■業績動向



3. セグメント別業績

(1) ITサブスクリプション事業

ITサブスクリプション事業は成長率が高く、市場規模も大きいほか、ストック収益化による持続的成長が可能となる。法人向けPC市場はサブスクリプション・リース・購入といった保有形態があるが、サブスクリプション型の認知度が年々高まり、その比率が拡大している。パシフィックネット<3021>のサブスクリプションは故障対応などのPC管理といった保守サービスを含んでいるほか、中途解約は月単位で可能、経理処理はオフバランスで費用も平準化されるため、企業にとってはメリットが大きい。さらに同事業はPC利用後の回収・データ消去までを担うITAD事業と組み合わせることでワンストップのサービス適用が可能なため、企業にとっても非常に使い勝手のよいサービスとなっていることから利用が拡大している。同事業は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)でも着実に成長し、2019年5月期から2024年5月期第2四半期までの年平均成長率は27.6%となっている。PC更新拡大期に入ることから、成長率は一段と上昇する可能性が高いと弊社では考えている。



ITサブスクリプション事業の2024年5月期第2四半期の売上高は2,336百万円(前年同期比4.6%増)、セグメント利益は299百万円(同5.7%増)となった。前年同期は資産売却などによる一時的な売上高・利益の増加があったため、売上高及び利益は前年同期比微増に留まったが、増収増益を確保できており、事業は順調に成長したと言える。売上面では好調なサブスクリプション契約の受注積み上げにより、ITサブスクリプション事業の特徴であるストック収益を着実に拡大し、前期の一時的な売上高の増加分の影響をカバーして、前年同期比増収を確保した。受注の積み上げ成功の背景としては、1つは受注案件規模の拡大である。従来は従業員数100〜200人規模の企業からの受注が多かったが、最近は従業員数1,000人を超える規模の企業からの受注が増加した。もう1つは地方の企業の積極的な開拓である。同社の新規開拓方法は、基本は各種の展示会に参加して同社のサービスを宣伝し、反応のある顧客に対して営業活動を行うというものだが、東京、大阪、名古屋などの大都市で開催する大型の展示会では地方から訪れる顧客も多く、その顧客に対しても積極的な営業を仕掛け、受注を獲得したようだ。



利益は5.7%の伸びであるが、前期の資産売却による利益やサブスクリプション資産の耐用年数見直しに伴う減価償却費減少の影響を除けば、実質前年同期比58.7%増と、大幅な増益となる。この要因としては資産稼働率が向上しているのが大きい。具体的にはサブスクリプション資産の世代交代を図るとともに、中長期レンタルの顧客には極力ジャストインタイム方式での仕入を行い、短期レンタル利用の顧客には最小限の在庫で円滑な供給ができるようにオペレーションの業務改善を実施するなど、在庫水準を適正化したことで、収益性を向上させた。コスト面では、重要な成長機会に向けて投資(サブスクリプション資産の継続取得、東京テクニカルセンターへの設備投資や地域拠点の移転・拡張、IT人材の積極採用、DX推進など)を行い、先行コストは引き続き増加したものの、サブスクリプション資産の稼働率が向上したことなどにより、先行投資による増加コストをカバーした。なお、2023年5月期からサブスクリプション資産の耐用年数を変更している。これは、新基幹システムの稼働により分析能力が向上し、長期サブスクリプションの拡大による経済的使用可能期間が長期化傾向にあることが確認されたためである。



(2) ITAD事業

ITAD事業においては規模ではなく、収益性の向上や環境変化への対応力強化を現状での基本方針としているため、これに向けた構造の改革を実施している。2024年5月期第2四半期の売上高は812百万円(前期比16.2%減)、セグメント利益は228百万円(同10.6%増)となった。国内の新規PC出荷台数の低迷の影響により、法人・官公庁からの使用済みPCの排出は本格回復には至らず、回収台数は前期比で減少した。また、大部分を占める低スペック品については、一時期の国内市場価格の下落は一段落したが、使用済みPCの排出台数減少の影響は大きく、サービス収益以外の売上高は減少した。利益面については、リユース販売において、採算性の高い高スペックのサブスクリプション終了品を優先的に確保して販売することに注力し、売上高の増加より利益の成果を求める方針を進め、収益性を向上させた。一方でデータ消去・引取回収・排出管理BPOなどのサービス収益は、サービス範囲拡張や営業強化策により順調に業績を拡大している。同社としては、収益性重視の考え方からサービス収益部門は今後も積極的に拡大し、使用済みPCのリユース販売については収益性の見込める案件に絞って対応する方針で、引き続き収益性の向上を目指した事業展開を行う考えだ。また、2022年11月に開始した「排出管理BPOサービス」や従来からのデータ消去サービスにおいては、複数の大企業からの受注獲得や商談が増加しており、このサービスをトリガーとしてITサブスクリプションやLCMサービス全般への展開・拡大が見込めるため、同社の業容拡大への貢献が期待される。



(3) コミュニケーション・デバイス事業

コミュニケーション・デバイス事業では、ワイヤレスガイド機「イヤホンガイド(R)」の製造販売・レンタル・保守・メンテナンスを手掛けている。観光業界で利用されるワイヤレスガイドでは90%以上の圧倒的シェアを有する。2024年5月期第2四半期の売上高は113百万円(前年同期比46.3%増)、セグメント利益は14百万円(前年同期は14百万円の損失)と黒字に転換した。新型コロナウイルス感染症のいわゆる「5類移行」を受けて観光業界を巡る環境は急速に改善した。特に2024年11月期第2四半期は秋の観光シーズンにも当たるため、訪日旅行をはじめ修学旅行を含む国内団体旅行などの増加によってイヤホンガイドの需要が伸び、業績回復への動きが鮮明となった。また国内市場での新規開拓に注力してきたこともあり、大規模工場見学や美術館鑑賞など、非旅行分野での法人利用が拡大した。業績改善を受け、在庫の確保やメンテナンス工場の生産性向上策を実施し、今後の受注増に対応できるよう体制整備も行っている。



(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)