■業績動向



1. 2023年12月期の業績概要

シンシア<7782>の2023年12月期の連結業績は、売上高5,961百万円(前期比6.7%増)、営業利益377百万円(同150.5%増)、経常利益446百万円(同295.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益295百万円(同347.2%増)と増収、大幅増益となった。2022年12月より開始したコンサルティング事業をセグメントとして区分したが、売上高は60百万円と小さく、コンタクトレンズ事業が主体となって増収増益をけん引している。コンタクトレンズ事業においては、自社ブランド製品の売上高が同14.4%増と順調に推移しており、主力製品である「シンシア S」シリーズが好調だ。自社ブランドの約6割を占めるブランドであり、同36.3%増と伸長している。第3世代と言われる新素材シリコーンハイドロゲルを採用し、高い酸素透過率と柔軟性を確保したことで、眼科医、ユーザーから高い評価を受け、処方施設である眼鏡店やコンタクトレンズ量販店を中心に取り扱いが拡大しているようだ。広告費・販売促進費を同22.8%増と62百万円増やし、積極的な拡販施策を講じたことも奏功した。一方で、価格競争の厳しいプライベートブランドは、円安による受注単価引き上げなどにより受注が減少し、売上高は同7.3%減となった。なお、コンタクトレンズ事業の売上高には、2022年11月より業務を開始した薬事申請支援コンサルティング及び選任製造販売業者(DMAH)サービスの売上高11百万円が含まれている。コンタクトレンズ事業における品質管理部署が同業務を兼務担当しているため、コンタクトレンズ事業に含めている。



損益面では、売上総利益率が30.9%と前期比5.8ポイント増と大幅に上回り、売上総利益は前期比31.4%増となった。円安が進行したものの、適正な販売価格への価格改定を進めたほか、海外の協力工場からの仕入価格の引き下げ、仕入先の絞り込みなどのコスト改善努力が奏功したと言えよう。また、自社ブランド製品の売上比率が向上したことも大きな要因だ。営業利益率も同3.6ポイント改善し、営業利益は前期の2.5倍となった。コンタクトレンズ事業のセグメント利益が同59.4%増となったことに加えて、コンサルティング事業が29百万円収支改善と黒字転換したことが寄与した。経常利益は、営業利益にデリバティブ評価益が加わり前期の約4倍となった。ドル建て仕入の為替ヘッジを目的とした為替差損益及びデリバティブ評価損益が合計で前期より102百万円改善した。2023年からM&AやPMIを進めるため事業推進部を設置し、2022年11月に譲り受けた医療脱毛クリニック運営のコンサルティング事業の収益化を着実に進めた。さらに、2023年11月にはリユース業界向けPOSシステムを開発・販売するタロスシステムズを連結子会社とし、事業の多角化を進めている。



2.事業セグメント別動向

(1) コンタクトレンズ事業

コンタクトレンズ事業の2023年12月期売上高は5,901百万円(前期比5.7%増)、セグメント利益は576百万円(同59.4%増)と増収増益となった。自社ブランドの売上高は、3,777百万円と同14.4%増と順調に推移した。クリアレンズは同14.1%増、カラーレンズ(サークルレンズを含む)も同15.6%増と、ともに同様の伸び率となった。そのうち主力製品であり、同社として販促を強化した「シンシア S」シリーズは、売上高は2,261百万円、同36.3%と伸長し(2年間で約1.9倍)、自社ブランドに占める割合も前期の5割から約6割へとアップした。「シンシア S」シリーズは眼科医の処方箋を取り扱う店舗チャネルでの販売ブランドであり、眼科医の高い評価を受けて、取扱店舗数は2021年12月期の1,890店から2023年12月期には約1.3倍の2,410店と増加傾向にある。一方、プライベートブランドの売上高は2,112百万円と同7.3%減と落ち込んだ。カラーレンズの売上高は、外出需要が持ち直し同3.6%増となったが、価格競争の厳しいクリアレンズは受注価格引き上げや販売先の計画進捗の遅れなどにより受注が減少し、同11.4%減となった。以上の結果、プライベートブランドに比べ利益率の高い自社ブランド製品の売上比率は64.1%と前期を4.9ポイント上回った。



(2) コンサルティング事業

コンサルティング事業の2023年12月期売上高は60百万円(前期は5百万円)、セグメント利益は15百万円(前期は14百万円の損失)と増収増益となった。従来からのM&A検討チームが2023年1月より事業推進部として独立し、医療脱毛クリニックの管理運営及びWebマーケティングによる集客のコンサルティング支援を行っている。2023年1月〜5月のクリニックの実績は、売上が前年同期比25%増、新規予約件数が同10%増とコンサルティングの効果が発現しているようだ。



3. 財務状況と経営指標

2023年12月期の資産合計は、現金及び預金の1,061万円の増額に加えて、タロスシステムズへの出資にかかるのれんが291百万円、売掛債権・在庫が254百万円増加したことなどで5,400百万円と前期比1,823百万円増加した。純資産合計も、親会社株主に帰属する当期純利益295百万円に、タロスシステムズの非支配株主持分73百万円や繰延ヘッジ損益132百万円などが加わり、2,483百万円と同496百万円増加したが、自己資本比率は資産増加が大きかったため、44.6%と前期を11.0ポイント下回った。



2023年12月期は、同年11月にタロスシステムズの株式51%を371百万円で取得したことにより、投資活動によるキャッシュ・フローは376百万円の支出となった。一方、営業活動によるキャッシュ・フローは増益により246百万円の収入、財務活動によるキャッシュ・フローは運転資金の増加、子会社投資などに伴い長短借入金を増やしたため1,177百万円の収入となり、現金及び現金同等物が1,061百万円増加した。事業の多角化に備えて、手元資金を厚くしている。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)