【闘莉王インタビュー|第1回】東京五輪の戦いを展望「メダルの可能性は、僕からしたら大」

 いよいよ、東京五輪が幕を開ける。自国開催でメダル獲得を目標に掲げるU-24日本代表は22日に、初戦の南アフリカ戦(東京スタジアム)を迎える。17年前の2004年アテネ五輪に出場した元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は、Football ZONE webの「東京五輪スペシャルアナリスト」に就任。本大会開幕を前に、森保ジャパンについて独自の視点で分析した。アテネ五輪で激闘を経験した闘将の目に映るU-24日本代表の姿とは――。独占インタビュー第1弾は「日本の可能性」について語った。

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「今回メダルの可能性、チャンスは今までの(歴史の)なかで一番だと思うんですよね。プラスがいっぱいある」

 自国開催でグループAに入った日本。同居するのは優勝候補の一角に挙がるフランス、北中米カリブ海予選を首位通過したメキシコ、 2大会連続3回目の五輪出場となる南アフリカと強豪国が属する。そのなかでも闘莉王氏は「死の組じゃない」と指摘しており、目標のメダルには手が届くと明言。3つのポイントを挙げた。

「他の国が本当に呼びたい選手を呼べていないんですよね。オーバーエイジ枠(OA)にしても五輪世代の選手にしても。これは他の国にとってダメージが大きいと思います。プラスアルファとしては日本で開催されること。これは大きなアドバンテージになる。さらに、この独特な天気。今回のメダルの可能性は、僕からしたら大だと思います」

 闘莉王氏は2001年にJ1サンフレッチェ広島でプロデビュー後、03年に日本国籍を取得し、04年のアテネ五輪に出場した。その後はA代表入りし、10年南アフリカ・ワールドカップ(W杯)では最終ラインを支えてベスト16入りに貢献。日本代表通算43試合8得点の成績を残した。

 そんな経験豊富な闘莉王氏は、日本がメダルを獲得する可能性が歴史上一番高いと予想。MF久保建英やMF堂安律ら東京五輪世代に加え、A代表主将のDF吉田麻也、DF酒井宏樹、MF遠藤航のOA枠が参加できた「招集力の高さ」、さらに「自国開催」「天候」の3点が森保ジャパンにとって有利に働いていると指摘し、その理由も説明した。

アテネで痛感したアウェーの試練「独特の芝とか雰囲気に慣れていなかった」

「観客の有る無しにかかわらず、ピッチのコンディションやボールの走るスピードを理解している。あとはやっぱり、この天気ですね、独特の夏の暑さっていうのも日本人は調整しやすいと思います」

 闘莉王氏自身、2004年に出場したアテネ五輪では敵地の芝や雰囲気へ順応するのに戸惑ったという。

「僕は帰化した後、少ししか日の丸の経験がなかったんですよ。それが自分的にあんまり良くなった。いろんなところで合宿や強化試合をしたなかでも、アテネの独特の芝とか雰囲気に慣れていなかった。すぐには試合に入れなかった。振り返っても1戦目、2戦目はすぐに失点しているんですよ。(雰囲気に)呑まれている感じがした。そのなかでも、日本のピッチは世界の中でもトップクラス。日本のピッチはすごくボールが走るのが速いと思う。芝が長くないし、下がしっかりしている。すごく有利だと思いますね。あとは湿度。サウナ的なコンディションは、欧州人や南米人にとってあまり経験がない。この高い湿度は中東か日本でしか味わえない」

 そのなかで、日本はグループリーグ初戦、南アフリカと戦う。第2戦でメキシコ、最終戦でフランスと対戦。決勝トーナメント進出のためには、まず南アフリカ戦の勝利が必要だ。

「南アフリカ戦の勝利は絶対条件ですね。組み合わせは悪くないのと、対戦する順番も悪くない。これも(日本にとって)有利に働いていると思います。初戦でパパっと勝てば、他が日本を気にするようになる。結局、南アフリカに勝たなければいけない条件になる。初戦に勝つことですごく有利になる」

 初戦で白星を掴み取ることで、その後の展開も有利に進めることができる。それだけではなく、ライバルとなるフランスやメキシコに重圧がかかる。メダル獲得は強豪を倒してこそ見えてくる。

「日本が勝つことによって、(第1戦で)フランスとメキシコが引き分けた場合に、さらに日本に条件が良くなる。そう考えると、日本が勝つことによって相手の国にどれだけのプレッシャーを与えられるか。(日本に関わりのない)他の試合でプレッシャーを与えることができる。勝利だけでね。そういう意味では、すごく良いと思いますね」

日本が目指す金メダル獲得の可能性は…「第一候補の国じゃない」

 ただ、闘莉王氏自身、初戦の難しさを痛感する。アテネ五輪ではパラグアイ戦で3-4の敗戦を喫し、第2戦のイタリア戦でも敗れた。グループリーグ敗退を経験したからこそ、立ち上がりから果敢に攻め込む必要性を熱弁した。

「作戦としてね、立ち上がりからガッといったらいいと思います。最初の10分、15分、立ち上がりを利用する。どれだけ(相手を)バタバタさせるか。初戦の硬さを逆手にとって、どれだけ相手にダメージを与えるかで、日本の勝利の可能性が上がってきますね」

 53年ぶりのメダル獲得だけではなく、目指すのは金メダル。闘莉王氏はその“確率”についてストレートに語った。

「いやあ、金メダルはねえ……応援していますけど、メダルの色はあまり気にしないほうが良い。(金メダルの)第一候補の国じゃないと思いますね。ブラジルとかドイツとかフランス、大舞台を経験している国、ユニフォームの重みっていうのは、まだ日本はその候補に入れないと思いますね。メダルは取れると思うけど、銀か銅かっていう感じですかね」

 金メダル獲得の可能性こそ低いものの、“史上最強”と呼ばれるU-24日本代表の躍動を予想。闘莉王氏の挙げるポイントを制し、日本はどこまで階段を上ることができるだろうか。

[プロフィール]
田中マルクス闘莉王/1981年4月24日、ブラジル出身。渋谷幕張高を卒業後、2001年に広島でJリーグデビュー。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場した。その後は浦和でJ1とACL初制覇、名古屋でもJ1初優勝に貢献。06年にはJリーグMVPを受賞した。日本代表としても43試合8得点の成績を残し、10年南アフリカW杯ベスト16進出の立役者に。19年限りで現役引退。Jリーグ通算529試合104得点で、DF登録選手の100得点はリーグ史上初。現在は公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」でも活動中。

Football ZONE web編集部