ハマったレガネスの狙い

 ラ・リーガ第29節、バルセロナ対レガネスが現地時間16日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。相手の固い守備に苦戦したバルセロナであるが、アンス・ファティとリオネル・メッシの活躍がありリーグ戦はこれで3連勝。勢いは十分だ。ただ、課題と今後への不安が明確となったのも確かである。(文:小澤祐作)

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 4-0と大勝を収めたマジョルカ戦から中2日、バルセロナは舞台をカンプ・ノウに移し、残留争いに苦しむレガネスと対戦。2位レアル・マドリーにプレッシャーを与えるべく、前節から先発5人を入れ替えて試合に挑んだ。

 元日本代表指揮官のハビエル・アギーレ率いる対戦相手のレガネスは、第28節終了時点で総得点数がわずか「22」と、得点力不足が深刻な問題。とくにアウェイにはめっぽう弱く、今季リーグ戦では敵地でたったの2回しか複数得点を挙げることができていない。そのためバルセロナからしてみれば、先制点を取ることができれば試合を楽に進められることは明らかだった。

 しかし、そんなレガネスを前にホームチームは大苦戦。シュートを放つどころか、敵陣深い位置でチャンスを作り出すことすら難しい状況に追い込まれた。

 レガネスは守備時に5-3-1-1のような布陣でバルセロナに対応している。2トップに入ったFWハビエル・エラソとFWミゲル・アンヘル・ゲレーロのどちから一方が、バルセロナのアンカーを務めたMFセルヒオ・ブスケッツに張り付く形で相手のビルドアップを阻止。最終ラインでの横パスに関してはある程度の自由を与え、ミドルゾーンにボールが入ってきた瞬間にプレスの強度を高めた。

 ラインコントロールも見事だった。バルセロナの選手がバックパスを出すと、レガネスの5バックは全員がしっかりと位置を揃えてラインを押し上げる。ここに一切隙が無く、バルセロナも相手の背後を突くのは容易ではなかった。アウェイチームはボールを持たれたのではなく、持たせたと言えるような守備で首位チームを機能不全としたのである。

 そして、守備だけでなく攻撃でもいくつかのチャンスを作った。11分にはオフサイドトラップをかいくぐったエラソが起点となり、最後はゲレーロがシュート。DFクレマン・ラングレに当たってゴールとはならなかったが、超が付くほどのビッグチャンスであった。

 さらに、その2分後には左サイドのMFレシオがクロスを上げると、DFウナイ・ブスティンサがフリック。最後は再びゲレーロがシュートを放った。これは惜しくもポストに嫌われてしまったが、全体のラインが高いバルセロナに対しシンプルに裏を狙ったカウンターは大きな効果を発揮していたと言えるだろう。

 ただ、この2本の決定機を逸したことはレガネスにとって大きなダメージであった。フットボールにタラレバは禁物だが、ここで先制点が生まれていれば、試合の展開は大きく変わっていただろう。今季の課題となっている得点力不足が響いたと言わざるを得ない。

グリーズマン孤立。パスだけが増えるバルサ

 一方、バルセロナはボールこそ保持できるが、なかなか効果的な攻めを発揮できない歯がゆい時間が長く続いた。レガネスは5バックを敷いているため、サイドバックのDFセルジ・ロベルト、DFジュニオール・フィルポも必然的に高い位置を取ることができたが、ラインコントロール等の連動性が見事なレガネスの守備を前に、存在感はそこまで大きくはなかった。

 攻撃の中心はやはりFWリオネル・メッシ。同選手が中盤の位置まで下りてくることで、ミドルゾーンで瞬間的に数的優位な状況を作り出すことはできていた。メッシはボールを受けた後、ドリブルで仕掛けたり縦パスを出したりとゴール方向への意識を持ってプレー。背番号10にパスが入ると、やはり攻撃がワンテンポ上がった印象があった。

 ただ、レガネスの中盤と最終ラインの距離感は非常に良く、縦パスを入れてもすぐに挟まれて潰されてしまう場面が散見。1トップに入ったFWアントワーヌ・グリーズマンは完全に孤立し、MFアルトゥールもうまく攻撃には絡めない。横パスだけが増えるなど、チャンスらしいチャンスを多く生むことはできなかった。

 その中でも可能性を見出したのは29分の場面。左サイドからブスケッツにボールが入ると、同選手はダイレクトでメッシへ。その後アルトゥール→MFイバン・ラキティッチと繋がり、最後はグリーズマンのヘディングシュートが生まれた。

 ブスケッツからラキティッチにボールが渡るまではすべてダイレクト。背番号4もツータッチ目でクロスを上げるなど、テンポの良い攻撃であった。このワンタッチパスを織り交ぜた速い攻めこそが、レガネスの守備ブロックを破るには必要だったと言えるだろう。

 ただ、なかなかそう簡単にはいかなかった。FWアンス・ファティが先制ゴールを奪った後はレガネスも前に出てきたため、ゲーム序盤よりは相手を押し込むことはできていたが、大きく崩し切るには至らず。疲労の影響も多少はあったはずだが、攻撃面におけるダイナミックさは物足りなかった。

 試合後のデータを見てみても、バルセロナは支配率75%、パス本数865本を記録しているが、シュート数は10本とやや少なめ。対するレガネスは支配率25%、パス本数207本で6本のシュートを記録している。やはり引いた相手に対しての戦い方は、キケ・セティエン監督率いるバルセロナの課題と言えるかもしれない。

個で打開。ファティとメッシの脅威

 しかし、終わってみれば試合は2-0でバルセロナの勝利。レガネスはよく耐えていたが、残念な結果となった。

 運命の分かれ道となったのは、やはり42分のA・ファティの先制ゴールだと言えるだろう。J・フィルポからのパスを冷静に右足で流し込んだ。レガネスの守備陣もボールに対し素早い寄せを見せていたが、それよりもコントロールからシュートに至るまでが非常に速かった。とても17歳とは思えぬ技術力だ。

 A・ファティはその他の場面でも持ち味を発揮。相手の足が出てくるタイミングをしっかり見極め、ボールを少し浮かせて突破するなど、左サイドで幾度となく攻撃のエンジンをかけた。データサイト『Who Scored』によると、この日の17歳はドリブル突破数4回を記録。これはメッシに並んで両チームトップとなる成績だ。やはりこの男、正真正銘の怪物である。

 怪物と言えばこの日のメッシもそうだった。背番号10はチーム内3番目に多い116回のタッチ数を記録した事実が示す通り、何度も攻撃の起点となり、積極的に縦パスを入れてはドリブルを仕掛けてはと、守備を固めるレガネスを前に大きく躍動。ボールを失った後の切り替えも速く、守備面で奮闘する場面も何度か見受けられた。

 圧巻だったのは66分の場面。センターサークルでボールを受けたメッシはドリブルで一気に3人を剥がし、最後は自らPKを獲得。これを冷静に沈めるなど、崩しからフィニッシュを一人でやってのけた。

 ドリブルはまさに驚異的だった。3人を振り切っただけでももちろんすごいが、とくに目を見張ったのは、ドリブル中にファウルを取られてもおかしくない激しいチャージを繰り返し受けていたにも関わらず、止まらず前進し続けたこと。マークに付いていたブスティンサ、MFルベン・ペレスらはファウル覚悟で守備していたはずだが、メッシには無効果であった。個人でこれだけ打開できる男の存在は、守備を頑張ったレガネスにとってはたまったものではないだろう。

 A・ファティ、メッシの強烈な「個」で勝利を手繰り寄せたといっても過言ではないバルセロナ。これでリーグ戦は3連勝で、勢いは十分と言えるだろう。

 ただ、不安はある。過密日程による疲労の蓄積だ。とくに、メッシ。彼は再開後、2試合続けてフル出場を果たしている。さらに、次節の相手は3位セビージャ。よりタフな試合になることは確かで、背番号10にかかる負担も大きくなるはずだ。

 疲労が蓄積すると、当然ながら怪我を負いやすくなる。バルセロナにとってメッシを欠くということは、言わずもがな大ダメージだ。リーグ制覇に向けて背番号10の存在はまだまだ必要不可欠なため、良きタイミングでエースを休ませたいところ。今後はセティエン監督のマネジメントも重要になってくる。

(文:小澤祐作)