スター揃いのベルギー。だが、個の力に頼りすぎな一面も

 6月14日に開幕する2018FIFAワールドカップロシア。グループリーグの組み合わせも決定し、本大会に向けて期待感は高まるばかりだ。4年に一度開催されるサッカーの祭典には各大陸予選を勝ち抜いた32チームが参加する。フットボールチャンネルでは、その全チームを紹介していきたい。今回はグループGに入ったベルギー代表を取り上げる。(文:中田徹)

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【ベルギー代表】
FIFAランキング:5位(2017年12月)
監督: ロベルト・マルティネス(2016年〜)
2大会連続13回目の出場
最高成績:ベスト4(1986年メキシコ大会)
欧州予選グループH 首位通過

 ベルギー代表の黄金期は1980年代のこと。82年ワールドカップの開幕戦では、ディフェンディングチャンピオンのアルゼンチンを1対0で破って世界を驚かせ、86年ワールドカップでは決勝トーナメントでソ連を4対3、スペインをPK戦の末に破ってベスト4に進出した。以来、ベルギーは堅守速攻型のチームとして、ワールドカップの常連チームとなった。

 だが2002年ワールドカップでベスト16に進出したのを最後に、ベルギーは長らくビッグイベントの予選に勝ち抜けなくなった。低迷の兆候は2000年、オランダとともに共催したユーロでグループリーグ敗退を喫した頃からあった。

 危機感を募らせた協会関係者は近隣諸国の現場を見て回り、ベルギーのユース育成システムが極端なまでの勝利至上主義に陥っていることに気がついた。それからベルギーは攻撃サッカーを基調とした育成に取り組み、環境整備、指導者のレベルアップにも力を注いだ。 

 こうして生まれたのが、強力な“個”の集団である。エデン・アザール、ケビン・デ・ブルイネは「プレミアのスーパースター」、すなわち「世界のスーパースター」だ。GKクルトワ、DFコンパニー、MFフェライニ、FWルカクなど、各ラインにスターが揃ったベルギーは、メルテンスですらレギュラーの座が危ういほど選手層が厚く、国内では「ゴールデン・エイジ」と呼ばれている。

 今やベルギーにとって予選突破は簡単なもの。14年ワールドカップ、16年ユーロに出場したことによって、ベルギーは世界のサッカーシーンに完全に復帰した。

 ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナと同組になった今回のワールドカップ予選でも、ベルギーは9勝1分け、43ゴール6失点という圧巻の成績を収め、欧州勢でロシア行き一番乗りを果たした。

 気になるのは、果たしてマルティネス監督が選手たちやベルギー国民の信頼を完全に勝ち得ることが出来るかどうかということ。16年ユーロまで指揮を執ったビルモッツが更迭されたのは、戦術の無さが理由とされている。

 そこでスペイン人指導者のマルティネスが招聘されたのだが、11月10日のメキシコとの親善試合(3対3)で守備組織が崩壊し、デ・ブルイネが「相変わらずベルギーは“個”の力に頼ったサッカーをしている」と指揮官を猛烈に批判した。続く日本戦(1対0)もパフォーマンスが上がらず、国民の間からは「戦術がない。これならビルモッツと変わらない」という声が出始めている。

早くも決勝トーナメントを見据えるベルギー国内

目標:ベスト4
ノルマ:ベスト8

「運に恵まれた抽選」(デ・モルヘン紙)、「準々決勝進出は義務」(ヘット・ニーウスブラット紙)などと、クレムリンでの抽選会後のベルギーメディアは楽観的な見出しが踊った。それも無理はない。先ずグループリーグの初戦はパナマ、2戦目はチュニジアが相手だ。ベルギーメディアは「グループリーグの最初の2戦でベスト16進出を確定し、3戦目のイングランド戦はグループGの1位・2位決定戦となる」と目論む。

 決勝トーナメント1回戦の相手は、グループHから勝ち上がったチームとなる。つまり、ポーランド、セネガル、コロンビア、日本のいずれかだ。「この相手なら、ベルギーは勝たないといけない」というのが、ベルギーメディアの共通理解である。
 つまり、ベルギーにとっては準々決勝から「本当のワールドカップ」だ。ヘット・ニーウスブラット紙は「準々決勝の相手はブラジルか、それともドイツか」という大見出しを付けている。

 こうして伺えるのが、ベルギーにとってノルマはベスト8、目標はベスト4進出であるこということ。かつての名選手、マルク・デフリース氏はヘット・ラーツテ・ニーウス紙に寄稿するコラムに「出来ればブラジルよりドイツと準々決勝で当たりたい。ネイマールを筆頭にブラジルの個の力はすごく、ドリームチームだ。ブラジルが相手だろうと、ドイツが相手だろうと、ともかくベルギーはピークに来ないといけない」と記す。

 デフリース氏によると、準々決勝でベルギーの鍵となるのが「アザールとデ・ブライネが共に爆発すること」「センターバック勢が怪我なくプレーできること」の2点だ。

 マルティネス監督は主に3-4-3,3-4-2-1フォーメーションを採用している。アザールはチェルシーと同じように、左サイドからフリーロールの役割を与えられており、ドリブル、スルーパス、シュートといった試合を決定付けるプレーで魅せる。

 デ・ブルイネは右サイド、もしくは中盤でプレーし、得点に直接絡むプレーのみならず、攻守の切り替え時の戦術的な動きでもキーマンになる。アザールとデ・ブルイネの2人はポジションチェンジで近寄って素晴らしいコンビネーションを披露し、さらにウイングバックのカラスコ(チャドリ)、ムニエ、ストライカーのルカクを輝かせることも出来る。

 センターバックの層の薄さはベルギーのアキレス腱。負傷の多いコンパニーに計算が立たない中、レギュラーと目されるのはアルデルワイレルト、フェルマーレン、フェルトンゲンの3人。そのうち一人でも欠けると、ベルギーの守備力は一気に下がってしまうだろう。

(文:中田徹)