「彼は日本人の中で一番いい監督」

 人気コラム「英国人の視点」などを執筆するショーン・キャロル氏。過去5年間にわたり発表してきたコラムやレポートを厳選してまとめた1冊『英国人から見た日本サッカー “摩訶不思議”ニッポンの蹴球文化』が好評発売中。そこで、著者であるショーン氏に改めて“日本サッカーのあれこれ”についてインタビューを敢行。第2回となる今回は、「A代表と五輪代表の監督を兼任する森保一氏への期待」について。(文:三谷悠)

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――サンフレッチェ広島時代、6シーズンで3度のJリーグ制覇を果たした森保一監督を、ショーンさんは早くから日本代表監督に推していました。五輪代表と合わせて、それが現実となった今、改めて森保監督について伺ういたいのですが。

「もし可能性があったのなら、僕はアーセン・ヴェンゲルが一番いいと思っていたんです。ヴェンゲルが監督で、森保さんはコーチ。なぜなら、森保さんはサンフレッチェ広島のときにミハイロ・ペトロヴィッチ監督(当時)のもとでコーチとして学んで、結果を出したから。

それに、ACLやクラブワールドカップを戦ったこともあるけど、監督としての国際経験は決して多くない。だから、ヴェンゲルのもとで経験を積んでからがベストかなと考えていました。でも、彼は日本人の中で一番いい監督だから、全然ガッカリはしていません。選手も彼のことをすごく認めているし、メディアに対してもストレートな態度をとれます。

何より若い選手を育てるのがとても上手です。僕は3回くらい選手の取材で広島に行ったことがありますが、森保さんはトップチームだけではなく、いつもサテライトやユースのトレーニングを見ていて、それぞれのチームの指導者ともよく話していました。長谷部選手らが日本代表を引退し、新しいチームを作らないといけないタイミングでの就任は、いいと思いますね。

この間、森保さんの指導を受けた元選手から聞きましたが、彼はコーチもすごく信頼しているようです。自分が全部をやらないとけいけないとは思っていない。GKコーチやフィジカルコーチ、それぞれに仕事をちゃんと任せて、自分の仕事に集中しているところもいい」

兼任監督の難しさ

――森保新監督の人柄や指導力が素晴らしいのは誰もが知るところですが、やはりA代表と五輪代表の監督を同時にこなすのは難しいですよね。

「A代表と五輪代表、両方の監督を同時にするのは本当に難しい。特に、次の五輪は東京開催で期待も大きいですからね。

もし、東京五輪のグループリーグで敗退したら、すごくショックな出来事。メディアやファンはネガティブになるだろうし、逆に金メダルを取ったら、『ワールドカップはどこまで行けるだろう』というプレッシャーも大きくなる。そもそも、スケジュールが大変です。

もちろん五輪代表で活躍した若い選手をA代表でも試しやすい環境にはあります。そこはポジティブな要素ですね。若い選手にとっては、監督もプレースタイルも同じだから、怖がらずにプレーできるはずです。よく『次の日本代表』と言いますが、代表チームはすぐには変わらない。1人ずつ、少しずつ変わっていくものだから。

日本代表の課題は、4年前のワールドカップも今回のロシア大会もそうでしたが、精神的な部分です。ベルギーに2点先行した後、もっと強くて経験のあるチームだったら、うまくゲームを終わらせられたはず。日本は攻撃にいくのか、引いて守るのか、よくわからなくなってしまった。もちろん監督からの指示もありますが、監督はピッチに立てないから、選手が自分たちで決められるように成長するしかない。

繰り返しになりますが、森保さんが監督になったことは今後の日本サッカーを見る上で、本当に楽しみです」

(文:三谷悠)