A代表の2021年を5項目の観点から評価

 森保一監督が率いる日本代表は2021年の活動を終えた。9月からスタートしたカタール・ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選で6試合を終えてB組の2位につけているが、初戦のホームでオマーンに敗れ、そこから中国に勝利したものの、10月シリーズ初戦のアウェーでのサウジアラビア戦に敗れて窮地に立たされた。しかし、4-3-3で臨んだホームのオーストラリア戦で2-1と勝利を飾ると、11月のベトナム、オマーンとのアウェー2連戦にそれぞれ1-0で勝利し、オーストラリアを抜いて順位を上げた。

 今年は東京五輪というビッグイベントがあり、森保監督が兼任する形で、悲願だったメダル獲得はもちろん、この大会を経験した若い選手たちがA代表に引き上げられることで最終予選の突破、さらにはカタールW杯に向けて競争力や選手層を高めて行く青写真だった。コロナ禍の厳しい状況もあるなかで、チームの成長と結果を両立させるのは並大抵の作業ではないが、世間の厳しい目に向き合いながらも大目標に向かって行くのは代表監督の宿命でもある。

 東京五輪に関しては今回割愛して、A代表に絞って5つの項目を「A、B、C、D、E」で評価したい。

■成績:C+
W杯2次予選 4勝
親善試合 3勝
W杯最終予選 4勝2敗
合計 11勝2敗

 親善試合では3月の韓国戦に3-0で快勝。相手もソン・フンミンなど主力を欠くなどフルメンバーではなかったが、初招集の山根視来がスタメンで先制ゴールを挙げるなど、国内組から何人かの選手がA代表を経験した。さらに急きょ対戦となったU-24日本代表、さらにセルビアにも勝利。すべてホームとなった2次予選の4試合はモンゴルに14-0と歴史的な大勝を飾るなど、33得点2失点だった。

 最終予選のホーム初戦でいきなり敗れたのは前回の”ハリルジャパン”と一緒だが、3試合目のサウジアラビア戦もアウェーながら敗れ、もしオーストラリアに敗れたら、その時点で2位以内で突破する可能性が消えてしまう状況に追い込まれた。しかし、そこから11月シリーズも含めて3連勝。内容に対する不満な要素はさておき、及第点には達している。

 全体を通して評価したら「B」が付けられる成績なのだが、やはり最終予選の位置付けと、気の抜けない4試合が来年待っていることも加味して「C+」とする。

コミュニケーションをベースとした「マネジメント」はA評価

■戦術:C-

 森保監督が掲げるのは”ノーマルフットボール”であり、4-2-3-1、最近では4-3-3というベースのシステムと大まかな方向性は監督が決めるが、細かい立ち位置などは選手間で話し合って決めていることも多い様子で、細かいところまでデザインしていくスタンスではない。その点で、どうしても外から見ると頼りない印象を与えてしまうが、代表チームの1つのあり方だろう。

 ただ、4-2-3-1にしても4-3-3にしても相手との噛み合わせ、チョイスする選手のタイプによってストロングとウィークが変わってくる。特に前からの守備のはめ方とうしろからのビルドアップはスタートポジションはもちろん、状況に応じた立ち位置の関係や距離感を監督が提示しないと、相手の戦術的な水準が上がるほど対応しにくくなるだろう。

 また、キャプテンの吉田麻也や中盤の要である遠藤航に何かあった場合、そのまま戦術的なベースもセットバックされてしまうリスクがある。現時点では事なきを得ているが、ここからのサウジアラビア戦やオーストラリア戦、さらにカタールW杯に向けた不安要素ではある。

■マネジメント:A-

「選手をリスペクトしてくれる」と吉田麻也は森保監督を表した通り、チームの和を何よりも大事にする指揮官としての強みは苦しい時期ほど発揮されている。最終予選の初戦をふわっと入ってしまった責任は森保監督にもあるが、負けたあともチームが崩壊した様子もなく、改善に向けて前向きに話し合う環境を作っているのは森保監督のチームならではだ。

 選手と直接話す光景も多く見られる森保監督。コロナ禍で、特に日本代表は感染対策に慎重な体制を取っているなかでも、選手たちがコミュニケーションを取る環境を作り上げていることは地味に高評価して良いポイントだろう。

選手交代が当たった試合もあるが、スタメンや交代カードは固定傾向

■起用法:D

 1年間を通して見れば、上半期の親善試合や”消化試合”となった2次予選のキルギス戦などでは、招集した選手を積極的に起用する傾向も出ていた。しかし、東京五輪のあとで迎えた最終予選はオーストラリア戦で4-3-3に踏み切り、初招集の田中碧を抜擢したが、固定的なスタメン、5枚の交代カードもだいたい変わらない傾向が強い。

 さらにベンチ入りできる23人より5人多い28人を招集した11月シリーズでは東京五輪メンバーから招集された前田大然、上田綺世、旗手怜央が2試合続けてベンチ外となり、所属クラブのサポーターやJリーグのファンから厳しい声が飛んだ。欧州組でも2試合続けて出番のなかった板倉滉など、地元メディアの日本代表に対する批判的な記事も出た。

 森保監督が序列を非常に重視するタイプの監督であることが露見されている。ただ、前回予選でのハリルホジッチ監督はともかく、ザックジャパンでも似た傾向があり、多くのフレッシュな選手をテストしたのは予選後だった。そのタイミングが遅かったことが当時のザッケローニ監督の首を締めることになったという意味では不安もある。

■選手交代:C

 5枚の交代枠をどう使うかは大事な要素になっている。0-1で敗れたオマーン戦やサウジアラビア戦では選手交代もうまく行かなかったが、オーストラリア戦では終盤で古橋亨梧、浅野拓磨を投入して伊東純也とスピードのある3トップを形成。最後は浅野がサイド突破からオウンゴールを誘発した。アウェーのオマーン戦は後半スタートから三笘薫を左サイドに投入して流れを一変させるなど、少なくとも選手交代が効果を発揮した試合もある。その一方で中山雄太を左サイドバックに入れて、ビルドアップの安定と守備のリスク管理を強めるなど、勝負のための選手交代は効果的であることも多い。

 ただし、練習やミーティングでの共有不足もあってか、疲労が出始める後半に攻撃的なカードを切ると間延びが顕著に出てしまう。それでも吉田や冨安が後ろにいれば大きなピンチにはなりにくいが、今後そうした選手起用に応じた連携面の強化は最終予選の残り試合、さらにW杯に向けても必要な要素だ。

競争力や選手層アップにつながる起用法に期待

■まとめ

 来年1月末から最終予選の4試合が待つ。ちょうどJリーグがオフ明けになり、国内組のコンディションなど非常に難しい部分もあるが、ここを乗り切らないと世界への道が開かれない。ホームでオーストラリアに勝利し、さらにアウェーでオマーンにリベンジを果たしたことで、ホッとした雰囲気も漂うが、しっかりと引き締めて来年の中国戦から臨んでいかないと、尻上がりに調子を上げている相手に足元をすくわれる危険もある。

 そして、やはり注目したいのは選手起用だ。東京五輪世代の田中碧や三笘薫が台頭したことは喜ばしいが、前回のハリルジャパンに比べても、慎重な起用法が目立つことがW杯に向けた先細りを招く不安もある。勝つためにベストの布陣をぶつけて行くことは大事だが、コンディションを見極めながら、競争力や選手層のアップにつながる起用法に期待したい。

Football ZONE web編集部