あまりに大きかった吉田麻也の存在感

 日本代表は欧州に遠征して戦ったマリ代表、ウクライナ代表との2試合を1分1敗で終えた。プレーの内容からは結果以上にポジティブなものが見られず、残ったのは失望と不安だった。ワールドカップ本大会まで3ヶ月を切った今、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いるチームは何と向き合うべきなのだろうか。(文:ショーン・キャロル)

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 国際親善試合での敗戦や低調なパフォーマンスは、さほど重要なものではないとして片付けられてしまうことも多い。レギュラー選手が欠場していたり、出場機会の乏しい選手に力を見せるチャンスが与えられたりするような試合でもある。

 さらに楽観的に考えれば、こういう試合は、チームが今後取り組んでいくべき弱点を見つけ出すために欠かせない学びの機会だと捉えることさえできる。

 だが、日本代表がウクライナに敗れた27日の試合について問題視すべきなのは、この試合で特定された課題は以前から慢性的に存在するものであり、手早く修正する手段があるようには思えないことだ。リエージュでの試合を終えた時点でワールドカップまで残りわずか84日(この記事が読まれている時点ではさらに短い)だということを考えれば不安は拭えない。

 スタッド・モーリス・デュフランでの試合では、チームの守備面には本当の意味での堅固さは全くみられなかった。ウクライナは、必要があると感じた時にはいつでも好きなように突破できるかのようだった。後方からサポートする選手もたびたび参加し、広大なスペースと時間を得てパスやシュートを選択することができていた。

 その理由の大部分は吉田麻也の負傷にある。今回の不在を通して、29歳のセンターバックがいかにチームに欠かせない存在であるかが改めて浮き彫りにされた。

 選手全員が揃った状態なら、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は吉田のパートナーとして槙野智章を選ぶことになりそうだ。2試合ともに90分間プレーしたその槙野も、昌子源も植田直通も、ベルギーの2試合でのプレーが極端に悪かったわけではない。

 それでも日本の最終ラインは、サウサンプトンのセンターバックが指揮を執らなければ、統制が取れている状態とは程遠かった。守備から攻撃に転じようとする場面であまりにも簡単にボールを失ってしまうことが多すぎた。

日本代表の最も深刻な不安の種

 4バックには、もうひとりの選手の不在も大きく響いていた。宇賀神友弥はマリ戦で散々なパフォーマンスを見せ、警告を受けてPKを与えたあとハーフタイムで交代させられてしまった。酒井高徳はウクライナの攻撃陣に何度も狙われ、あわやオウンゴールという場面もあり、攻撃参加にも苦戦していた。最近の酒井宏樹がいかに良かったかが強調された形だ。

 マルセイユ所属の酒井宏樹は右サイドで堅固な守備を見せるだけでない。前に出てチームの組み立てをサポートする意欲を見せ、自ら仕掛けることも多い。そういったプレーがこの2試合では決定的に欠けていた。最終ラインと中盤、中盤と前線のリンクは全く印象に残らなかった。

 実際のところ、ハリルホジッチ監督はこの状況に不安を感じていることだろう。特に中盤では、長谷部誠は彼らしくないルーズなプレーを見せ、山口蛍は存在感を発揮できず、森岡亮太も柴崎岳も中盤でフリーロールを与えられるほど強烈なアピールはできなかった。

 つい最近まで、そのポジションは井手口陽介のものになるかと思われていた。だがリーズへ移籍し、クルトゥラル・レオネサへレンタルされたあと、2月半ばから試合に出場していないという状況でポジションを失ってしまった。

 その中盤とファイナルサードを繋ぐ選手の不在こそが、6月19日に行われるコロンビアとのワールドカップ初戦に向けて、おそらく最も深刻な不安の種となるだろう。マリやウクライナのように堅実ではあるが豪華とは程遠い相手に対し、効果的にボールを動かしてチャンスを生み出すことができないのであれば、サランスク、エカテリンブルク、ヴォルゴグラードで行われる強豪国との真剣勝負で日本代表はどう戦うことができるというのだろうか。

ハリルの「テスト」しすぎで失った熟成の時間

 ハリルホジッチ監督が責められるべき部分はここにある。日本代表がワールドカップ予選突破を決めて以降の6ヶ月間で、ボスニア人指揮官はたびたびメンバーを入れ替え、様々な選択肢をテストしようとしてきた。前線の3人のポジションに関しては特にそうだ。

 この間に、サムライブルーの前線では9人の異なる選手たちが先発で出場してきた(EAFF E-1サッカー選手権は含まず)。原口元気、久保裕也、大迫勇也の3人が特に好まれていることは変わらないようだが、彼らの誰一人としてその立場を正当化するだけの結果は残せていない。昨年10月6日のニュージーランド戦で大迫が決めたPKが、彼ら3人の記録した最後のゴールである。

 原口がウクライナ戦でPKを獲得しようと試みていた見苦しいプレーが、現在の状況をよく表している。抵抗力のある守備陣に対して効果的に突破を図る術を見つけられず苦しんでいる様子であり、その違和感により生まれるフラストレーションに打ち勝つことができていないようだ。

 だが全てが失われたわけではない。岡崎慎司や香川真司、清武弘嗣、武藤嘉紀、乾貴士といった選手たちもまだ十分に候補の枠内に残されており、手遅れになる前にチームにプラスアルファを加えられる選手たちは存在している。

 とはいえ、テストと修正を行える時間は終わりに近づきつつある。ハリルホジッチ監督は選択肢を確定させ、そのメンバーに理解を深める機会と自由を与える必要がある。

 監督から先発11人の座を託された選手たちも、プレーの改善に努めなければならない。ここ最近のパフォーマンスをそのままワールドカップに持ち込んでしまうようでは、4年前のブラジルでの控えめな戦いぶりから何かが変わるとは考えにくい。

(文:ショーン・キャロル)