イタリア代表の未来を担うMF

 ズラタン・イブラヒモビッチ加入により生まれ変わったミランは、長年辿り着いていないチャンピオンズリーグの舞台を目指す。その目標に向け、クラブはサンドロ・トナーリやブラヒム・ディアスを補強。そして下部組織からも将来有望な若手が台頭するなど、期待感の持てるチームが出来上がりつつある。今回はそんなミランに加わった新戦力と、ブレイクが期待される若手選手5人を紹介する。

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MF:サンドロ・トナーリ(イタリア代表/背番号8)
生年月日:2000年3月8日(20歳)
19/20リーグ戦成績:35試合出場/1得点7アシスト(ブレシア)

 ブレシアで頭角を現し、わずか19歳でイタリア代表デビューを飾ったサンドロ・トナーリは、今夏の移籍市場における人気銘柄の一人だった。実際、ユベントスやインテルといった国内クラブだけでなく、マンチェスター・ユナイテッドやパリ・サンジェルマンらも獲得に興味を示していたとされている。

 そんなトナーリが新天地に選んだのは、幼い頃からの「ファンだった」というミランだ。背番号は「8番」に決定したが、同番号をつける許可を過去に「8番」として活躍したジェンナーロ・ガットゥーゾ(現ナポリ指揮官)に電話で聞いた、というエピソードは日本でも少し話題となった。

 長い髪をなびかせるその見た目はアンドレア・ピルロそっくりだが、プレーも世界最高のレジスタに似ていると言える。長短問わず正確なパスと傑出した戦術眼を武器に攻撃のリズムを作り出すことが可能で、身長181cmの体躯を活かしたボールキープも抜群に上手い。また、セットプレーのキッカーとしても優秀だ。

 運動量もかなり豊富で、守備のタスクも献身的にこなす。単純なフィジカルコンタクトに強いことはもちろん、危険とみれば身体を投げ出す泥臭いプレーも躊躇することなくやってのける。自身のアイドルが「ガットゥーゾ」というのも頷けるようなプレースタイルの持ち主だ。

 現在、ミランのダブルボランチはイスマエル・ベナセルとフランク・ケシエが務めている。彼らは非常に好調なため、トナーリと言えどいきなりポジションを奪うのは容易ではない。ただ、そこへ割って入っていけるだけの力があることは確か。ミランでの成長を楽しみにしたい。

イタリアの地で覚醒を

FW:ブラヒム・ディアス(スペイン/背番号21)
生年月日:1999年8月3日(21歳)
19/20リーグ戦成績:6試合出場/0得点0アシスト(レアル・マドリード)

 マラガのカンテラでメキメキと成長を果たし、「マラガのメッシ」として国内の多数クラブから注目を浴びるようになった。そして2013年には、元マラガ指揮官のマヌエル・ペジェグリーニ監督率いるマンチェスター・シティへ移籍。16歳でトップチーム昇格を果たすなど、順調なキャリアを歩んでるかに思えた。

 しかし、その後はシティの分厚い選手層の壁に阻まれ出場機会は増えず。2019年1月には出番を求めレアル・マドリードに加入するものの、ここでもピッチに立つ機会は限定。1シーズン半の在籍でリーグ戦出場はわずか15試合に留まった。

 そんなブラヒム・ディアスにとって、ミランへの期限付き移籍は意味のあるものにしたいところだ。シティやマドリーでは選手層の壁にぶち当たったが、ミランはその2クラブほどポジション奪取のハードルが高くない。自身のさらなる成長を求める上で、若手の多いロッソネロは格好のクラブと言えるのではないか。

 過去に「マラガのメッシ」と称されたディアスの最大の武器はやはりドリブルだ。スピードを維持した状態でもコントロールがブレず、タイトなマークを受けてもひらりとかわす。また、多彩なパスを駆使したチャンスメークの質も高い。単独で攻撃に色を加えられるのは、この男の最大の武器と言えるだろう。

 個で仕掛けられる人材がやや少なかったミランにとって、ディアス加入による効果は決して小さくないだろう。セリエA第2節クロトーネ戦ではさっそくゴールも決めたが、ここからどれだけ継続して結果を残すことができるか。

フランスの若きサイドバック

DF:ピエール・カルル(フランス/背番号20)
生年月日:2000年6月5日(20歳)
19/20リーグ戦成績:19試合出場/0得点0アシスト(リヨンB)

 今年6月に20歳になったピエール・カルルは、リヨンの下部組織でスキルを磨いてきた選手。年代別フランス代表としてのプレー経験も十分で、将来のフル代表入りも期待されている。ちなみに二人の兄、アルドとゲデオンはそれぞれFCバーゼルとアジャクシオでプレーしている。

 カルルはパフォーマンス自体は決して悪くなく、リヨン側も来季の構想に同選手を含めていたようだが、結局トップチームでの出番がないまま退団。そこへテクニカルディレクターを務めるパオロ・マルディーニ氏が直接獲得交渉に関与したことで、セビージャらとの争奪戦をミランが制す格好になったようだ。

 右サイドバックでのプレーを基本としているカルルだが、身長184cmと体躯にも恵まれており、センターバックのポジションも担うことができる。場合によっては左サイドバック、あるいは守備的MFとしてもプレーできるなど、非常に万能な選手と言えるだろう。

 先述した通り大柄なカルルはフィジカルコンタクトに強く、スタミナも豊富で、縦に飛び出す積極性も光る。一方で足元の技術は凡庸でクロスの質はそこまで高くなく、ここは同選手の弱点とも言われている。ミランでどれだけこのスキルを高めていけるかは、注目ポイントの一つだろう。

 ミランの右サイドバックにはダビデ・カラブリアとアンドレア・コンティがいるため、カルルは3番手になる。コンティは負傷中だが、カラブリアは予想に反して好調なので、いずれにしてもスタメン奪取はかなり難しい状況だ。与えられた出場機会でどこまでアピールできるかが重要となる。

偉大なる血を継ぐ男

MF:ダニエル・マルディーニ(イタリア/背番号27)
生年月日:2001年10月11日(18歳)
19/20リーグ戦成績:2試合出場/0得点0アシスト
19/20リーグ戦成績:11試合出場/7得点3アシスト(ミラン・プリマヴェーラ)

 祖父チェーザレ、父パオロの偉大な血を継ぐ「3代目」だ。マルディーニ家とミランは固い絆で結ばれており、クラブと共に今も歴史を築き続けている。だからこそ、このダニエルの台頭を心待ちにしているミラニスタは少なくないだろう。

 ダニエルは昨季、プリマヴェーラ(U-19)での活躍を受けトップチームの北米遠征に帯同。バイエルン・ミュンヘン戦でトップチームデビューを飾った。その後は再びプリマヴェーラでプレー。最終的にリーグ戦11試合で7得点3アシストと申し分ない成績を収めていた。

 待望の瞬間は第22節のエラス・ヴェローナ戦で訪れた。ダニエルはサム・カスティジェホと交代でピッチに投入。これが同選手にとってのセリエAデビューだった。プレー時間はわずか1分だったが、歴史的な瞬間であった。ダニエルは試合後に「デビューは夢だった」とコメントしている。

 祖父チェーザレと父パオロは偉大なDFだったが、ダニエルは攻撃的な選手だ。トップ下もできればサイドでもプレーでき、卓越した戦術眼と優れた足元の技術を武器に攻撃のグレードを引き上げる。左右両足を器用に使いこなすあたりは、同じく左右両足を遜色なく使った父親譲りと言えるかもしれない。

 第1節ボローニャ戦、続く第2節のクロトーネ戦とベンチには入ったが、出番は訪れなかった。今後もステファノ・ピオーリ監督の下で出場機会は限られてくるはずだが、歴史の1ページに刻まれるミランでの初ゴールを記録する日が来るのか。注目したい。

ヴィエリのような恐ろしさ

FW:ロレンツォ・コロンボ(イタリア/背番号29)
生年月日:2002年3月8日(18歳)
19/20リーグ戦成績:1試合出場/0得点0アシスト
19/20リーグ戦成績:6試合出場/9得点1アシスト(ミラン・プリマヴェーラ)

 今ミランで最も勢いに乗る若手選手は、18歳のロレンツォ・コロンボと言えるだろう。現役時代フィオレンティーナなどで活躍したガブリエル・バティストゥータをアイドルに挙げるストライカーには、すでに多くのミラニスタが特別な期待感を抱いている。

 下部組織入団以降、順調なペースで成長を果たしたコロンボは2018/19シーズン、わずか16歳でミランU-17とミラン・プリマヴェーラ(U-19)の両チームでプレー。昨季は正式にプリマヴェーラ昇格を決めると、怪我の影響もありながらリーグ戦6試合で9得点1アシストという申し分ない成績を収めた。

 その活躍を受け昨季のコッパ・イタリア準決勝ユベントス戦でトップチームデビュー。その後、セリエAでもピッチに立った。さらに、今月行われたヨーロッパリーグ予選3回戦ボデ/グリムト戦では、エンバイェ・ニアン以来となる公式戦最年少得点を記録。驚異的な早さでメキメキと力をつけているのだ。

 コロンボは身長183cmと恵まれた体躯を誇っており、ペナルティーエリア内で発揮する強さ、ゴールへの嗅覚、パンチ力のあるシュート、そして高質なポジショニングセンスを武器に持つ。よく比較対象に上がるのは、重戦車クリスティアン・ヴィエリだ。18歳のコロンボにはすでに、そのような怖さが備わっている。

 ミランの1トップはズラタン・イブラヒモビッチが不動だ。そのバックアップに関しては様々な噂が出たが、どうやらクラブはここを補強しないようだ。その理由はラファエル・レオンやアンテ・レビッチがいるというだけでなく、コロンボがバックアッパーに相応しいと判断したからに他ならない。期待値の高さは明らかだ。