モリエンテスが注目する2人の若手指導者。元同僚ジダン成功の理由

 レアル・マドリーなど欧州のビッグクラブでプレーし、スペイン代表としても長く活躍したフェルナンド・モリエンテス氏は、現在ラ・リーガのアンバサダーとして世界中を駆け回っている。今回、ラ・リーガと提携したJリーグが主催する「Jリーグワールドチャレンジ」の鹿島アントラーズセビージャに合わせて来日した同氏が、試合当日の忙しい合間を縫って独占インタビューに応じてくれた。元スペイン代表が独自の指導者論、そして記憶に刻まれた15年前のあの試合について語る。(取材・文:舩木渉)

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ーーお忙しい中時間を取っていただきありがとうございます。今日はサッカースクールで地元の子どもたちを指導されたそうですね。いかがでしたか?

 とてもいい経験でした。私もすごく楽しめました。子どもたちに大きなポテンシャルを見出しました。かなり上手な子もいたので、今後が楽しみです。

ーー先日のセビージャ対セレッソ大阪の試合を見ていて、選手個々の持つ戦術理解度や知識の差が如実に表れていました。その部分がスペインと日本の選手の最も大きな違いだと感じています。スペインでは戦術的な要素をどの年代から指導していくのでしょうか。

 スペインでは育成、下部組織から教育することを非常に重要と考えています。8歳から13歳の頃は、基本的なコーディネーション(様々な動きを習得し、自分の体を自由かつ複雑に動かせるようにすること)だったり、サッカーを楽しみながら教えていきます。13歳か14歳の頃からよりテクニカルになっていきます。より戦術的なことも教えていきますし、ポジションごとのプレーもその年代から教わります。

 15歳から16歳になるとスペインの選手のほとんどは自分のポジションがどういう役割を担わなければいけないのか、自分のチーム内での役割もよく理解していると思います。そして私は小さい頃からフィジカルとメンタルの両方を意識して教えていくことが重要だと考えています。

ーーモリエンテスさんは5年前のインタビューで「次に来るのはルイス・エンリケだ」と予言されていました。彼はその後、実際にバルセロナに数多くの栄光をもたらしました。5年経って改めて、今注目している若手指導者はいますか?

 ルイス・エンリケ監督はあの頃から才能のある指導者だと思っていました。私は選手から監督になった人の方がいいと思っています。なぜかと言うと、ロッカールームの中で話されることや、選手との関係もよくわかっていますし、スポーツへの理解もあって、技術的な側面の知見も持っているからです。

 そういったことを理解した上で、しっかりとした哲学を持って進むことが重要なので、選手から監督になるルートが一番いいと思っています。今はU-21スペイン代表のアルベルト・セラーデス監督(現役時代はバルセロナやレアル・マドリーなどで活躍、監督として2017年のU-21 EURO準優勝)と、U-17スペイン代表のサンティ・デニア監督(現役時代はアトレティコ・マドリーなどで活躍、監督として2017年のU-17 EURO制覇)に注目しています。

忘れられない15年前の日韓W杯。韓国戦は「もう一度やり直したい」

ーーモリエンテスさんの元チームメイトだったジネディーヌ・ジダン監督はレアル・マドリーで輝かしい結果を残しています。彼が成功できた理由も選手時代の経験があったからこそ、ということになるのでしょうか。

 やはりジダンも選手だったので、このスポーツを熟知しています。選手をどのように扱ったらいいかをよくわかっている。レアル・マドリーにはスター選手が揃っているので、彼らをうまくマネージメントするのはものすごく難しいことです。ジダンは選手だったからこそ、それができるんだと思います。そして素晴らしいチームがあるので、それもジダンの成功を手助けしていると思います。

ーー最後にどうしても聞きたいことがあります。僕も含めて、我々日本人のファンはモリエンテスさんといえば2002年の日韓W杯でのあの試合のことを思い出します。2つのゴールが取り消されて、韓国に敗れて、涙を流されていた姿が印象的でした。当時のことを改めて振り返って、率直な気持ちを聞かせてください。

 喜んではいませんでしたよね(笑)。やはりあの時は悔しい思いをしました。W杯というとても重要な舞台だったので、それまでものすごい努力をしてきました。もし自分のせいでうまくいかなかったのならいいですが、あの試合では第三者の審判も試合の大きな部分を占めたと思っています。そういった意味で本当に悔しかったので、試合が終わって涙が流れたんだと思います。ただ時間が癒してくれました。

ーーあの試合をやり直せるとしたら、もう一度やりたいですか?

 審判を代えてくれるなら、もう一度やり直したいですね(苦笑)

ーー僕もホアキンのセンタリングからのモリエンテスさんのゴールをもう一度見たいです。あのゴールは審判に取り消されるべきものではなかったと思いますか?

 もしあのゴールが決まっていたら、自分のサッカー人生の中で最も重要なゴールになっていたでしょう。自分のゴールによってW杯の次のステージに進めるということは、大きな意味のあることですからね。それだけの大きな意味を持つ1点だったと思います。

ーーあの韓国戦は一生忘れない試合ですね。

 そうですね。生涯忘れないと思います。

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フェルナンド・モリエンテス

1976年4月5日、スペイン・エストレマドゥーラ州カセレス生まれ。アルバセテの下部組織で育ち、1993年にトップチームデビューを果たす。その後はサラゴサやレアル・マドリー、モナコ、リバプール、バレンシア、マルセイユでプレーして2010年に一度現役引退。その後、2015年に息子が所属していた地域リーグ(6部相当)のDAVサンタ・アナで現役に復帰し、3試合に出場してそのシーズン限りで再度引退した。レアル・マドリー時代にはチャンピオンズリーグ優勝3回、リーグ優勝2回をはじめとする数々のタイトル獲得に貢献。1998年にデビューを果たしたスペイン代表ではW杯に2度出場し、通算47試合出場27得点を記録している。指導者としては2012年から2015年にかけて古巣レアル・マドリーの下部組織を率いた経験があり、2015年夏から2016年2月までセグンダB(3部)のCFフエンラブラダの監督も務めた。現在はテレビ解説者として活動する傍ら、ラ・リーガのアンバサダーとしてスペインサッカーの普及活動にも積極的に参加している。

(取材・文:舩木渉)