GKに大切なのは、様々な要素のバランス

長いキャリアの中で出会った監督のサッカースタイルを振り返った部分を、5/16発売の最新刊『新・GK論 10人の証言から読み解く日本型守護神の未来』(田邊雅之著)から、発売に先駆けて一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:田邊雅之)

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―ストイコビッチ監督はいかがでした?

「もちろんGKはDFとビルドアップしていくのですが、彼が求めていたのはオーソドックスなスタイルで、そんなに複雑なことは言われなかった。

 DFがボールを回しているうちにプレスをかけられて苦しくなったら、うまくボールをもらって、次のプレーを選択しろと。自然にビルドアップに絡んでいくイメージですね。

 それにプラスしてストイコビッチ監督の場合は、守備に関する指示が、とにかくクリアーでした。たとえば、このエリアはDFがきちんとケアするから、ここからのシュートはGKが対応しろというように、役割分担がはっきりしていた」

―ストイコビッチ監督には、何度かロングインタビューをしたことがありますが、楢﨑選手に絶大な信頼を抱いていました。ペナルティエリア外からのミドルシュートは、ほぼ確実に止めてくれる。だから自分は安心して試合を見ていられるんだと。

「それはそれで逆にプレッシャーですけど(笑)、GKはこの部分をしっかり守る、DFは相手にこういうことをさせないようにするという約束事が、きちんと共有できていたのは事実です。そういう環境だと、精神的に落ち着いてプレーできるようになるんです。

―ご自身、ミドルシュートなら絶対に止められるというような感覚は?

「特に得意なわけではないですよ。でも、その距離ならゴールに入れさせないぞという気持ちは、必ず持つようにしていました。GKはそういう強い気持ちを持っていなければならないし、精神的な駆け引きを有利にしていく上でも、相手にそう思わせておく必要がある。実際、ミドルを決められた場合には、自分で自分を責めていましたし」

―先ほど、トルシエ監督から前に出るプレーを求められたという話がありましたが、守備範囲は広いほうだと思われますか?

「よくわからないですね。

 ただ守備範囲が広いと言っても、ただ前に出ればいいってわけではないんです。それで後ろに空いたスペースを突かれたりするというのは、あってはならない話ですから。

 やはりGKに大切なのは、様々な要素のバランスだと思うんです。

 まず正しいポジション取りをした上で、状況に応じて、正しい判断をしていくことが必要になる。その結果として、前に出ていくことが必要となれば、いいタイミングで飛び出していくし、逆にゴールのところで構えていたほうがいいような場合には、きちんと準備をする。それが一番大事じゃないかと思います」

(文:田邊雅之)