勇壮に時代絵巻を繰り広げる国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」は29日、相馬、南相馬両市で開幕した。今年は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で中止を余儀なくされていた南相馬市小高区での騎馬武者行列が7年ぶりに復活した。
 同市小高区の沿道には地域住民ら約400人が詰め掛け、小高、標葉両郷の騎馬会員と共に行列復活を喜び合った。
 宇多郷、北郷、中ノ郷、小高郷、標葉郷から約440騎が出場し、復興と地域の安寧を願い威風堂々と歩を進めた。30日は雲雀ケ原祭場地で甲冑(かっちゅう)競馬と神旗争奪戦、最終日の31日は相馬小高神社で野馬懸(のまかけ)が行われる。
 小高住民「懐かしい姿戻ってきた」
 相馬野馬追は東京電力福島第1原発事故により、関連行事の中止や縮小を強いられてきた。地域の再生に合わせて野馬追が本来の形を取り戻す過程は、地元住民が復興を実感できる軌跡だ。
 この日、騎馬武者行列を見ようと沿道に詰め掛けた住民は、震災前は当たり前だった光景に7年分の思いを乗せ、感慨深そうに言葉を紡いだ。
 昨年7月に地元小高に帰還した女性(80)は「行列に参加する長男のたくましい姿を、地元で見られて感激した」。地元の老舗ラーメン店・双葉食堂の店主豊田英子さん(68)は「懐かしい姿が戻ってきた。この日を待ち望んでいた」と目を細めていた。
 今月に南相馬市原町区から同市小高区に住まいを移した芥川賞作家の柳美里さんも沿道で行列を見守った。「騎馬武者が行列する中で『小高で7年ぶりの行列が再開』とアナウンスが流れたとき、思わず涙が出てきた。私も南相馬と関わって7年目。今後も微力ながら南相馬の復興に向け力になりたい」と話した。