新指揮官と戦う今季は6連敗スタート

明治安田生命J1リーグ再開から2週間が経過し、各クラブは4試合を消化した。今季からピーター・クラモフスキー監督が指揮を執る清水エスパルスは、中断前も含めて公式戦6戦全敗と波に乗れていない。チームがチャレンジする新たなサッカーはどのようなものなのか。連敗の中で見えてきた実像と課題を掘り下げる。(取材・文:河治良幸)
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 J1再開から4連敗、中断前の開幕戦から5連敗、ルヴァンカップ開幕節の川崎フロンターレ戦を含めれば公式戦で6連敗と長いトンネルの最中にある清水エスパルス。同じく連敗が続いていた鹿島アントラーズも前節でリーグ王者の横浜F・マリノスに4-2で勝利し、ここまで勝ち点を1つも挙げられていないのは清水だけとなった。

 結論から言うと筆者は現状をあまり悲観していない。チーム内からネガティブな声も外に聞こえてこないのは試合を重ねる中で、選手たちも前向きにトライ&エラーを継続し、新しいスタイルにチャレンジしている自負と手応えがあるからだろう。

 そもそも清水の話になると良く出るのが「マリノスのコピー」といったワードだ。もちろん今シーズンからチームを率いるピーター・クラモフスキー監督はマリノスのヘッドコーチとしてアンジェ・ポステコグルー監督を支えた功労者の一人だ。

 ポステコグルー監督が繰り返し口にする”アタッキングフットボール”と言う言葉をクラモフスキー監督も使う。基本哲学は間違いなく共通するが、ここまでのアプローチはマリノスとも異なるし、そもそも選手の特徴、メンバー構成が異なるため、ピッチに起きる現象に違いが出てくるのも当然ではある。

J1の中で目を引くのは…

 清水も全体の立ち位置を共有しながら、いかにスペースを作り、見つけて突いていくかが基本スタイルのベクトルになっている。そのためのプレーモデルもディフェンスラインを高く押し上げながら、左右に攻撃の幅を取り、サイドバックがビルドアップから積極的に関わっていくところはマリノスと共通する。

 ディフェンスにおいてはハイプレスをかなりの時間帯で徹底する。それをかいくぐられたり、2次攻撃やリスタートから押し込まれてゴール前で守るシチュエーションはもちろんあるが、意図的にブロックを組むといったことはあまりなく、可能な限り高い位置でボールを奪う意識はJ1の中でもかなり目を引くレベルだ。

 その一方で攻撃面は自分たちからボールの主導権を握り、アクションをかけていく基本的な志向はあるものの、高い位置でボールを奪って、そのまま攻め切れるシチュエーションでは最短距離でゴールを狙う意識はかなり強い。ただし2、3人による“個の力”で完結するのではなく、流れに乗じて後ろの選手たちも積極的に前線に関わっていく。

 もちろん闇雲に攻撃人数をかけている訳ではなく、センターフォワードが左右のウィングより少し引いたポジションを取ったら、2列目の選手が追い越して入って行くといった空間のコンビネーションは共有されており、それがうまくハマったときは相手にとって非常に危険なシーンが生まれている。

マリノスとの違い

 ただし、流れを連続させ過ぎてしまう傾向は見て取れる。ある種、流れが良くなると必要以上に調子に乗ってしまう。そうなると攻め込んでいてもアップダウンが激しくなるし、ミスも起きてくる。そこから相手に攻められると中盤やサイドバックの選手も十分な態勢を整えられず、センターバックが当たるしかなくなる。清水にとって必ずしも”苦しい時間帯”ではないシチュエーションでの失点が多いのだ。

 今シーズンの清水と言うとポゼッションのイメージが強いかもしれないが、再開初戦から名古屋グランパス戦のボール保持率が54%、セレッソ大阪戦が45%、ガンバ大阪戦が59%、ヴィッセル神戸戦が48%となっており、対戦相手とイーブンに近い数字が続いている。これは相手にボールを握られたり、ボールを持ちたくても持てないと言うよりは、攻守の切り替わりで攻め切れる時は攻め切るという基本志向が強く現れているデータだ。

 全体的な攻撃の幅の取り方やインサイドに関わるサイドバックのポジショニング、ハイラインといったところにマリノスとの共通点は多く見られるものの、ポステコグルー監督の1年目ほど形から入っていないことは見て取れるし、勝つために必要になってくるエッセンスは現時点でも大なり小なり入れているようだ。

 つまり現時点においても結果より形にこだわるような際立ったサッカーをしている訳ではない。1つ1つの試合は間違いなく勝ちに行っているが、ポゼッションであろうとカウンターであろうと、その中間的なシチュエーションであろうと、自分たちから前に人数をかけて崩しに行くところで、自分たちがかけるリスクにリターンが追い付いていないのが現状だ。

今のエスパルスに必要なのは…

 その状況を一瞬でガラリと変えるような魔法は存在しないだろう。自分たちがトライしているサッカーにクオリティと精度が伴ってくることが一番だが、ここから数試合の中で勝ち点を拾って行くにはもう少し後ろでボールを落ち着かせる時間帯を作ることも必要かもしれない。イメージからは逆説的になるかもしれないが、結果としてボール保持率が60%前後に上がるかもしれない。夏場ということを考えても、そうした時間帯を入れていくことも大事かもしれない。

 ただし、降格が無い今シーズンのレギュレーションにおいて、あまり順位や連敗といったことに話題を向けすぎる必要はないだろう。1つ1つの試合は勝利を目指す中でクラモフスキー監督の目指すサッカーをやり抜き、その中で何が足りなかったのか、どういう問題が出たのかを検証してアップデートする。その積み重ねこそが現在は大事だし、その中で選手の競争があり、進化のために必要な補強なども見えてくるはず。そこから”マリノスのコピー”ではないエスパルスカラーも鮮明になって行くはずだ。

(取材・文:河治良幸)

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