新天地で瞬く間に不動の存在へ

 新年を迎え、2019/20シーズンは後半戦へと突入した。欧州各国でプレーする日本人選手たちはどのような活躍を見せたのか。今回は今季からマジョルカでプレーする久保建英の前半戦を振り返る。(文:編集部)

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 日本中を大いに沸かせたのは昨年6月14日のことだった。スペインの強豪であるレアル・マドリーが、日本代表MFの久保建英を獲得したことを正式に発表したのだ。この時、久保はコパ・アメリカ2019に日本代表として参戦中であったが、話題は完全にマドリー加入のニュースへと傾いていた。それほど、この移籍は大きな出来事であったと言える。

 ただ、いくらマドリーに移籍したとはいえ、いきなりトップチームに帯同し、活躍できるほどこの世界は甘くない。久保も他の若手選手と同じく、まずはレンタルという形でチームを移し、経験を積み上げることを選択した。そんな18歳が移籍先に選んだのは、今季より1部リーグに復帰したマジョルカだ。

 しかし、新たな戦力として期待されていた久保であったが、新天地で開幕当初は思うように出場時間を伸ばせなかった。第3節のバレンシア戦から第5節のヘタフェ戦までベンチスタート。第6節と第7節ではフル出場を果たしたものの、第8節のエスパニョール戦で再びベンチスタートを余儀なくされると、以降もスタメンの機会は与えられない。第11節のオサスナ戦では、出場機会すら訪れなかったのだ。

 久保はマジョルカ加入後も日本代表招集を受けており、チームメイトとの連係を深める時間は確かに多くなかった。チームを率いるビセンテ・モレノ監督も、代表帰りの選手を国際Aマッチウィーク明けのリーグ戦で起用することには慎重な姿勢を見せており、その影響でレフティーの出場機会が限られたという点はある。とはいえ、久保にとって新天地での船出が想像以上に厳しいものであったことは確か。目に見える結果も出ず、辛口な評価を受けることもあった。

 それでも、久保は腐らなかった。第12節のバジャドリー戦で先発に復帰すると、翌第13節のビジャレアル戦では待望のリーグ初ゴールも挙げている。以降、指揮官の信頼をガッチリ掴んだ背番号26は、1月17日時点でリーグ戦8試合連続スタメン入り中。チームは降格圏に沈んでいるが、久保は間違いなく攻撃の中心的存在になっている。

 その活躍もあり、現地紙からは毎試合高評価を受けるようにもなった。第16節のバルセロナ戦では、カンプ・ノウからブーイングも浴びせられており、試合の中では久保に対し複数人で囲んでくるチームもある。他のクラブも、徐々に背番号26を危険人物として認知するようになってきたのだ。

久保は間違いなく中心人物。しかし…

 マジョルカの基本システムは4-2-3-1である。久保はそのフォーメーションにおいて右サイドハーフを務めることが、大半を占めている。ゲームの流れの中では4-4-2になることもあるのだが、久保が右サイドハーフであることに大きな変化はない。

 その中で18歳のレフティーは、巧みなボールコントロールと相手の意表を突くアイデアで幾度となく違いを生んでいる。複数人に囲まれてもその局面を打開する力を持っており、狭いスペースにも躊躇することなく侵入することができる。第16節のバルセロナ戦ではFWリオネル・メッシに対し股抜きを披露するなど、大物相手にも堂々とした姿勢を保つ。技術面は、マジョルカの中で飛び抜けて高いと言えるだろう。

 しかし、久保にとって最も欠けているのが味方のサポートだ。マジョルカの選手は一人ひとりのプレースピードがそこまで高いと言えず、試合の中での判断力等、少し曖昧な部分が多く見られる。

 ビルドアップの中心となるのはMFサルヴァ・セビージャであるが、同選手のパスがリズムを生んでいるかと言うとそうではない。また、ボールホルダーとそうではない選手の距離が大きく広がっており、スムーズにパスが通らないのだ。そもそも選手一人ひとりにボールを貰おうとする意志があまり感じられず、そのあたりの意識の低さはここまでの試合で何度か見られた。

 久保も周りの選手のこうしたプレーには手を焼いていると言える。たとえば右サイドでボールを持っても、味方のサポートが足りず1対1、あるいは1対2の状況をすぐに作られてしまう。オフ・ザ・ボール時に効果的な動きを見せても、そこにパスが通る確率は低い。マジョルカの選手のほとんどが、ボールを受けてからどこへ出すのかを考えるため、受け手側と出し手側のタイミングがズレてしまうのだ。

 また、チーム全体としてスペースを生かせることがあまり多くはない。久保も足元でボールを受けることがほとんどであり、だからこそ1対1の状況を多く作り出されてしまうというポイントはある。そこを背番号26が剥がしても、その後が続かない。この繰り返しというのが、現在のマジョルカにある問題点だ。他のクラブからすると、久保一人さえ潰しておけば大丈夫な現状。これほど守備がしやすい相手も、なかなかいないだろう。

 久保は個人として大いに奮闘している。しかし、ゴール数やアシスト数が伸びないのは、サイドに張った状態でのプレーを余儀なくされ、ゴールに近いエリアでアクションを起こすことがままならないからだ。すべてが周りの選手の責任ということではないが、他の選手の意識等がもう少し高ければ、より久保が輝くのは間違いない。

 攻撃の中心は久保なのだが、中心を生かせない、あるいは中心人物にほとんどの部分を任せてしまっているのが、現在のマジョルカである。今後もこのような状態が続くならば、1年での降格を免れないだろう。

勝負は後半戦

 久保の前半戦を総括すると、個人でのパフォーマンスは光ったが、このままいくと少し不安だということだろうか。第7節のアラベス戦ではチーム最低のタッチ数、第17節のセルタ戦ではわずか22回のタッチ数に終わるなど、選手にとって辛い試合も多かった。18歳にとっては今後、目に見える数字が重要となるが、現状ではなかなかそこを伸ばせていけない雰囲気が漂っている。

 データサイト『Sofa Score』によると、久保はここまで1試合の平均シュート数0.8本、同タッチ数33.4回、同パス成功率68%と厳しい数値が残っている。このままではやはり、ゴールやアシストという数字を増やしていくことは難しいと言わざるを得ないだろう。個人としてはもちろん、チームとしての意識も大きく変えていかなければならない。後半戦、久保に課せられた宿題は非常に難易度が高いだろう。

 また、久保という男の存在は、マジョルカでのパフォーマンスを受けスペイン中に知れ渡っていると言える。ただそれは、プリメーラ・ディビシオン所属の他の19クラブにも同じことが言えそうだ。たとえば第17節のセルタ戦、相手は久保に徹底マークを付け対応してきた。その試合で久保は、タッチ数わずか22回に終わったのだ。後半戦はより、相手がそのあたりの強度を高めてきてもおかしくはない。そうなると、これまでの試合とは比べものにならないほど、日本人MFが苦戦を強いられることもあり得るはずだ。やはり勝負はここからの約半年間であると言えるだろう。

 ポジティブな面を挙げるとすれば、右サイドバックを務めるDFフラン・ガメスとの連係が深まってきたところだ。第19節のグラナダ戦では、久保がボールを持ったタイミングで、ガメスが鋭くオーバーラップを仕掛けDFを引き付けるなど、サポート役としてはかなり効果的な動きを見せていた。このあたりは今後、マジョルカが伸ばしていきたいところ。ここを一つのストロングポイントとすれば、チーム全体の流れもうまく変わるかもしれない。

 リーグ戦19試合で1得点1アシスト。久保にとっては満足いく数字ではないだろう。東京五輪でも注目を浴びるであろう日本の至宝が、後半戦はマジョルカでどんなプレーを見せるのか。注目だ。

(文:編集部)