現在の日本代表に足りないものを埋めるにはどうすれば

 日本代表選手として歴代最多の国際Aマッチ出場を果たしている遠藤保仁。長きにわたって日本代表の攻撃を操っていたコントロールタワーの目に、現在の日本代表はどのように映っているのだろうか。8月7日発売となる『フットボール批評issue17』で敢行したインタビューで、ガンバ大阪MFは自身の考えを語っている。(取材・文:西部謙司)

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「間違いなく少ないですね」

 中盤でのタメ、あるいは「遊びのパス」。いっけん無駄にみえて、そこで一呼吸おくことで展開を大きく変えていく組み立て。日本代表にそれが少ないのでは?

 遠藤保仁の答えは予想どおりだった。それにかけてはエキスパートで、それで日本代表を動かしてきた選手なのだ。では、現在の日本代表に足りないものを埋めるにはどうしたらいいのか、何が必要なのか。

「勇気じゃないですか」

 日本代表選手が臆病だという意味ではない。背景を説明する必要があるだろう。ハリルホジッチ監督の指揮する日本代表は自分たちに“ボールがない”ことを前提としたチーム作りを進めている。堅固なゾーンの守備ブロックを敷いて敵の攻撃を迎撃し、素早くカウンターアタックを仕掛けることを目指している。

 もちろん、これしかやらないわけではないが、流行の言葉でいえば「デュエル」と「縦に速い攻撃」のサッカーだ。一方、遠藤は“ボールがある”ことを前提としたサッカーで能力と存在感を発揮してきた選手である。

 現在の代表に遠藤はいない。本人が招集されていないだけでなく、“遠藤”に該当するMFすらいない。ボランチに要求される仕事が違うからだ。ボールをどう生かすかではなく、敵のボールを奪える能力が優先されている。

 当初、“遠藤”は起用されていた。柏木陽介、大島僚太がいた。しかし最終予選の初戦でUAEに敗れると、ハリルホジッチ監督はチームの性格をはっきりさせた。“遠藤”はいなくなり、“ボールがない”サッカーへと舵が切られた。遠藤的なプレーの減少は必然といえる。

 ただ、全く不要というわけでもない。それが必要とされる場面は何度となくある。それがチームの目指している方向性とは違っていても、サッカーである以上必ずある。しかし、そのときにチームの方向性と違うプレーをやるには「勇気」が要る。

「(監督の指示どおりにやらないと)試合に出られない雰囲気は、代表に入っていない僕らでも感じますから、代表選手はもっと感じているでしょう」

「1人や2人でゲームの途中にあのサッカーを変えるのは難しい」

 ハリルホジッチはフランスでキャリアを積んだ監督で、一般的にフランスの監督は選手への“圧”が強い。そうしないとまとまらないからだ。その中で、監督の方向性とは違うプレーをするのは簡単ではないだろう。また、遠藤は「1人や2人だけでは難しい」とも言う。1人だけ違うことをやっても効果がないからだ。

「メンバーとしてはやれないことはない。ただ、1人や2人でゲームの途中にあのサッカーを変えるのは難しい。4、5人が絡まないとできない」

 縦に速い攻撃を指向するチームの中で、意図的にスローダウンするのはリスクがあるわけだ。だが、すべて縦に速い攻撃が有効と限らないのは論を待たない。ハリルホジッチ監督もそんなことは承知している。そうでなければ柏木や大島は最初から使っていない。ゆっくり攻めて点が取れるなら、それで文句はないはずである。しかし、監督が徹底させていることと違うプレーをするなら、必ず結果を出さなければならない。

 遠藤は監督に反抗しろと言っているわけではない。

「ここまで来たら、監督の言うことを徹底してやらなければいけない。いまさら戦い方を変えろといっても無理ですし、やりきれるかどうか」

 遠藤とハリルホジッチ監督は、指向性において水と油だ。現状の日本代表のプレースタイルが好みでないことは容易に想像できる。しかし、勝つという一点については同じ。

 勝つために監督のプランに従ってプレーするのは当然であり、予選の残り2試合ではとくに徹底すべきだと遠藤は話している。ただ、それで足りないのであれば、勝つために選手は勇気を持って成すべき事を為せと。

 オーストラリアがどう出てくるかは予測しがたいが、引き分けでも構わないと考えて日本にボールを持たせる戦い方はありえる。以前とは違って、現在のオーストラリアはボールを持ちたいチームなので何ともいえないところはあるが、彼らに引かれてしまったとき、日本に何ができるかは予め考えておかなければならない。

(取材・文:西部謙司)