選手、審判ら12名が逮捕。サッカー界から無期限の追放へ

 今年11月、タイサッカー界が大きなスキャンダルに見舞われた。トップリーグの選手、審判らを含めた八百長疑惑が発覚したのだ。リーグ戦が終わり、残すはカップ戦決勝というタイミングで明らかになった事件。当時は連日、メディアをにぎわす事態に発展した。いったい何が起こったのか、現地からリポートする。(取材・文:長沢正博【バンコク】)

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 11月21日、タイサッカー協会のソムヨット・プンパンムアン会長は、タイ警察のジャカティップ・チャイジンダー長官らと共に記者会見を開き、事件の概要をメディアに説明した。八百長に関与したとされるのは、タイの一部リーグ(T1)に所属するネイビーFCの選手4名とナコンラチャシマーFCの選手1名、シーサケットFCの幹部1名、主審1名、副審1名ら計12名。会見によれば全員が逮捕され、既に保釈されたという。主審は国際審判であり、代表歴をもつ選手も含まれている。

 構図としては、海外のサッカー賭博サイトで利益を得ようとしたグループが、選手または審判に八百長を持ちかけ、得点数などの操作を図ろうとしたとされる。報酬として選手、審判一人につき1試合あたり10万バーツ(1バーツ=約3.4円)から多い時で35万バーツもの金が渡ったという。具体的にどのサイトなのか名前などは公表されていない。

 現時点で八百長があったとされているのはリーグ戦3試合およびカップ戦1試合の計4試合。11月22日のサイアムスポーツによると、9月10日に行われたT1のナコンラチャシマーFC対スパンブリーFC(2-2の引き分け)、9月17日のネイビーFC対パタヤユナイテッド(2-2の引き分け)、9月23日のネイビーFC対ムアントンユナイテッド(ムアントンが2対1で勝利)、そして7月26日に行われたリーグカップのウボンUMTユナイテッド対シーサケットFC(ウボンが3対0で勝利)となっている。このリーグカップの試合に関しては、名前は明らかになっていないが、先の12名とはまた別のシーサケットFCの選手4名の関与も疑われている。この他に、八百長が仕組まれそうになったが、選手が協力を拒否した試合もあったという。

 既にナコンラチャシマーFCは関係した選手に関して、延長したばかりの契約を解除する意向を事件発覚後の会見で示した。ネイビーFCも4選手に対して活動停止処分を発表。逮捕者を出したいずれのチームも、クラブ自体は八百長と無関係であることを表明している。そしてソムヨット会長は関係した選手、審判に関してサッカー界からの無期限追放処分を科す旨を明らかにしている。

選手だけでなく所属チームに活動停止、降格処分が下される可能性も

 発表当時は連日、メディアをにぎわす一大スキャンダルに発展したが、実は8月頃から既にサッカー協会らが八百長の捜査を進めているとの情報が出ていた。9月にもサッカー協会のスポークスマンが八百長を行ったチームに対して近く処分を下すとの発言をしている。そして、11月21日になってサッカー協会が警察と共に会見を開くに至った。

 11月21日の会見でジャカティップ長官が語った内容によると、選手には刑事処分として5年以下の懲役または20万バーツ以上50万バーツ以下の罰金、審判には1年から10年の懲役または30万バーツ以上60万バーツ以下の罰金などが科される可能性がある。また、サッカー協会の規約によれば、所属したチームに対しても1年から3年の活動停止(復帰の可否、カテゴリーは再度検討)、および協会が支給した助成金の返金などが科される恐れがある。

 同日の会見でソムヨット会長は1年近く調査を進め来たと話した。そして、サッカー界では10年近く八百長が蔓延ってきたが何も行動がなされなかったとし、サッカー協会の元幹部も関与した疑いがあることすら匂わせている。そして、「癌があるなら手術しなければならない。痛みは伴うが、治るチャンスがある」と強い決意を示した。

 タイのサッカー界では以前から八百長の存在がささやかれてきた。タイでは昨年も2人の元審判が八百長に関与したとしてAFCから永久追放処分を受けたばかりだ。2012年のタイのFAカップ決勝でも、主審を務めた日本人審判に八百長が持ちかけられた、と言われている。現在、既に騒動は落ち着き、チームへの処分も科される予定はない。ただ、ソムヨット会長は最近、さらなる関係者の告発も視野に入れている旨の発言をしている。なにより、会長自身が前警察長官でもある。今回を機にサッカー界から腐敗一掃となるのか、調査の行方を見守りたい。

(取材・文:長沢正博【バンコク】)