岡崎慎司は得点こそ奪えなかったが…

ラ・リーガ開幕戦、ビジャレアル対ウエスカが現地時間13日に行われ、1-1の引き分けに終わった。日本人選手がピッチで共演したのは、ラ・リーガでは初めて。78分から途中出場した久保建英と、1トップとしてフル出場した岡崎慎司はそれぞれどのようなパフォーマンスを見せたのか。両チームにおける2人の立場が見えたゲームになった。(文:加藤健一)
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 残留が目標となるウエスカにとって、勝ち点1という開幕戦の結果は理想に近いものだった。PKを献上して失点したのは痛恨だったが、献身的なディフェンスでスペースを埋め、少ないカウンターからチャンスを狙う展開だった。

 ボールを保持しながら攻めあぐねるビジャレアルに対し、ウエスカはGKからパスをつないでゴールが生まれている。岡崎慎司が中盤に降りて楔のパスを引き出したところからチャンスが生まれた。フアン・カルロスのスルーパスに攻め上がった右サイドバックのパブロ・マフェオが、最後は左足でゴールを決めた。42分、ウエスカにとってこの試合3本目のシュートが、貴重な先制点へとつながっている。

 得点こそ奪えなかったものの、岡崎はビジャレアルにとって危険なFWになっていた。ウナイ・エメリ監督も試合前の記者会見で評価していたように、クロスに対してマークを外してフリーになる技術は健在。35分や54分のヘディングは惜しくもゴールの枠内に飛ばすことはできなかったが、攻守両面でチームに貢献していた。

 ビジャレアルのパコ・アルカセルにも言えることだが、ストライカーにはしばしば、「彼らの日」ではないことがある。パコ・アルカセルも悪くないパフォーマンスだったが、17分のシーンではわずかにオフサイドとなり、57分にフリーで放った左足のシュートは、クロスバーをかすめてゴールラインを割っている。ストライカーは失敗の数よりも成功の数が評価される。岡崎もこの試合のパフォーマンスを継続していけば、1部の舞台でも結果を残すことができるだろう。

 就任2年目のミチェル監督に率いられるウエスカは、主力選手を引き抜かれることなくラ・リーガに挑戦している。ゴールを奪ったパブロ・マフェオや、アンドレス・フェルナンデスはさっそく先発メンバーに名を連ね、貴重な勝ち点1奪取に貢献。ウエスカのサッカーはチームとしての方向性と継続性が表れていた。

ビジャレアルの停滞と修正

 一方で、ビジャレアルにとっては歯がゆい試合展開となった。エメリ新監督が推し進めている縦への指向が強いボールポゼッションはこの試合でも強く表れていたが、中盤でインターセプトされる場面も多かった。特に前半はなかなかシュートチャンスに持ち込むことができなかった。

 プレシーズンでも多く見られた形だが、パコ・アルカセルがDFラインと駆け引きをし、ジェラール・モレノがライン間でボールを引き出した。左サイドハーフのモイ・ゴメスはインサイドに絞って左サイドバックのアルフォンソ・ペドラザが攻め上がるスペースを作る。ここまでは狙い通りだったが、問題は右サイドに起きていた。

 サイドハーフのサムエル・チュクウェゼとサイドバックのルベン・ペーニャはともにタッチライン際まで開くシーンが多く、ボールが渡っても連動が見られなかった。それを見たビジャレアルは後半、チュクウェゼをモイ・ゴメスと同じようにインサイドに絞らせた。ハーフタイムに施した修正によってビジャレアルの攻撃は改善が見られている。

 後半に入っていくつかゴールに迫ったビジャレアルは、ラッキーな形から同点に追いついた。FKから入れられたクロスボールを頭で処理しようとしたマフェウの腕に当たってしまった。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の助言と主審のOFR(オン・フィールド・レビュー)を経てビジャレアルにPKが与えられ、ジェラールがこれを決めた。

久保建英に求められるのは…

 逆転を狙うビジャレアルは右サイドバックにマリオ・ガスパールを入れ、パコ・アルカセルを下げて久保を投入。負傷したフランシス・コクランに変えてビセンテ・イボーラをピッチに入れている。

 4人のアタッカーが近い距離で崩すイメージは共有できていたように見えた。しかし、久保とビジャレアルにとってもまた、「彼らの日」ではなかった。久保はトップ下の位置でボールを引き出したが、ウエスカの守備は隙が無く、最後までゴールを割ることができなかった。

 チームにとって理想的な結果とはならなかったが、短いプレシーズンを通して攻撃の形はおぼろげながら見えてきているはずだ。昨季からの積み重ねがあるウエスカと、大きく様変わりを見せたビジャレアルでは完成度に大きな違いがあったが、ビジャレアルも長いシーズンを通して継続ができれば、一定の成果を残せるのではないかという期待が持てた開幕戦だった。

 プレシーズンで久保は2列目の3つのポジションで起用されている。うまくいった試合とそうではない試合があったが、この試合のようにインサイドで味方と近い距離を保ってプレーすることで、お互いの良さを活かすことができる。マジョルカ時代は右サイドに大きく開いて攻撃の起点となることも多かったが、ビジャレアルには優れたボランチとサイドアタッカーがいる。そのため、指揮官も久保に対してはよりゴールに近い位置でのプレーを要求している。

 ビジャレアルは前半にシュートを4本しか放てなかったが、久保がプレーした約15分間で5本のシュートを放っている。最後までゴールが遠かったものの、久保が入ったことでチャンスメイクの部分で大きな改善が見られたと評価することはできるだろう。開幕戦でそのポテンシャルをしっかりと見せつけている。

 次節でビジャレアルは乾貴士が所属するエイバルと対戦する。大きな注目を集める日本人対決で結果を残すことができれば、久保の立場も変わっていくだろう。

(文:加藤健一)

【了】