【J番記者コラム】昨季の大卒ルーキーMF橘田、試合より練習で「まだまだ」と感じた

 2022年のJ1も、間違いなく川崎フロンターレを中心に展開されていくことになる。各チームは昨季以上に対抗心を燃やし、昨季以上に対策を講じて、川崎の3連覇を阻止しようと目論んでいることだろう。

 時間がゆっくりと流れていた年末年始、改めて川崎の「強さ」について考えてみた。

 4-3-3システムの成熟、リーグ最少28失点を誇る守備力、リーグ2位の81得点を叩き出した攻撃力、リーグ戦38試合中25試合で記録した複数得点、昨季9試合で見せた1点差をものにする勝負強さ……。チーム単位で考えても、強さの理由は数え切れないほど容易に挙げられる。

 ただ、思案するなかでふっと思い起こされたのはMF橘田健人の言葉だった。シーズン後半にアンカーの定位置に収まり、巻き返しの立役者となった昨季の大卒ルーキーは、こんな話を聞かせてくれた。

 それはリーグ優勝が決まる直前の時期だった。

「試合に出場して少しずつ慣れてきた部分もあったので、自分も普通にできるようになったかなと思っていたんですけど、少しだけ試合期間が空き、オフが明けた練習で自分はまだまだだなと思い知らされました。レベルの高い人たちと一緒に練習することで、それを痛感したんです」

 こちらが「試合よりも?」と聞けば、橘田は素直にうなずいた。

「もちろん試合でもまだまだだなと感じる部分はありますが、個人的には練習のほうがより感じることが多いですね」

 大卒ルーキーの発言は、(あまりこういう表現は使いたくないが)ベテランの域に達したストライカーの言葉によって強く裏付けられた。

 今季で在籍13年目を迎える小林悠である。チームがJ1連覇を達成した昨季は、FWレアンドロ・ダミアンの存在もあり、先発機会は限られていた。それでも全く腐ることのなかったストライカーはエースであり、経験者らしく、練習に臨む姿勢ついて話してくれた。

「今季(2021年)は控え組で練習する機会が増えていますけど、控え組が簡単に練習で失点する場面を見て『何なの?』って憤りを感じたんですよね。だって、(控え組で練習している)オレらは試合に出る選手たちに勝たなければ、出場機会を得ることはできないじゃないですか。だから、チャレンジしたうえでのミスならばいいですけど、集中していなかったり、軽率なミスだったりというのは許せないというか。勝ちたい、試合に出たいという意欲が生ぬるく感じてしまって。そのことを自分より年齢の若い選手たちには口が酸っぱくなるくらい言っています。それはもう、うるさいって思われるくらいに(笑)」

易々とポジションは渡さない——麻生グラウンドに漂う濃度の高いムード

 昨季の小林は、途中出場が多かった。それでも、6年連続の二桁得点をマークできたのは、日々の積み重ねとレギュラーを奪い返してやるという反骨精神に他ならない。

 ルーキーの橘田、ベテランの小林。ふたりの言葉をつなげて考えていくと、必然的にここ5年で6つのタイトルを獲得した川崎の強さにたどり着く。

 それは彼らのホーム・等々力陸上競技場と並び、もう1つの聖地・麻生グラウンドにあると——。

 サッカーでは控え組が発奮すればするほど、チームは強くなると言われている。その雰囲気が麻生グラウンドにはある。

 指揮官である鬼木達監督をはじめ、コーチングスタッフが作り出している空気ともいえるが、川崎にはそれを希薄させることなく、より濃度を増そうとしている選手たちがいる。

 昨季途中にはMF三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)、MF田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)が海を渡り、シーズン終了後にはMF旗手怜央がセルティックへと移籍した。

 俯瞰してみれば、2022シーズンを迎える川崎の戦力ダウンは著しいように見える。ただし、昨季も大卒ルーキーだった橘田が台頭したように、新しい芽が出てくる土壌が川崎にはある。それを作り出しているのは、小林であり、MF家長昭博、DF登里享平、DF谷口彰悟、MF大島僚太といったタイトルを獲るためにすべきことを知る面々なのだろう。

 易々とポジションは渡さない。もしくは必ずやポジションを奪い返す。来る新シーズンも麻生グラウンドにその空気を漂わせるであろう川崎は、やはり2022年のJ1においても主役の1人となる。

Football ZONE web編集部