森岡亮太、ベルギーで大爆発。地元紙は大々的に特集

今季からベルギー1部のワースラント・ベフェレンでプレーする森岡亮太が、大ブレイクの予感を漂わせている。開幕から3試合で2ゴール2アシストを記録し、瞬く間にチームの中心選手として定着した。この活躍を現地メディアも見逃さない。ベルギーで大きな注目を集める日本人司令塔の今を追った。(取材・文:中田徹)

——-

 クラブ・ブルージュのエマニエル・デニス(19)というウインガーと、ワースラント・ベフェレンの森岡亮太(26)の2人が、“今季のベルギーリーグのサプライズ”を起こしている。デニスは昨季までゾリャ・ルハンスク(ウクライナ)でプレーしていたナイジェリア人選手で、加速が鋭いドリブルと3試合で4ゴールという得点力がとても魅力的だ。

 森岡亮太は3試合で2ゴール2アシストを決めており、『ヘット・ニーウス・ブラット』紙は3週間続けて彼をベストイレブンに選出している。第1節のヘンク戦では、美しいスルーパスが相手4人の間を通り抜け、右WGオリビエ・ミニの先制ゴールを演出した。

 さらに第2節のメヘレン戦では、森岡が地元ファンの前で2ゴールと大爆発。地元紙『ガセット・ファン・アントウェルペン』のスポーツ欄一面は、森岡の写真と「フレートヒール(注:ベフェレンのホームスタジアム)のニューセンセーション。そして日本の人事マネージャー」という見出しで9割を占めた。

 同紙のベフェレン対メヘレンが2-2で終わったことを報じるはずのマッチレポートは、まるまる「あなたが知らないといけない森岡亮太の10のこと」という森岡の紹介記事になってしまった。

 そこには「たった27万5000ユーロの移籍金」「ブログを書いている」「人事マネージャーの資格を持っている」「子供が生まれたばかり」「新入りとしてチームメートの前で『君が代』を歌った」「久保裕也(ヘント)も追わないといけないので、日本人記者が足りない」「森岡はピッチのリーダー」「久保、川島永嗣(現メス、元スタンダール・リエージュ)とブリュッセルで寿司を食べる」「メヘレン戦の1点目は、キャリアで初めてのヘディングによるゴール」「バルセロナが夢」といったトピックが並んでいた。

「人事マネージャー」の資格とは? 本人を直撃

 それにしても「人事マネージャー」とはなんだろう!? 後日、森岡本人に聞いてみた。

――「人事マネージャーの資格」とは何でしょうか? こちらの新聞で「あなたが知らないといけない森岡亮太の10のこと」という記事がありまして、確か早稲田大学の通信課程を卒業されたと思いますが

「人間科学部を卒業しただけです」

――専門は人事とか、経営とか?

「広く浅くという感じでした。ただただ卒業したという感じです」

――(通信制大学に)挫折している人は多い

「1年続く人はあまりいないですね。最初のそこじゃないですか。細かく言うと、英語、統計学とか5つぐらい必修で獲らないといけない科目があって、統計学が一般人じゃ出来ないんです」

――統計学は数学の知識がいりますよね

「高校の数学の先生にマンツーマンで教えてもらわないといけなかった。でも、高校の先生でも難しいと言ってましたね。 それが必修だったんですよ。入る前から『統計学は普通のレベルじゃ無理だ』ということだけは言われてました。その他の科目は大丈夫ですが、統計学だけはオランダ語を学ぶようなものです」

――統計学は別の言語なんですね。成し遂げたモチベーションはどこから?

「義務でしたね。高卒でプロに進むんだったらEスクール(大学の通信課程)を卒業するというのが親との約束でした。 そういう制度があるとヴィッセルのスカウトの人から教えてもらいました。今から思えばようやったわ」

 話を第3節のオーステンデ戦に進める。この試合で森岡は、右サイドから一寸の狂いもない正確なクロスを入れて、CFWジーニョ・ガノのヘディングゴールをお膳立てした。

 森岡をオーステンデ戦のマン・オブ・ザ・マッチに選んだ大手スポーツウェブサイト『スポルツァ』は「森岡亮太は見ていて楽しい。この日本人ゲームメーカーは全て難なくこなし、正確な判断で局面を打開し、CFWガノとすっかり息があっている」と論評している。

ベルギーで覚醒した芸術的ゲームメイク能力。チームも大変貌

 そう、森岡亮太は見ていて楽しいのだ!

 公共テレビ局『エエン』のサッカートーク番組『エクストラ・タイム』は毎週、森岡のプレーを紹介しているが、メヘレン戦でチームメイト(!)の股を通した森岡のパスに驚嘆していた。森岡は“味方の股を通したパス”を「あれは狙ってというか、『どけっ!』っていう感じでした」と振り返っている。

 観客は毎試合、森岡のスルーパス、敵の股を抜くドリブルやパス、しっかりボールの芯を捉えたサイドチェンジのロングパスを拝むことができる。さらにボール奪取の回数も結構多い。

 そんな森岡のことを解説者のビム・デ・コニンクは「私にとって森岡亮太は今シーズン序盤のセンセーション。古典的な10番は現代サッカーで今や存在しないが、森岡は自身でゴールを決めるだけでなく、チームにスピードを与え、チームメートをよりよくフットボールさせることの出来る、まさにベフェレンの10番である。素晴らしい補強、素晴らしいスカウト。

彼は十分に日本代表を狙える。爆発力がある久保裕也とは違ったタイプの選手で、森岡はもっとゲームメーカーのタイプ。再びべフェレンは見ていて楽しいチームになった。以前の監督のもとでは、気持ちは伝わってきたけれど、べフェレンは見ていて辛かった。今は間違いなくそんなことはない」と『フットボール・スポーツ・マガジン』に記した。

 森岡を除けば、今季のベフェレンのレギュラー陣は昨季後半戦と変わらない。昨季のべフェレンはレギュラーシーズン30試合でたった28ゴールしか挙げられなかった。それが今季は3試合で8ゴール。シーズンは長く、必ず苦しい時期が来るから計算通りにはならないが、今のペースが続けば80ゴールという驚異的なものになる。

 たった1人の選手がチームに与えた劇的な変化。それは、得点数だけでなく、年間チケットの売れ行きが伸び始めたことにも表れている。

(取材・文:中田徹)