「(世間を)見返してやろうじゃないですけど…」

 2010年の南アフリカ大会から2018年のロシア大会までの3大会、ワールドカップの全試合でゴールマウスを守った川島永嗣選手がW杯ロシア大会直後に語ったインタビューを『新・GK論 10人の証言から読み解く日本型守護神の未来』(田邊雅之著)から、一部抜粋し全4回で公開する。今回は第1回。(取材・文:田邊雅之)

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──まずW杯ロシア大会の感想から、聞かせていただけますか。

「大会前にいろいろなことがあったので、結果的に良い形で終われたのは、日本サッカー全体にとってすごく良かったと思います。でも、それはあくまでもチームが一丸となって得た結果だし、簡単な作業ではなかったですね」

──実際、西野朗監督になってからは、チームのプレースタイルがかなり変わりました。攻撃に関しては、もう少しボールをキープしていく、あるいはフレキシブルに対応していこうと、選手と監督が議論をしたことが奏功したと報じられています。守備に関してはどうでしょうか? ラインの引き方や役割の受け渡しなどで、アプローチが変わった部分はあったのでしょうか?

「どういうふうにプレッシャーをかけていくかとか、できるだけ90分間引いて守るだけにならないようにするというのは、多く議論をしてきたと思います。そのあたりは実際の大会期間中も、だいぶ議論されたと思いますね」

──GKコーチも実際に変わったわけですが、その影響はありましたか?

「もともと代表の中にいるGKコーチでしたし、守り方に関しては、そこまで大きな変化はなかったと思います」

──どちらかと言うと、継続性のほうが高かった?

「とはいえ、チームというのは監督やスタッフが変わった場合、すぐにすべてが機能し始めるものではないですから。そういう意味では、よくこの短期間でいろいろなことがうまく回っていったと思います。

 ただしグループリーグを突破して、日本サッカーが成し遂げたことがないことを達成しようという決意は、僕たち選手の心の中では一度もぶれなかった。

 おそらく周囲の期待値と僕たち選手が目指していた目標には、どちらにしても差があったと思います。(世間を)見返してやろうじゃないですけど、様々なことが言われていたからこそ、結果を出すんだという気持ちも働いたのかなという感じがしますね」

「このポジションを選んだ人間の人生の一部」

 個々のレベルで見るならば、気持ちの強さを最も持ち続けた選手の一人が川島だったのは間違いない。大会期間中、川島はメディアの批判に幾度となくさらされている。しかも批判の多くは、客観性を欠くものだったと言わざるを得ない。

 だが川島は毅然として記者会見に登場し、ピッチにも立ち続けた。

──川島選手ご自身のプレーについては、どのように振り返られますか?

「基本的に新しい体制になってからは、自分のパフォーマンスが良かったとは思っていないんです。だから大会前の自分のパフォーマンスが、そういう見方を招いてしまった部分もあると思います。スイス戦やガーナ戦のパフォーマンスが普通だったら、あそこまで言われることもなかったでしょうし。

 GKというポジションは失点と常に隣り合わせだし、相手に点を取られれば、どのみちGKのせいだと言われてしまう。それは当たり前のことだし、このポジションを選んだ人間の人生の一部だと思っています。

 ただし相手に点を取られたからと言って、GKが必ずしもベストなプレーをしていなかったとは限らない。そこはまったく次元の違う話であって、プレーの良し悪しを判断するのは、あくまでも自分の内面的な基準になる。何が本当のミスで、何がミスではなかったかはきちんと把握できています」

──川島選手が定めている「基準」とは?

「自分の場合は試合の中で、最適なプレーを選択できたかどうかを指標にしています。さらに言えば、自分が単純にミスをしたのか、あるいは勇気を持ってトライした結果として、ミスが起きたのかも考えなければならない。

 人間である以上ミスは必ず起きるし、自分がトライした結果としてミスが起きたのであれば、そこは修正していく必要がある。ただし自分が最善を尽くし、ベストなプレーを選択した上でも、どうしても失点を避けられなかったのであれば、気持ちを切り替えていくしかない。GKには『ミス』という言葉だけで、簡単に片付けられない部分もあるんです」

(取材・文:田邊雅之)