【識者コラム】9月を6勝1分2敗で駆け抜けたFC東京、窮地での工夫がチーム再建を導く

 9月はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場組にとって試練の時期となった。横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸、FC東京の3チームがリーグ戦8試合を組み込まれ、揃ってルヴァンカップ準々決勝も戦った。中旬までは真夏並みの酷暑だったので、当然各チームともにメンバー編成には苦慮した。5人交代制を活用し、時には主力を休ませながらの9連戦となったわけだが、意外にダメージは最小限に抑えられ、むしろ戦績、内容ともに上向きの傾向を見せた。

 ルヴァンカップでベスト4に進出したFC東京が6勝1分2敗、横浜FMはリーグ戦3連敗のスタートだったが、その後4連勝と持ち直した。一方神戸は、ルヴァンカップで川崎フロンターレに0-6と大敗を喫したが、リーグ戦では川崎を内容で凌駕し(結果は2-3で敗戦)、FC東京戦(2-2)、セレッソ大阪戦(0-1)、名古屋グランパス戦(1-2)と勝利にこそ見放されたが、途中退任となったトルステン・フィンク監督は立て直しの基盤を築き、それを三浦淳寛監督が巧みに継承。その後の3連勝につなげている。

 特にFC東京はコロナ禍の新ルールを味方に、終盤失速気味だった昨年とは異なる活力を生み出した。昨年は久保建英(現ビジャレアル)の大ブレイクという僥倖を武器に前半戦の主役となったが、その久保がチームを離れると、メンバー固定の影響で疲労と硬直化を招き、逆に勢いを増す横浜FMに逆転を許した。

 だが今年はコロナ禍の中断もあり真夏に過密日程が組み込まれ、さらに主軸として活躍してきた橋本拳人(現ロストフ)、室屋成(現ハノーファー)が移籍し、東慶悟も離脱。必然的に戦力の見直しを強いられた。そんな窮地での工夫や模索が、逆にチームの再建を導いた感が強い。

 リーグ全体にポゼッション志向が強まるなかで、敢えて長谷川健太監督は縦に速い攻撃を打ち出してきた。現在得点源として相手に脅威を与え続けているディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロ、アダイウトンはいずれも前所属チームでは手放しの評価を得られたわけではない。おそらく状況判断が主な減点材料だったのだろうが、長谷川監督は個の打開力という長所に着目し、いずれも開花させた。

 さらに今年はディエゴ・オリヴェイラをサイドで起用し、中盤の攻防を優位に導きカウンターの起点としても有効活用できている。一方でそのディエゴ・オリヴェイラが欠場した浦和戦では、代わってレアンドロが前線で攻守に高い潜在能力を見せつけた。そして縦への推進力が持ち味のアダイウトンは、後半の勝負どころで登場してくることで手のつけられない破壊力を見せつけている。

生え抜きの若手が次々に台頭、近い将来の収穫につながる兆し

 また、こうして得点力が担保されたことで、チーム全体への相乗効果も見て取れる。相手にボールを支配されてもDFに過度な精神的な負担がかからず、他チームに比べれば明らかに焦りやミスが少ない。プレスをかいくぐる速いタッチのビルドアップも精度を高めている。

 リーグ戦で喫した5敗中2敗が森重真人不在の試合だったことで替えが効きにくいことを物語っているが、反面生え抜きの内田宅哉、原大智、品田愛斗、波多野豪、木村誠二、バングーナガンデ佳史扶らが次々にピッチに立ち、試合を重ねた選手たちは着実に貢献度を増している。シーズン当初からスタメン出場を続けてきた安部柊斗は主力としての自覚も高まり、サイドバックでは帆高、拓海と2人の中村が競い合っている。新陳代謝と競争力が高まり、上昇機運も見え始めた。

 長谷川監督は、9月初めのルヴァンカップ準々決勝で名古屋に快勝すると、ベストメンバーでの戦いにメドが立ち「次はメンバーが変わっても質を落とさないように」と語った。実際9月は大胆な実験にも着手してきたわけだが、近い将来、大きな収穫に繋がる兆しも見えてきている。

Football ZONE web編集部