「バブル」の声も…「子ども政策」で過熱する自民党

自民党総裁選の4人の候補が9月22日に臨んだ討論会のテーマは「こども政策」。討論会を呼びかけたのは自民党議員によるチルドレンファースト勉強会だ。「こども庁」や子ども関連予算などを巡り議論が交わされた。(高市早苗氏はビデオメッセージで参加。)

今回「こども政策」に絞った討論会が実現したことからも、自民党内のこども政策に対する動きが過熱していることがうかがえる。
ある政府関係者は、自民党内の状況を「こども政策バブル」と評した。一体どうなっているのか。

「こども政策」は、もともと世論の関心が高い。

FNNが9月18・19日の両日実施した世論調査で「新首相に期待する政策」を聞いたところ、「新型コロナウイルス対策」や「景気や雇用」、「年金・医療・介護」に次いで高かったのが「子育て支援・教育」の19.3%だった。

コロナ禍で子どもを取り巻く問題が深刻化している。少子化の問題も指摘される。こうした状況を受け、自民党内では若手議員を中心に熱心に「こども政策」の議論が行われている。現状を見てみると…

▲「親」の負担を軽減する「子育て支援」
▲子どもの貧困、いじめ・虐待など、苦しい状況にある「子どもたち」を守る「子ども政策」
▲人口減を克服するための「少子化対策」 

アプローチや支援の対象が異なる問題が「こども」と一括りに議論されている。「こども政策バブル」との指摘の背景には、こうしたあれもこれもの状況があった。

それでは、なぜここまで自民党内で「こども政策」が盛り上がったのか。

菅内閣は、政権発足当初の目玉政策として不妊治療の保険適用を実現した。所得制限をなくし、不妊治療を受けやすい職場環境の整備にも力を入れた。また、コロナ禍で浮き彫りになった「子どもの貧困」について、複数回にわたり生活が困窮している子育て世帯に現金給付を行った。

こうした流れが、自民党の若手議員らに火をつけた。

今年4月、若手議員らは、菅首相に、「こども庁」創設を要望した。菅首相は、さっそく自民党内に、二階氏をトップとする検討機関を設置した。

菅首相の退陣表明で「こども庁」の行方は見通せなくなったが、菅首相は9月14日、自民党議員に対し、「首相を辞めたあとでもこども庁創設に向けてしっかり後押ししていく」と語った。

今回の討論会の開催も、こうした菅内閣のもとでの「こども政策」議論を新総裁に引き継いでほしいとの議員らの思いがあった。

では、総裁選の4候補は、どういう「こども政策」を描いているのか。これまでの演説や会見や討論会を通じてみてみたい。

4候補は「こども政策」で何を主張しているのか

【河野太郎規制改革相】

デジタル改革を進める河野太郎氏は、「子どもの貧困」対策について、「プッシュ型支援の重要性」と「データベース化」を訴えている。

たとえば、コロナ禍で行った低所得世帯への現金給付について「皆さんから申請をいただくのではなくて、初めて政府の方から皆さんの口座に振り込むことが実現できた」と強調した。

プッシュ型支援は、自分が支援の対象だと認識していない人、支援の存在を知らない人にも、早く確実に支援を届けることができる。一方、届けるためには、親や子どもの情報を政府がきちんと認識している必要があり、個人情報の扱いに理解が得ることが不可欠だ。

一方、少子化対策について、河野氏は、「多子世帯への教育費支援」を掲げている。これについて政府内から「経済的な理由で子どもをあきらめる人が多いので、画期的だ」と歓迎の声が出ている。ただ、「明確な財源の根拠を示さなければ、単なるばら撒き合戦になる恐れもある」と指摘する声もある。

【岸田文雄前政調会長】

新成長戦略の中に少子化対策を位置づけた岸田文雄氏は、「住宅費と教育費の補助」を掲げた。

政府の調査によると、子どもを2人以上持たない理由の上位に「(大学までの)教育費」や「(都市部での)住居の狭さ」が挙げられている。子育て世帯の経済的な不安が少子化に影響を与えているとみられ、岸田氏の主張は、子育て支援のみならず、少子化対策としても期待できる。

教育費の支援は、学習したい子供や親には大きな支援となる。ただ、少子化対策の効果については、「86万ショック」の年の状況を指摘する声もある。「幼児教育・保育の無償化」が開始した2019年、初めて出生数が90万人を割り込み、約86万5千人となった。政府関係者は「幼保無償化をした年、少子化には歯止めがかからなかった。教育費の支援は、ピントを外さないようにしなければ、少子化対策の効果が期待できるかわからない」と話す。

【高市早苗前総務相】

日本初の女性総理を目指す高市早苗氏が訴えたのは、「ベビーシッターと家事代行サービス業の国家資格化」だ。高市氏は、国家資格化して「利用代金の一定割合を税額控除する」と主張する。

子育て世代の共働きが当たり前となった昨今、ベビーシッターなどの需要は増大しており、高市氏は「ベビーシッター等を活用しやすい環境を作りたい」と強調する。

国家資格化について、高市氏は「厚労省の省令改正でできるのでそれほど時間はかからない」としているが、政府内には「制度の構築、十分な資格者の確保まで相当な時間がかかる」との指摘も出ている。

この他、高市氏は、低所得世帯に児童手当を18歳まで支給することも表明している。

【野田聖子幹事長代行】

4人の候補者の中で「子どものための政治をライフワークにしてきた」と語るのが野田聖子幹事長代行だ。野田氏は「こどもまんなか」と名付けて子ども目線になった政策を進める。

特に野田氏は「人口減少は女性活躍ではなく“安全保障”の問題」と強調し、少子化の進行によって「自衛隊、海上保安庁、警察、消防という国民の生命・財産を守り、国の安全保障を担っている組織のマンパワーも減少していく」と訴える。

さらに、「子どもへの投資」を成長戦略として挙げた。子どもへの投資で少子化も解決できるとして、財源に「子ども債」を発行するとしている。

ただ、政府内からは、「子ども債」について、将来の子どもたちへの借金となり、「負担のツケ回し」にならないかとの懸念の声も聞かれる。

待ったなし!少子化対策 4候補は本格的な議論を

こども政策は、子どもの貧困、子育て支援、子どもの教育、いじめ・虐待など多岐にわたり、いずれも重要だが、次の首相となる人には、是非「少子化対策」に本格的に取り組んでほしい。

少子化は、すぐに問題が顕在化しないかもしれないが、進行すれば、労働力人口が減り、地域・社会の担い手が減り、経済や市場規模が縮小し、行政サービスの水準も低下する。つまり、社会が衰退してしまう。結婚や子どもの状況にかかわらず、日本国民すべてにとって深刻な問題だ。そして対応できる時間は限られている。 

お金がないから、負担が大きいから結婚や子どもをあきらめる。こんな人が増えている。「国民一人一人のライフスタイルの希望が叶えられていない状態」が少子化を生んでいる。

政府で少子化対策を担当する1人は、「少子化対策で支援しなければならないのは、子どもではなく、親の経済・育児の負担軽減だ」と話す。

少子化対策として、お金がなくて子どもをあきらめる人の支援の議論は必要だ。しかし、限りある予算の中で、どういう支援をすれば、子どもを産もうという人が増えるのか。

「こども政策バブル」と言われる中、今回の自民党総裁選、そして、新首相のもとで行われる衆院選の中で、少子化対策は“待ったなし”の問題だとして、本格的な議論が行われることを期待したい。