【識者コラム】日本にも外国人を親に持つ人が増加、人種的多様性はサッカーでプラスに働く

 ジェフユナイテッド千葉のストライカーを3人並べて、「この中に1人だけブラジルから来た選手がいます。誰でしょう?」というクイズを出したとする。回答者がサッカーもジェフも知らない人なら、サウダーニャ、櫻川ソロモン、ブワニカ啓太の中で選ぶのは、おそらく後者2名のどちらかではないか。

 正解はサウダーニャなのだが、顔がリバプールのロベルト・フィルミーノにちょっと似ていて、なんとなく東洋的だから、たぶんブラジル人ではないと思われる。一番背が高いのは櫻川なので、「外国人=長身」というイメージだと彼がブラジル人だと思う人が多そうだ。櫻川とブワニカは日本人で日本育ちだから、話してしまえばすぐにバレてしまうが、黙っていれば見た目では分からない。

 日本にも外国人を親に持つ人々が増えてきた。一般的にもそうだが、サッカー界ではその割合はさらに高い。これはすでにヨーロッパでは30〜40年前にあった現象で、日本もようやくそうなってきたわけだ。

 人種的な多様性はサッカーではプラスである。例えば、全員が身長175センチで右利きのチームより、身長の高低や速い、上手い、強い、右利きも左利きもいるといった特徴がバラバラの選手を揃えたチームのほうが、有利と考えていい。

 2018年ロシア・ワールドカップ(W杯)で優勝したフランスは、まさに多様性のチームだった。黒人もいれば白人もいる。高い、速い、上手いなど特徴は見事にバラバラ。先発メンバーだけでなく、同じポジションのバックアップメンバーでも特徴が全然違っていた。小柄で俊敏、運動量抜群のエンゴロ・カンテに代わって出てくるボランチは、197センチのスティーブン・エンゾンジなのだ。頑健で空中戦に強いセンターフォワード(CF)のオリビエ・ジルーがいなければ、このポジションに全然タイプの違うアントワーヌ・グリーズマンが入ったりする。ジルーに似た二番手を用意するのではなく、それぞれ特徴の違う一番手ばかりを揃える編成だった。

 個々の特徴がバラバラなので、フランスに戦術的な統一感は薄い。誰がプレーしても同じように機能するわけではないからだ。その代わり、対応力は抜群だった。相手が高いボールで攻めてきても、ドリブルやパスでも、その都度対応できる。どういう試合展開になっても一定の強さを発揮した。

21世紀になりドイツ、イングランド、イタリアも多様性を獲得

 センターバック(CB)左側のサミュエル・ウムティティは左利き。11のポジションの中で、左利きが必要なのがこの左CBである。左サイドバック(SB)もそうだが、現在は「偽SB」として役割が多様化しているので、むしろ利き足は問われなくなった。ただ、フィールドの後方左側では、左足側にボールを置いて蹴れるほうが、視界の面でもパスの射程距離でも右利きより断然有利なのだ。右側でも同じことだが、右利きは数が多いので問われるのは左利きの有無になっている。

 フランスは移民系の選手たちに支えられてきた。1950年代は東欧と北アフリカ、70〜80年代はイタリア、スペインの近隣諸国に旧植民地からの移民。90年代以降はアフリカ移民。その都度、多様性を増して現在の姿になっている。ヨーロッパでの多様化はベルギーとフランスが早かったが、21世紀になるとドイツ、イングランド、イタリアも同じように多様性を獲得した。

 長年、日本の弱点はGKとCBだった。このポジションには体格や身長が必要だからだ。しかし、ここにきて若い世代の日本代表には必ずと言っていいほど外国人を親に持つ選手が含まれていて、だいたい従来では想像もできなかったほどの高身長になっている。すでにJリーグでプレーする選手も出てきた。

 日本、メキシコ、アイスランド、スウェーデンなど、均質的なチームの良さもあるが、W杯で多様型のチームが有利なのは明らかである。かつて日本サッカーの重鎮だった人が、「日本が世界で伍していくには?」と聞かれて「国際結婚を増やすこと」と答えた。半分冗談だったのかもしれないが、それから50年ほど経ってみて本当にそうなりつつあるわけだ。

Football ZONE web編集部