【月間表彰】8月の「月間ベストアグレッシブプレーヤー」に横浜FMのMF水沼宏太を選出

「DAZN」のパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」では、各月ごとに各部門の表彰を実施している。「Football ZONE web」では、現役時代に強靭なフィジカルと戦術眼を武器に日本代表としても活躍した福西崇史氏に、その月に最もアグレッシブなプレーを見せた選手を選出してもらっている。

 福西氏が8月度の「月間ベストアグレッシブプレーヤー」に選出したのは、首位の川崎フロンターレを猛追している横浜F・マリノスのMF水沼宏太だ。8月21日のJ1第25節のベガルタ仙台戦では、5-0と結果的に大勝した。しかし、実際は1-0と苦しい時間が続き、そのなかで2点目のゴール、3点目のゴールをアシストしたのが水沼だった。福西氏は水沼の3点目を演出したプレーに注目した。

 2点をリードした状況で、水沼は相手選手のバックパスに対して、猛然とプレスをかける。そして、追い込まれた相手のパスをカット。そこからダメ押しとなるゴールが決まっている。こうしたチームから求められるハードワークをこなすだけでなく、それを上回るプレーで結果を出す一方、自身の持ち味であるクロスでも、違いを作ることができる水沼。プレーの詳細やどういった考え方をしているのかなど、元選手の福西氏だからこそ引き出せる話がたくさん出てきた。

   ◇   ◇   ◇

福西 今月の「ベストアグレッシブプレーヤー」に選出させていただきました。水沼選手はアグレッシブが売りですものね(笑)。お待たせしてしまいましたか?

水沼 はい(笑)。やっときました。

――先月も小池龍太選手を選出させていただいたので、2カ月連続で横浜F・マリノスからの選出となっています。水沼選手のアグレッシブさを象徴するシーンとして、ベガルタ仙台戦の3点目のゴールを演出した後半22分のシーンをピックアップしました。

福西 このシーン、水沼選手は相手が深い位置まで戻したボールにまで、ずっとプレスをかけに行きました。チームが勝っているなかで、それでもボールを追い続けたのは、チームの約束事なのか、それとも水沼選手個人の判断だったのでしょうか。

水沼 まず一つはチームの決まりごととして、前からボールを取りに行くことがあります。そして、どんな点差があってもゴールを取りに行くことが、チームでは徹底されています。僕はこの10分も経たない前に試合に出たのですが、1-0の状況で試合に出ていました。この試合に関しては、それまで自分たちのやりたいサッカーがあまりできていなくて、緊迫した状況で、攻め込まれているシーンもいくつかあったんです。そのなかで投入してもらって、1点入って、その直後にすぐこのシーンでした。僕の頭の中には、とにかくこの時間帯で一気に突き放したい。この流れを逃さないということが頭にありました。チームの決まりごともあったのですが、ここで一つ目を追った後、二つ目はもしかしたら行かなくても良かったのかもしれません。でも、近くにいたので、一つ目を追った時に、「もしかしたら、こっちに来るかな」という感覚もありましたし、そのままもう一つギアを上げて方向転換して走ったら、予測通りにボールがこちらに来たので、パスカットにつながったと思います。

福西 相手にクリアされてもいいかなという感じもあったのですか?

水沼 そうですね。センターバックの選手が左利きだったので、トラップミスがあったところで、左足を切りながらというイメージで最初はありました。このトラップミスをした選手も息遣いを見ていると疲れているところもありましたし、判断が鈍ってくる時間帯かなと思ったので、そのまま左を切りながらガッと行こうというのがありました。

福西 交代出場することも多いので、自分のアピールも常に思っていますよね。

水沼 そうですね。そこの線引きというか、結構、難しいところはあります。僕自身はやっぱりスタメンで出たい気持ちがありますし、自分のプレーをもっともっと表現したいと思っています。でも、やらなければいけないチームの決まり事も間違いなくあります。ケヴィン・マスカット監督になって、アンジェ・ポステコグルー監督時から、よりサイドとか前の選手の強度を上げてチームを引っ張って行ってくれという意思が、僕たちが投入される際に伝えられるので、そういう意味ではこの一つのプレーでも、一つだけ追うのではなく二つ追うこと、チームがきつい時にもう一つ上の段階に引き上げていく役割が自分に課されているのかなと、自分の中で整理しています。もちろん、アピールしたいですし、どんどんもっと自分が好きなこともやりたい気持ちも間違いなくあります。でも、まずはチームを勝たせるために、自分の与えられた役割をまっとうして、自分の表現を加えていくことが大事になると思います。それをやることでアシストのシーンも多くなりました。そこの葛藤も少しはありますが、しっかりやるべきことを全力でやることは、自分の中でも大事にしています。

 でも、本当にありがとうございます。このプレーが取り上げられることって、ほぼほぼないと思うので、話をいただいた際に「いやぁ、うれしい」と思いました(笑)。やっぱり、ゴールに直結するパスとかにフォーカスする方はすごく多いのですが、ここは「一つ仕事ができたな」と思えたシーンだったので、取り上げてもらえてすごくうれしいです。

福西 僕も現役でプレーしていた時がそうでした。ゴールの前の前の前くらいで絡んでいたというね。そういうプレーを掘り起こして、守備の人がこうやったから点につながりましたとか、知ってもらいたいですね。でも映像が点につながらないとなかったりするから、難しくもあるんです。

水沼 そうなんですよね(笑)。あそこまで良かったのに、ということもありますからね。

福西 この映像も、相手にクリアされていたら出てこなかったでしょうから、すごく良かったですし、お待たせしました(笑)。

クロスは「球種が大事」、中の状況を見て変えていく

福西 水沼選手の持ち味という点では、クロスの精度、タイミングが非常に良いなと感じています。あのタイミングの計り方はどうやっているんですか?

水沼 今、言われた通りで、タイミングが一番大事だと思っています。中に入ってくるタイミングもそうですし、中の選手の特徴も気にしています。(前田)大然や今はいなくなってしまいましたがオナイウ(阿道/現トゥールーズ)の時は、前にDFとGKの間にグイっと入ってくれるタイミングが早いので、その意味ではトラップして上げるボールの質も変えながら、トラップして蹴るまでが遅くなりそうだったら、ボールのスピードでタイミングを変える。早めに蹴れそうであれば、一つ溜めて、入ってくる速さに合わせたりするなど、タイミングは一番大事だと思っています。練習から動き出し、特徴を見ながら、僕の持っている球種を変えたりしています。

福西 その時に相手の間合いもありますよね。それによって鋭角に上げないといけないこともあると思いますが、中の状況と対峙している相手の状況で、球種は変えていますか?

水沼 変えますね。基本的にトラップの場所で相手のプレッシャーも変わってくると思っています。相手の足に当たらないようにというのもありますが、基本的にはどこでも上げられるようなところにボールを置くようにして、ゴールに向かう方向に球を蹴れるようにするとか、平行に蹴れるようにするとか、その辺のトラップの仕方は変えていますね。

福西 クロスの練習も意識してやっていますか?

水沼 はい。球種が大事だと思うんです。いろいろなボールが蹴れれば、それによって変えられると自分はクロスの練習をしながら思っているので、速いボール、緩いボール、縦回転でGKに向かうボール、ストレートと、いろいろボールを蹴ってみて、「ここだとこんな感じか」「ここだとこんな感じか」というふうに、感覚をつかんでいっています。

福西 今、「和製ベッカム」というくらい、クロッサーなイメージがついてきていますが、ドリブルで突破することは、どれくらい自分の頭の中にありますか?

水沼 ドリブル突破はあんまりないですね(笑)。なんでないのかなと自分でも考えたことがあるんですけど、小さい時からドリブルをしていませんでした。パスとかシュートとか、ボールを蹴ることが好きだったんです。高校くらいまではFWをやっていたので、ドリブル突破するシーンがなかったり、一緒にやってきた選手たちがコンビネーション好きだったりして、そういうチャンスメークのシーンが多かったんですよね。

福西 お父さん(水沼貴史氏/元日本代表)がドリブラーだったじゃないですか?

水沼 そうですね。全然違うなと思いますけど、キックの最初の蹴り出した頃は父にいろいろ教わっていたので、パスもドリブルも父はできていましたが、僕はパスのほうが好きだったなという感じです。もちろん、時間を作る時のためるドリブルとか、前に運んでいくドリブル、いざ勝負となった時は、それは頭にありますが、「中に上げたらチャンスだよな」「ゴールにつながるよな」と思った時は、パスのほうが先に頭に浮かびますね。

福西 なるほど。タイミングが合わなかったり、相手がコースを消して来たら、ちょっとずらしたりとか、そういうドリブルが多いってことですね。

水沼 はい。相手もそうですし、チームの周りの動き出し、時間を見ながら、いろいろ含めてやっています。

(後編へ続く)

[プロフィール]
福西崇史/1976年9月1日生まれ、愛媛県出身。95年にFWとしてジュビロ磐田に加入すると、プロ入り後にボランチへコンバートされ黄金時代を迎えたチームの中盤を支えた。J1通算349試合62得点の成績を残し、Jリーグベストイレブンも4度受賞。日本代表としても国際Aマッチ64試合7得点を記録し、2002年日韓大会、06年ドイツ大会とワールドカップに2度出場した。04年アジアカップでは優勝を経験している。

Football ZONE web編集部