CL3連覇の原動力になった中盤トリオ

世界のフットボールシーンは、この約20年で大きく変わったと言える。ボスマン判決により欧州での選手の契約と移籍のあり方が変わり、今では100億円を超える契約解除金(移籍金)も珍しくはなくなった。その間、名門クラブはどのような変遷をたどったのか。レアル・マドリーの現代史を複数回に渡って取り上げる。(文:西部謙司)
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 2016/17シーズンはタイトルを獲りまくった。UEFAスーパーカップ、クラブワールドカップ、国内リーグも制し、CL連覇を達成した。

 1992年にCLになってから連覇したチームはなかった。連覇でも快挙なのに、ジネディーヌ・ジダン監督は結局3連覇を成し遂げている。チャンピオンズカップ時代を合わせても3回優勝したのはボブ・ペイズリー(リバプール)、カルロ・アンチェロッティ(ACミラン、レアル)、ジダンの3人だけだ。例によって、監督のおかげで勝ったという印象があまりないのはレアル歴代の優勝監督と同じである。

 CL連覇したシーズンの決勝はユヴェントスを倒している。クリスティアーノ・ロナウドはよりゴール前の仕事に専念していて、依然として「ロナウドのチーム」ではあったが、戦術的にはルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミーロのMF3人が強さの源になっていた。

 17/18シーズンは国内リーグを逃したものの、CLはリバプールを下して3連覇。リバプールの「ストーミング」に対して、モドリッチ、クロース、マルセロらの「ロンド」でハイプレスをかわして流れをつかんでいる。引き気味に構えてリバプールの高速カウンターを封じ、ロンドでプレッシングを空転させた。

 堅守速攻のアトレティコ・マドリーに対して矛と盾の強制交換を行って力を削いだときもそうだったが、レアルはいざとなると自分たちのスタイルには固執しない。一番勝てそうな方法を選んで実行する。それができるのは攻めても守っても一定の強さは維持できるオールマイティだからだ。

 ライバルのバルセロナはレアルとよく似たチームだが、バルサは自分たちのスタイルを堅持する。勝っても負けても自らのアイデンティティとともにあるわけだが、レアルは勝利こそアイデンティティなので、いざとなれば戦い方などいくらでも妥協する。とにかく勝つ。できれば華麗に、できなければそれなりに。

レアルに翻弄されたロペテギ

 前人未踏のCL3連覇を成し遂げた後、ジダン監督が唐突に辞任した。この人はたいてい唐突である。

 カスティージャの監督からレアルに抜擢されたときの期待値は高くなかった。ネームバリューは最高だったが、監督としての実績がなさすぎた。だが、辞めたときはCL3連覇監督として、これ以上ないほどの実績を築いた。惜しまれながら去るとしたら、これ以上のタイミングはない。ジダンが辞任した理由は謎だが、あれ以上続けても評価を落とす可能性はあっただろう。

 レアルの首脳部もまさかジダンが辞めるとは思っていなかったようだ。慌てて何人かの候補にあたってはふられ、スペイン代表監督のフレン・ロペテギに接触したのはいいが、早々に契約に合意したと発表してしまった。

 激怒したスペイン協会によって、ロペテギはロシアワールドカップ開幕直前で代表監督を解任されてしまう。協会はロペテギに2020年まで指揮を執らせることですでに合意していた。レアルの監督就任はそれを反故にすることを意味する。また、代表チーム内の選手たちとの関係も難しくなりかねない。

 ワールドカップ直前の大事な時期での裏切りに、協会が怒ったのは当然ではあるが、レアルが仕組んだという見方もできる。時期も弁えずにロペテギとの契約合意を発表したのは悪意があるとしか思えない。あるいはスペイン代表など知ったことではないという、とてつもない傲慢さだ。

 ロシアのキャンプから飛行機で5時間、サンチャゴ・ベルナベウに到着したロペテギは「自分がどこにいるのかよくわからなかった」と述懐している。

 U-19、U-21スペイン代表を率いてヨーロッパチャンピオン、FCポルトを経てスペイン代表監督に就任したロペテギは前途洋々にみえた。FCポルト時代はCL(14/15)準々決勝でジョゼップ・グアルディオラ監督の率いるバイエルン・ミュンヘンにホームの第1戦で3-1と快勝している。破竹の勢いにあったバイエルンを完全に手筋にはめての勝利だった。

 アウェイの第2戦は1-6で砕け散ったが、雰囲気に呑まれてしまった前半はともかく、後半にはちゃんと修正できていた(もちろん手遅れだったが)。戦術家としてのロペテギ監督は極めて有能だった。

 しかし、ロペテギはたった2カ月で成績不振のためにレアルの監督を解任されてしまった。現在はセビージャの監督として再起しているが、レアルに振り回された犠牲者だったかもしれない。

正解のないまま勝つ

 サンチャゴ・ソラーリが暫定的に監督と務めた後、1シーズンも経たずにジダンが呼び戻されている。波乱の18/19シーズンは最終的にリーグ3位に終わった。

 そして今季、ロナウドがユヴェントスへ移籍してから空いていた穴を埋める大物として、チェルシーからエデン・アザールが加入。フランクフルトのゴールゲッター、ルカ・ヨビッチも補強した。しかし期待の新戦力はともに負傷で出遅れ、シーズン序盤のレアルは精彩を欠いていた。それでも13試合を消化して首位バルセロナと勝点で並んでいる。バルセロナとアトレティコ・マドリーもそれぞれ課題を抱えていた。

 ずっとロナウドの影だったカリム・ベンゼマの活躍がレアルを牽引している。アザールとヨビッチも組み入れてどうバランスをとるのか、カゼミーロのバックアップがいない問題をどうするのか、相変わらず課題は山積していてジダン監督解任の噂も絶えない。ただ、レアル・マドリーというクラブはずっとそうなのだ。

 背後には政治があり、野心が渦巻き、足を引っ張ろうとする手があちこちから伸びてくる。世界中から集められた才能がずらり並び、勝利のために結集と分裂を繰り返す。レアルは戦術的に最先端であったことはなく、完全であったこともない。常に不完全なまま、互いのエゴをぶつけ合い、ときに協調し、それで最も多くのタイトルを獲ってきた。これからもそうだと思う。

 フットボールに正解はないと言われる。レアル・マドリーにも正解はない。正解のないまま勝ち続けるのが、このメガクラブのやり方であり、フットボール的でもあるのかもしれない。

(文:西部謙司)

【了】