数を1,130店舗以上に拡大するほか、既存店向け商品出荷額を毎期2%以上成長させること、PB商品売上比率を37%(前期実績34.57%)まで向上させること、PB商品拡大のためグループ会社の設備投資を毎期100億円以上実施すること、加盟店に対して省エネ什器や自動発注システムなどの導入を促し、店舗運営の効率化を図ることなどを重点施策として取り組んでいく。店舗数については、3期間で82店舗以上と控えめな目標となっている。昨今の建築コスト上昇を考慮してのものと思われるが、条件に適う物件が見つかればFCオーナーの投資意欲も旺盛なことから、十分達成できる水準と弊社では見ている。また、既存店向け商品出荷額2%以上という目標についても、直近10期間の年平均成長率が5%を上回っており、巣ごもり需要の反動減があった2021年10月期でも2.4%の伸長だったことからすると、十分達成可能な水準と考えられる。



PB商品売上比率37%の目標については、NB商品の動向にも影響を受けるため流動的ではあるものの、少なくとも自社グループの生産能力増強、並びに人手不足対策のための省力化に向けた設備投資を毎期100億円以上実施し、グループ会社の生産体制を強化することでPB商品の売上拡大を図る方針だ。直近3期間では合計約180億円の設備投資を実施したが、商品によっては欠品が生じるなど、機会ロスが発生する状況にあった。同社では3期間のうちに新工場を2ヶ所以上稼働させる計画を立てており、そのうち1ヶ所は前述した宮城製粉の新工場である。2ヶ所目以降は複数のグループ会社で計画が進んでいるが、建築コストが上昇していることもあり、稼働時期に関しては2026年10月期の後半頃となる見通しだ。そのほか、省力化投資や設備の老朽化に伴う更新投資などを各グループ会社にて必要に応じて実施していく。



店舗運営の効率化に関しては、2023年10月期より省エネ什器の導入を直営店で進めている。具体的には、オープン型の冷凍ショーケースをクローズ型に置き換えて、売上高や電力費に与える影響について検証している。クローズ型にすると商品の取り出しが面倒になるため、冷凍商品の売上が落ちると言われてきたが、同社の直営店で1年間試しに設置してみたところ、売上に変化は見られず、電力消費量も削減できたと言う。このため今後出店する新店では、クローズ型の冷凍ショーケースの導入が進むと予想され、既存店においても費用対効果でプラスになると判断すれば、置き換えをFCオーナーに提案する予定である。また、省人化施策としてセルフレジのほか自社開発した自動発注システムの導入も進める。従来、商品の発注業務は担当者が日々、状況に応じて行うなど属人的で経験年数が必要とされてきたが、自動発注システムの導入で関連業務が簡素化される。直営店舗で導入したところ、担当者の業務負担が大幅に軽減するなど具体的な効果も確認できたため、今後、FC店舗への導入を進める。現在、ソフトウェアの改修作業を行っており、完了後に本格導入を始める考えだ。



外食・中食事業については、3業態合計で200店舗を目指すこと(2023年10月期末148店舗)、また「プレミアムカルビ」でFC展開を開始することの2点を重点施策として取り組んでいく。「プレミアムカルビ」のFC展開については、直営店を30店舗程度まで増やして人材基盤を強化し、FC化しても一定のサービス品質を維持することが可能な教育体制や運営体制を確立してから開始する予定だ。



(2) 長期ビジョン

同社は長期ビジョンとして、「『良いものをより安く』を大義に、食の総合企業としてお客さまの豊かな暮らしを支えていく」ことを掲げており、長期ビジョン達成に向けた目標も明らかにした。具体的には、業務スーパー事業において店舗数を1,500店舗以上、PB商品売上比率を40%以上、外食・中食事業の全業態で500店舗以上を目標として設定した。また、PB商品の売上比率の上昇による売上総利益率の向上、並びに物流拠点への投資による販管費率の改善などによって、連結営業利益率10%以上を目指す。



「業務スーパー」の店舗数については、地域別の人口当たり店舗数が最も多い関西地域をベースに考えると、1,600店舗程度まで拡大余地があり、達成可能な水準と弊社では見ている。具体的には、地盤である関西地域では人口100万人当たりの店舗数が13.1店舗とその他の地域と比較して1.7〜2倍の出店数となっており、関西地域と同様の規模の店舗数が全国に広がったとすると単純計算で1,633店舗となる。また、関西地域も伸びは鈍化したとはいえ、今なお店舗数の増加が続いていることを考えれば、店舗数の拡大余地はさらに大きくなる。一方で、地域ごとに強い食品スーパーがあることも事実で、三大都市圏の1つである愛知県では出店数が26店舗と直近4期間でわずか1店舗の増加にとどまっている。人口100万人当たりで換算すると3.5店舗と低水準にとどまっており、今後、こうしたエリアを開拓することでも店舗数を拡大していく余地はある。なお、東京23区内の人口密集地においては50坪程度の小型店舗での展開を行うべく検討を進めており、収益モデルを確立したのちにFC展開する計画である。



PB商品売上比率40%以上に向けて、グループ会社の生産能力増強や海外の新規商材開拓に加えて、M&Aによるラインナップ拡充にも継続して取り組む方針だ。また、外食・中食事業の店舗数については、「馳走菜」が業務スーパーに加えて他業態での出店が進む可能性もあり拡大余地が大きいほか、「プレミアムカルビ」についても競合店が300店舗を超えていることから、FC展開が開始されれば店舗拡大が加速するものと予想されるため、500店舗という目標については達成可能な水準と弊社では見ている。



物流拠点への投資については、ボトルネックとなっているエリアでの整備・強化を進めるほか、首都圏で大型物流センターの開設を予定している。2022年10月期に横須賀リサーチパーク内に約1万坪の土地を取得済みで、物流センターに加えて食品加工工場も併設する計画である。総投資額は300億円程度となる見通しで、開設時期は2027年10月期以降になると見られる。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)