会いに来て(8月13日)きょうは盆の入り。帰省した身内とともに亡き人を迎える家庭も多いだろう。生前に受けた恩を改めて思い返し、新たな一歩を踏み出す。そんな夏の節目ともなる。いわき市で先日、心に残る告別式があった。亡くなった女性は、激務の警察官を支える妻として77年の生涯を全うした。孫の少女が遺影に語り掛けた。入院中、なかなか見舞いに行けなかったのが心残りだった。「さよならは言わない。いつでも会いに来て」。飾らない訴えが参列者の胸を打った。民俗学者、柳田国男が岩手県遠野地方の伝説をまとめた「遠野物語」。1896(明治29)年に三陸沿岸を襲った津波で亡くなった妻と浜辺で出会う男性の話が出てくる。妻はあの世で、結婚前に親しかった別の男性と夫婦になっていた。何か思いを伝えたかったのだろう。にっこりほほ笑んだという。東日本大震災後も、「津波で命を落とした家族が現れた」といった不思議な話が被災地で相次いだ。いわきの葬儀で読経した僧侶は「亡き人の魂は、今この会場に漂っています」と説いた。優しいほほ笑みをたたえた遺影の女性は、かけがえのない孫の言葉が何より胸に染みたはずだ。