タイトルを獲得も…

 サー・アレックス・ファーガソン退任後、迷走を続けているマンチェスター・ユナイテッド。現在はクラブOBでもあるオーレ・グンナー・スールシャール監督の下で再建を図っているが、そこに至るまでも数多くの試練があった。今回フットボールチャンネルでは、ユナイテッドの過去5年間の主要メンバーや基本システムをシーズンごとに紹介する。

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【2015/16シーズン成績】
プレミアリーグ:5位(19勝9分10敗)
チャンピオンズリーグ:グループリーグ敗退
ヨーロッパリーグ:ベスト16
FAカップ:優勝
EFLカップ:4回戦敗退

 ルイス・ファン・ハール体制2年目を迎えたマンチェスター・ユナイテッドは、オフ期間中に積極補強を敢行。指揮官とオランダ代表でも共にプレーするFWメンフィス・デパイやモナコで活躍していたFWアントニー・マルシャル、MFバスティアン・シュバインシュタイガーやMFモルガン・シュナイデルランなど多くの実力者を加えている。中でも、伝統ある「7番」を受け継いだデパイに対する期待は大きかった。

 プレミアリーグ第7節終了時点で首位に立つなど、ユナイテッドの序盤戦は決して悪くなかった。第8節のアーセナル戦では0-3の完敗を喫したものの、その後もチームはうまく立て直し安定して勝ち点を奪取。第13節のワトフォード戦までわずか2敗という成績だった。

 しかし、悪夢はここから始まる。第14節のレスター戦で引き分けに終わると、リーグ戦ではそこから6試合勝ちなし。チャンピオンズリーグ(CL)でもまさかのグループリーグ敗退に終わるなど、冬の時期にはチームとしての脆さが浮き彫りとなったのだ。

 “各駅停車”のパス回しにはサポーターもストレスを抱えていたようで、次第にスタジアムには「アタック、アタック」という声も鳴り響くようになった。だが、ファン・ハール監督に率いられたチームはその後も改善を果たすことなく、CL出場圏外の5位でリーグ戦をフィニッシュ。全38試合で49得点という数字は、クラブ史上ワースト記録となった。

 新加入選手もことごとく期待を裏切った。合格点はマルシャル一人のみと言ってもいいだろう。大きな期待を受けたデパイは「背番号7」に相応しくないパフォーマンスに終始し、批判の的に。シュバインシュタイガーもインパクトに欠け、シュナイデルランも絶対的な存在とまでは言い切れない。唯一の収穫はFWマーカス・ラッシュフォードの台頭だろうか。

 結局、ファン・ハール監督はFAカップ制覇こそ果たしたものの、そのタイトルのみで信頼を回復できるわけがなく、解任。指揮官は自身の去就を後任のジョゼ・モウリーニョからの電話で初めて知ったと言う。

▽GK
ダビド・デ・ヘア

▽DF
クリス・スモーリング
ダレイ・ブリント
アントニオ・バレンシア
マルコス・ロホ

▽MF
マイケル・キャリック
マルアン・フェライニ
ジェシー・リンガード
アントニー・マルシャル
ウェイン・ルーニー

▽FW
マーカス・ラッシュフォード

スペシャルワンの就任

【2016/17シーズン成績】
プレミアリーグ:6位(18勝15分5敗)
ヨーロッパリーグ:優勝
FAカップ:ベスト8
EFLカップ:優勝

 名将サー・アレックス・ファーガソン監督退任後、デイビッド・モイーズ、ルイス・ファン・ハールと繋がったバトンは、ジョゼ・モウリーニョ監督へと引き継がれた。過去に3度のプレミアリーグ制覇を経験している名将の新指揮官就任で、サポーターの期待も一気に膨れ上がった。

 この年も、マンチェスター・ユナイテッドは夏の移籍市場で積極補強を敢行。パリ・サンジェルマンからFWズラタン・イブラヒモビッチ、ユベントスからMFポール・ポグバ、ボルシア・ドルトムントからMFヘンリク・ムヒタリアンを加えるなど、戦力アップに余念がなかった。『transfermarkt』によると、この年の総支出額は1億8500万ユーロ(約218億円)にまで上っているという。

 モウリーニョ監督は、ファン・ハール監督の下で獲得されたMFモルガン・シュナイデルラン、FWメンフィス・デパイを事実上の“戦力外”とするなど、すぐにチームへ自身の血を注入。就任初年度からヨーロッパリーグ(EL)、EFLカップ制覇を果たすなど、チームに2冠をもたらした。

 ただ、リーグ戦ではチャンピオンズリーグ(CL)出場圏外となる6位フィニッシュ。クラブレコードとなる25試合連続無敗、リーグ2番目に少ない失点数を誇ったが、全38試合中15試合で引き分けに終わっているなど勝ち切れない試合が多く、勝ち点を取り損ねていた。怪我人の多さも影響しているのは確かだが、シーズン通して試行錯誤を繰り返している印象は強く、攻撃スタイルの確立がままならなかったのはこの年の反省点と言えた。

 ただ、ELを制したことで2017/18シーズンのCL出場権を確保。最低限のノルマは無事に達成していた。もちろん、フロントのモウリーニョ監督に対する信頼も揺るがず、2017/18シーズンもスペシャルワンがユナイテッドを率いることになる。

▽GK
ダビド・デ・ヘア

▽DF
エリック・バイリー
マルコス・ロホ
アントニオ・バレンシア
マッテオ・ダルミアン

▽MF
アンデル・エレーラ
ポール・ポグバ
ジェシー・リンガード
マーカス・ラッシュフォード
ヘンリク・ムヒタリアン

▽FW
ズラタン・イブラヒモビッチ

プレミアリーグ王者まであと一歩も…

【2017/18シーズン成績】
プレミアリーグ:2位(25勝6分7敗)
チャンピオンズリーグ:ベスト16
FAカップ:準優勝
カラバオカップ:ベスト8

 ジョゼ・モウリーニョ体制2年目。マンチェスター・ユナイテッドに期待されたのはもちろんタイトル獲得だ。

 その期待に応えるかのように、ユナイテッドはリーグ戦でスタートダッシュに成功する。前半戦終了時点で14勝3分2敗という好成績を収めており、歴代優勝クラブに匹敵するほどの勝ち点を稼いでいたのだ。夏に獲得したFWロメル・ルカクやMFネマニャ・マティッチといった新戦力も見事にマッチしており、充実のシーズンを過ごしていた。

 冬にはその勢いをさらに加速させようと、MFヘンリク・ムヒタリアンとのトレードでFWアレクシス・サンチェスを確保。その後もユナイテッドはモウリーニョ流の堅守、先手必勝と言うべき逃げ切りスタイルを確立し、ポイントを順調に積み重ねた。最終的にリーグ戦で稼いだ勝ち点は「81」。本来なら優勝してもおかしくはない数字だ。

 ただ、この年は同じ街のライバルであるマンチェスター・シティが“異常”だった。彼らはリーグ戦全38試合で勝ち点100を稼ぐなど無双状態に入っており、ユナイテッドは最後の最後までこの差を埋めることができなかった。赤い悪魔は結果的にシティに19ポイントもの差をつけられ、リーグ戦で2位という成績に終わったのである。

 チャンピオンズリーグ(CL)ではラウンド16でセビージャに敗れ、FAカップもファイナルでチェルシーに0-1と惜敗。結局、ユナイテッドはこの年無冠に終わっている。MFポール・ポグバ、FWアントニー・マルシャルやFWマーカス・ラッシュフォードなどが不完全燃焼に終わるなど、後味の悪いシーズンとなってしまった。

▽GK
ダビド・デ・ヘア

▽DF
クリス・スモーリング
フィル・ジョーンズ
アントニオ・バレンシア
アシュリー・ヤング

▽MF
ネマニャ・マティッチ
ポール・ポグバ
ジェシー・リンガード
マーカス・ラッシュフォード
ファン・マタ

▽FW
ロメル・ルカク

3年目のジンクス

【2018/19シーズン成績】
プレミアリーグ:6位(19勝9分10敗)
チャンピオンズリーグ:ベスト8
FAカップ:ベスト8
カラバオカップ:3回戦敗退

 ジョゼ・モウリーニョ監督体制の「3年目」。不安を覚えたマンチェスター・ユナイテッドサポーターも多いのかもしれない。というのも、モウリーニョ監督には3年目に入ると解任されてしまうといった「ジンクス」が付きまとっていたからだ。

 そして、そのジンクスはまたも降りかかってしまう。開幕節のレスター戦こそ勝利したユナイテッドだが、第2節と第3節でいきなり連敗を喫すると、その後も苦戦続き。第7節終了時点で稼いだ勝ち点はわずか「10」に留まっていた。同7試合で勝ち点7しか挙げられなかった1989/90シーズン以来、実に29年ぶりとなる最悪のスタートを切ってしまった。

 カラバオカップでも3回戦でダービー・カウンティに敗戦。チャンピオンズリーグ(CL)でもグループリーグ敗退の危機に瀕するなど、結果が出ず。モウリーニョ監督の解任ムードは日に日に増していった。

 この年は目指すべきサッカーが見えなかった。守備意識を高め、1点を奪って逃げきるスタイルも確立できず、堅守速攻も威力を発揮しない。もっとも、格下相手との対戦時に苦戦を強いられることが多く、FWロメル・ルカクやFWアレクシス・サンチェスといった選手の不満も聞かれるようになった。サポーターの信頼も徐々に薄れていったのだ。

 そしてクラブは2018年12月18日、モウリーニョ監督の解任を発表。またも3年目のジンクスを打ち破ることができなかった。スペシャルワンですら、サー・アレックス・ファーガソン退任後に崩壊したユナイテッドを救うことはできなかった。

 後任にはクラブOBでもあるオーレ・グンナー・スールシャールが就任。するとチームはリーグ戦で12試合連続無敗、CLでもラウンド16でパリ・サンジェルマンに大逆転勝ちを収めるなど復活を遂げた。スールシャール監督に対する評価も、非常にポジティブなものばかりであった。

 しかし、そのムードも一変、CLラウンド16終了後からユナイテッドはまたも失速。リーグ戦では第30節からの8試合でわずか2勝しか挙げることができず、6位でフィニッシュ。ポジティブ評価から一転して、解任論まで浮上する結果となった。

▽GK
ダビド・デ・ヘア

▽DF
クリス・スモーリング
ヴィクトル・リンデロフ
アシュリー・ヤング
ルーク・ショー

▽MF
ネマニャ・マティッチ
アンデル・エレーラ
ポール・ポグバ

▽FW
ジェシー・リンガード
アントニー・マルシャル
マーカス・ラッシュフォード

新戦力が大当たり

【2019/20シーズン成績 ※3月16日現在】
プレミアリーグ:5位
ヨーロッパリーグ:ベスト16
FAカップ:ベスト8
カラバオカップ:準決勝敗退

 オーレ・グンナー・スールシャール監督体制2年目。オフ期間の時点でマンチェスター・ユナイテッドに対する期待感はあまり高くなかった。

 FWロメル・ルカクやFWアレクシス・サンチェス、MFアンデル・エレーラらを放出するも、夏の移籍市場で獲得した攻撃手はMFダニエル・ジェームズのみ。特にCFタイプの選手が明らかに足りておらず、このあたりは不安要素の一つであった。

 その不安は的中。第1節のチェルシー戦を4-0で制したことで期待感は一時膨れ上がったが、以降は8試合でわずか1勝しか挙げることができず、順位は一時14位にまで沈んでいる。FWマーカス・ラッシュフォードは好調を維持していたものの、MFポール・ポグバが負傷離脱を余儀なくされるなどチーム全体として機能しているポイントが少なく、スールシャール監督の解任ムードは高まるばかりであった。

 さらに、その嫌な雰囲気を加速させるかのようにラッシュフォードが年明けに負傷。冬の移籍市場ではFWアーリング・ブラウト・ハーランド、FWエディンソン・カバーニ、FWマリオ・マンジュキッチを狙うなどしたが、獲得には至らず。結局はFWオディオン・イガロを獲得する形で人材を確保したが、「なぜイガロ?」といった声も多かったのは事実だ。

 ただ、チームは回復傾向にある。冬に加わったMFブルーノ・フェルナンデスの加入で攻撃のバリエーションが増え、格下相手に苦戦することも少なくなってきた。第25節から第29節までの5試合で失点数わずか「1」と守備も安定感を誇るようになっており、チームは強さを取り戻しつつある。

 DFハリー・マグワイア、DFアーロン・ワン=ビサカ、イガロ、B・フェルナンデス、D・ジェームズらはしっかり個性を出しており、チームにとってプラスの存在に。新戦力のフィットが目立つ結果となっている。

▽GK
ダビド・デ・ヘア

▽DF
ハリー・マグワイア
ヴィクトル・リンデロフ
アーロン・ワン=ビサカ
ルーク・ショー

▽MF
ネマニャ・マティッチ
スコット・マクトミネイ
フレッジ
ブルーノ・フェルナンデス

▽FW
ダニエル・ジェームズ
アントニー・マルシャル