【特別寄稿】プレミア挑戦の冨安へ闘莉王氏がエール、低迷するチーム状況を危惧

 日本代表DF冨安健洋は今夏の移籍市場で、セリエAのボローニャからプレミアリーグの名門アーセナルへ移籍した。7日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第2節の中国戦(1-0)にフル出場後、11日のプレミアリーグ第4節ノリッジとのホームゲームで、新天地デビューの期待が高まっている。元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は、若きディフェンスリーダーとしての資質に太鼓判を押す一方、崩壊寸前の名門への移籍を“大きな賭け”と見ている。

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 冨安のアーセナル移籍は本人にとっても素晴らしい。日本代表にとっても朗報であることは間違いない。個人的にプレミアリーグこそが最高のリーグ。ベストプレーヤーはこの舞台でプレーすべき。冨安にはその資格が十分にある。

 冨安の良さは勝負を仕掛けるタイミングの見極め。これが若い割に上手い。負けそうな状況、リスクのある局面では勝負に挑まない。ボールを奪えそうなタイミングで仕掛ける。それ以外のシチュエーションではディレイさせている。これも才能だと思う。

 ボローニャではサイドバックでもセンスを見せ、アーセナルでもまずはそのポジションでの起用が予想されているが、冨安にはセンターバックで勝負してほしいし、勝負すべきだと感じている。チェルシーの(ロメル・)ルカクのような止めようもない相手と戦って、レベルアップしてほしい。センターバックで通用すると思うし、逆に強さを増すと思う。

 一方で心配なのは、アーセナルのチーム状況がこれ以上ないほど酷いことだ。開幕3連敗で勝ち点だけでなく、得点もゼロ。近年苦境が続くなかで、今夏の移籍市場ではプレミア勢で最も多くの資金を投入したが、軸となるものがなくチームとしての形が見えてこない。あれだけ批判されていた(アーセン・)ベンゲルさんが出て行ってから、良い部分が出てきていない。結局、見ている側とすれば、ベンゲルさんの偉大さを改めて噛み締める状況になっている。

 この最悪なチーム状況は、冨安にとってはプラスにもマイナスにもなる。もし今のアーセナルとは違って、組織としてしっかり整備されているチームに移籍した場合、自らのパフォーマンスも発揮しやすい。その反面、ポジション争いでは以前からプレーしている選手に分があるので、厳しさが出てくる。

 一方で現在のアーセナルのように、守備の立て直しが急務となっている場合、新戦力である冨安が出場機会を手にできる可能性は高い。ただしチーム状況が悪いだけに、たとえポジション争いに勝っても、現在の“カオス”に巻き込まれたら本人のパフォーマンスや評価に影響するリスクもある。そのなかで冨安が安定感をもたらすことができれば、評価は断然上がってくる。

吉田のようなリーダータイプと組めれば、冨安の良さは最大限に引き出される

 アーセナルは近年、センターバックの人選で外している印象が強い。少し前で言えば(シュコドラン・)ムスタフィ、最近で言えばダビド・ルイス。選手は年齢を重ね、経験を重ねるたびに、ポジショニングと読みが磨かれて、プレーが丁寧になっていく。ダビド・ルイスには期待していたが、年を重ねるたびにどんどん雑になっていった。そんなDFは初めて見た。

 開幕直後から監督の去就問題が浮上するチーム状況で、言葉や文化の問題が出てくると難しい。自分から発信していくタイプではない冨安。コンビを組むパートナーも、重要になってくると思う。吉田麻也のようなリーダーシップを持ったタイプと最終ラインを組めれば、冨安の良さは最大限に引き出されるはずだ。とにかく期待している。

[プロフィール]
田中マルクス闘莉王/1981年4月24日、ブラジル出身。渋谷幕張高を卒業後、2001年に広島でJリーグデビュー。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場した。その後は浦和でJ1とACL初制覇、名古屋でもJ1初優勝に貢献。06年にはJリーグMVPを受賞した。日本代表としても43試合8得点の成績を残し、10年南アフリカW杯ベスト16進出の立役者に。19年限りで現役引退。Jリーグ通算529試合104得点で、DF登録選手の100得点はリーグ史上初。現在は公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」でも活動中。

Football ZONE web編集部