補強は充実。問題児2人をどうまとめるか

 2019/20シーズンは、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はパリ・サンジェルマンの補強を読み解く。(文:編集部)

——————————

 待っていたのは悪夢の再来だった。昨季のチャンピオンズリーグ(CL)・ベスト16のセカンドレグ、マンチェスター・ユナイテッド戦。パリ・サンジェルマン(PSG)はアウェイでのファーストレグを2-0で制していたにもかかわらず、ホームでの重要な一戦を1-3で落としたのだ。この結果、2戦合計スコアでユナイテッドに上回られたPSGは、最大の目標であったCL制覇という夢を、早々に絶たれることになった。

 リーグ1のタイトルは問題なく獲得したものの、CL・ベスト16敗退という結果のみでPSGの昨季には“失敗”のレッテルが貼られた。ドイツ人指揮官のトーマス・トゥヘルはスター軍団をうまくまとめ上げたが、2016/17シーズンのCL・ベスト16、バルセロナ戦(ホームで4-0と勝利したPSGだがアウェイで1-6の完敗)と似たような悲劇を再び欧州の舞台で引き起こしたため、サポーターの怒りを買うことになってしまった。

 迎える今季だが、PSGの目標はやはり昨季から大きくは変わらない。CLという舞台で栄冠を手に入れることだ。選手の質だけを見ればそのミッション達成は十分可能である。あとは長年の問題である、組織としてどう機能するかに懸かっているだろう。

 そして今夏の補強だが、おおむね充実していると言える。各ポジションに実力者を加えたことで、昨季より層の厚いチームを作り出すことができたのではないだろうか。

 GKにはレアル・マドリーでCL 3連覇などに貢献したケイラー・ナバスが加入。経験豊富で抜群の反射神経を誇るコスタリカ人GKの獲得はPSGにとっては非常に大きい。セビージャから獲得したGKセルヒオ・リコも控え要員としては優秀な人材である。

 最終ラインにはDFアブドゥ・ディアロとDFミッチェル・バッカーを新戦力として迎え入れた。前者はボルシア・ドルトムントで成長を果たした23歳のCBであり、最終ラインの若返りを加速させる上で貴重な戦力となるはず。後者はまだ19歳の若者で、左サイドバックを主戦場としている。PSGではファーストチョイスとはならないはずだが、将来性は十分だ。

 MFマルコ・ヴェラッティの怪我などが多く、枚数が足りなくなることも多かった中盤にはトゥヘルが求めた6番タイプのMFイドリッサ・ゲイェとユーティリティープレイヤーのMFパブロ・サラビア、さらにはMFアンデル・エレーラが加わった。3人とも持っている実力は十分であり、選手層に厚みをもたらす意味でも重要な補強となった。A・エレーラに関してはフリーでの獲得。これも非常に大きい。

 そしてFWネイマール、FWエディンソン・カバーニ、FWキリアン・ムバッペと強力な3枚を誇るFW陣にはインテルからFWマウロ・イカルディが新加入。抜群の決定力と確かなゴール前での嗅覚を持つ同選手は、PSGの新たな1トップとしても十分起用できるほどの存在だ。ただ、懸念点はピッチ外にある。とくにイカルディの妻で代理人でもあるワンダ・ナラの発言はクラブを大きく揺らしかねない。今月にはさっそくイタリア大手メディア『Media Set』のサッカー番組で「ナポリはマウロに費やすお金を持っている。1月にはサプライズがあるかも」と過激な発言。こういった面をクラブとしてどうコントロールしていくかは重要となる。

 また、PSGが抱える問題はもう一人の方にもある。ネイマールだ。今夏の移籍を示唆していたブラジルの至宝であったが、移籍先と思われていたバルセロナからPSG側に満足いくオファーが届かず残留。リーグ戦では2試合の出場で2得点とさすがの存在感を放っているが、本人のモチベーションがどこまで高いのか、あるいはどこまで続くのかは疑問だ。サポーターとの間にも深い溝ができており、シーズン中にまた何らかの問題が起きても不思議ではない。クラブ、そしてトゥヘルがトラブルメーカー2人をどうまとめ上げるのか。ここにPSGの運命があるといっても過言ではない。

補強・総合力診断

IN
GK ケイラー・ナバス(レアル・マドリー)
GK マルチン・ブウカ(チェルシーU-23)
GK レミー・デシャン(クレルモン・フット・オーヴェルニュ63/期限付き移籍期間満了)
GK ケビン・トラップ(フランクフルト/期限付き移籍期間満了)
DF アブドゥ・ディアロ(ボルシア・ドルトムント)
DF ミッチェル・バッカー(アヤックスU-21)
MF アンデル・エレーラ(マンチェスター・ユナイテッド)
MF イドリッサ・ゲイェ(エバートン)
MF パブロ・サラビア(セビージャ)
FW へセ・ロドリゲス(べティス/期限付き移籍期間満了)
FW マウロ・イカルディ(インテル/期限付き移籍)

OUT
GK アルフォンス・アレオラ(レアル・マドリー/期限付き移籍)
GK ケビン・トラップ(フランクフルト/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
GK レミー・デシャン(シャルルロワ/期限付き移籍)
GK ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)
DF ダニエウ・アウベス(サンパウロ)
DF アルテュール・ザグレ(モナコ)
DF スタンリー・エヌソキ(ニース)
MF グレゴシュ・クリホビアク(ロコモティフ・モスクワ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
MF ジオバニ・ロ・チェルソ(べティス/期限付き移籍期間満了→完全移籍→トッテナム)
MF クリストファー・ヌクンク(RBライプツィヒ)
MF アドリアン・ラビオ(ユベントス)
FW へセ・ロドリゲス(スポルティングCP/期限付き移籍)
FW ティモシー・ウェア(リール)
FW ムサ・ディアビ(レバークーゼン)

補強評価:B

 とくに枚数が足りていなかった中盤にエレーラ、ゲイェ、サラビアを加えたことにより、昨季から選手層の厚さが増したことは明らか。ディアロは最終ラインを若返らす意味でも大きな補強となり、カバーニの控えに落ち着きそうだがイカルディも実力は十分。最後尾にナバスがいることも非常に大きいだろう。ネイマールやムバッペら昨季の主力もおおむね残留を果たしており、戦力はアップしている。

総合評価:A

 充実な補強を行ったことで陣容は豪華だと言えるだろう。国内での優勝はマストであり、CLでもベスト4入りは果たしたいところだ。ただ、懸念点はネイマール&イカルディのトラブルメーカー二人。彼らの行動や言動はクラブを大きく揺るがす可能性も高く、様々な場面で影響を及ぼすかもしれない。クラブ、そしてトゥヘルが彼らをどうまとめ上げるかに期待が懸かる。