S評価

 2020/21シーズンは、夏の移籍市場が終了した。この夏も様々な動きがあったが、各クラブはどのようなスカッドを揃えているのか。今回は24クラブの総合評価をS〜Dの5段階で紹介する。

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リバプール
昨季は30年ぶりに国内リーグ制覇を成し遂げたリバプール。昨季までの主力は全員残留しており、懸念されていたバックアッパーも確保。前線にはポルトガル代表のディオゴ・ジョッタを加え、中盤にはチアゴ・アルカンタラが加入。ギリシャ代表のコスタス・ツィミカスが左サイドバックのバックアッパーを務める布陣に穴は見つからない。プレミアリーグ連覇や2年ぶりのCL優勝も現実的なスカッドを揃えている。

バイエルン・ミュンヘン
昨季のCLを制した欧州王者は欧州王者のままだ。チアゴ・アルカンタラのリバプール移籍こそあったものの、マンチェスター・シティから加入したレロイ・ザネはすでにエース級の存在感を放つ。移籍市場終盤にはドグラス・コスタやマルク・ロカも加わり、チーム力は決して下がっていない。ブンデスリーガ8連覇の可能性は非常に高く、CLの連覇も現実的な目標になるだろう。

A評価

マンチェスター・シティ
プレミアリーグ3連覇を逃したマンチェスター・シティは積極的な補強を施した。ダビド・シルバやレロイ・ザネが抜けたものの、フィル・フォーデンの台頭や新加入のフェラン・トーレスへの期待も大きい。オランダ代表のナタン・アケとポルトガル代表のルベン・ディアスを加え、課題としていたセンターバックにも実力者が揃った。新加入選手がフィットすれば、覇権奪回は現実的なものになるだろう。

レアル・マドリード
今夏マルティン・ウーデゴールらの復帰はあったが、移籍金を支払って獲得した選手は0名。昨季とまったく同じ主力メンバーで今シーズンに臨む。ただ、選手は揃っており守備もかなり堅いのだが、期待できる得点源がカリム・ベンゼマのみというのは問題。チャンピオンズリーグはもちろん、ラ・リーガでも苦戦する試合は増えるかもしれない。そのため評価は「S」ではなく「A」となった。

ユベントス
昨季のユベントスはセリエA9連覇というミッションをクリアしたものの、CLではラウンド16で敗退。マウリツィオ・サッリ監督は1年で解任され、U-23チームを率いる予定だったアンドレア・ピルロが後任に就いている。ブレーズ・マテュイディらベテランが退団し、スカッドは大幅に若返ることになった。アルトゥールやアルバロ・モラタといった新戦力と、クリスティアーノ・ロナウドら既存の主力、そして、新指揮官の戦術がフィットすれば、セリエA10連覇とともに欧州タイトルも射程圏に捉えるだろう。

ドルトムント
昨夏は大型補強を敢行したものの、バイエルン・ミュンヘンの連覇を止めることはできなかった。対照的に今夏は即戦力の補強は限定的となっている。ジェイドン・サンチョの残留が決まり、ジョバンニ・レイナや新加入のジュード・ベリンガムといった10代の選手たちがブレイク間近。怪我から復帰したマルコ・ロイスやベテランの域に達したマッツ・フンメルスも健在で、今季こそブンデスリーガ制覇へ期待がかかる。

パリ・サンジェルマン
珍しく新戦力の獲得を低コストで済ませた。バルセロナから獲得したラフィーニャは移籍金無し、ポルトから加入のダニーロ・ペレイラは買い取りオプション付きのレンタル、エバートンから引き入れたモイーズ・キーンやローマからやってきたアレッサンドロ・フロレンツィも期限付き移籍だ。一方で主力の退団はチアゴ・シウバとエディンソン・カバーニくらいで、総合力は昨季以上になった。有望な若手が次々に流出していくのは気がかりだが、フランスでの地位は揺るがないだろう。

B評価

バルセロナ
大きな騒動となったオフを終え、バルセロナはロナルド・クーマン監督の下で新たなスタートを切った。ルイス・スアレスやイバン・ラキティッチといったベテランがチームを去り、フランシスコ・トリンコンら若手が加入している。ラ・リーガでは上場の滑り出しを見せたが、DF陣の層の薄さを解消できなかったことが懸念材料。タイトルを獲得するには、フィリッペ・コウチーニョやアントワーヌ・グリーズマンの活躍が不可欠になるだろう。

インテル
アシュラフ・ハキミ、アレクサンダル・コラロフ、アルトゥーロ・ビダルらを獲得した今夏の補強は大成功とみていい。選手層も十分で、ユベントスを抑えてセリエA制覇を果たす可能性も十分高いと言える。チャンピオンズリーグの戦いにも期待できるだろう。ただ、堅守速攻型スタイルはかなり植え付けられているが、被カウンター時の対応は今季の課題と言えるのかもしれない。

RBライプツィヒ
昨季はチャンピオンズリーグでベスト4入りを果たすなど躍進。今季は再びCLでの上位進出、そしてブンデスリーガ悲願の初優勝を狙うが、それをやってのけるほどの人材が揃っているのは確か。ユリアン・ナーゲルスマンという監督も含め、やはり魅力的なチームだ。しかし、エースであったティモ・ヴェルナーの退団は指揮官が話す通り「大きな打撃」。ファン・ヒチャンら新加入選手に懸かる期待は大きい。

アタランタ
今季もやってくれそうな気配は漂っている。アレハンドロ・ゴメスを中心に繰り出す破壊力はワールドクラスで、マンツーマンディフェンスのクオリティーもかなり高い。何より結果が出ていることで選手の自信も十分。セリエA制覇も決して非現実的ではないだろう。一方で欧州の舞台ではやはりダークホース的な立場に変わりはない。総合評価は「B」が妥当だろう。

セビージャ
昨季、史上最多6度目のEL制覇を成し遂げたセビージャだが、相変わらず補強は渋い。イバン・ラキティッチがバルセロナから7シーズンぶりに復帰したのが最大のニュース。他の新戦力は弱点をピンポイントに補う選手たちで、移籍市場閉幕間際にはオランダのAZアルクマールから左ウィングのウサマ・イドリッシを、ヘルタ・ベルリンからオランダ代表センターバックのカリム・レキクの獲得を発表した。ジュレン・ロペテギ監督の作り上げたチームはすでに完成度が高く、今季のラ・リーガで台風の目になるポテンシャルがある。11月に35歳となるヘスス・ナバスの円熟味を増したプレーにも注目だ。

アトレティコ・マドリード
移籍市場閉幕間際にトーマス・パーティがアーセナルへ移籍し、代わりにルーカス・トレイラが加入した。それよりも特大のインパクトをもたらしたのはルイス・スアレスの加入に他ならない。アルバロ・モラタは出場機会を求めてユベントス行きを選んだが、スアレスとジョアン・フェリックスやジエゴ・コスタと組み、どんな力を発揮するかが今季のチームの浮沈を握る。ディエゴ・シメオネ監督が就任10シーズン目を迎え、バルセロナとレアル・マドリードの2強を脅かす存在として真価を問われる1年になりそうだ。

チェルシー
夏の移籍市場での立ち回りはプレミアリーグ全クラブの中でも最高クラスだった。FIFAによる補強禁止処分が明けて、鬱憤を晴らすように即戦力を大量に獲得。PSGからフリーでチアゴ・シウバを獲得したほか、ティモ・ヴェルナーやカイ・ハフェルツ、ベン・チルウェルなど楽しみな若手を数多くスカッドに加えた。不安定だったケパ・アリサバラガの代役たりうる長身GKエドゥアール・メンディも獲得したが、結果がついてきていない。なんとか引き分けに持ち込んだものの、前半だけで3失点したウェストブロムウィッチ戦のパフォーマンスは今後への不安を抱かせるのに十分だった。それでも新戦力の適応が進めば、チーム力はAにもSにも化けうるポテンシャルを秘めている。

C評価

アーセナル
昨季は8位に終わったアーセナルは大型補強に着手。新加入のガブリエウ・マガリャンイスやウィリアンは開幕から期待に沿う活躍を見せいている。ミケル・アルテタ監督が指向するサッカーも浸透しつつあるが、ライバルたちも着実に戦力を整えており、今季のプレミアリーグは激戦が必至。16/17シーズン以来となるCL出場権を獲得できる4位以内が現実的な目標となるだろう。

エバートン
ハメス・ロドリゲスの加入による好影響は計り知れない。プレミアリーグ初挑戦ながら、すぐさま右サイドで定位置を確保すると、攻撃の絶対的な中心に君臨してチームを引っ張っている。10月の代表ウィーク前の段階でリーグ首位に立った。前線は開幕4試合連続ゴール中のドミニク・キャルバート=ルーウィンがけん引し、中盤は新加入のアランとアブドゥライェ・ドゥクレが引き締める。カルロ・アンチェロッティ監督率いるチームが来季のCL出場権争いに絡めれば、プレミアリーグはもっと面白くなる。

トッテナム
補強の目玉は7年ぶりの復帰となったガレス・ベイルだ。レアル・マドリードでここ数年ほとんどインパクトを残せていなかったが、慣れ親しんだ古巣で完全復活を遂げられればトッテナムの大きな武器になる。ただ、気になるのはヤン・フェルトンゲンとフアン・フォイが抜けた最終ラインの層の薄さ。ELも並行して戦う過密日程を乗り切るには少々心もとない。中盤や前線にはピエール=エミル・ホイビェアやカルロス・ヴィニシウスといった楽しみな新戦力も加わっているだけに、ジョゼ・モウリーニョ監督の手腕の見せどころだ。

ミラン
サンドロ・トナーリやブラヒム・ディアスらの獲得は大きく、アンテ・レビッチやズラタン・イブラヒモビッチの残留もかなりプラス。何より勢いが十分で、ここ数年で最も期待できるチームとなっている。ただ、不安はDF陣だ。とくにセンターバックの人材が物足りず。今夏に冨安健洋やオザン・カバク、ニコラ・ミレンコビッチらを獲得できなかったのは、かなりの痛手と言える。

ラツィオ
チーロ・インモービレやセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチなど、12シーズンぶりのチャンピオンズリーグ出場権獲得に貢献した主力選手たちは健在。基本スタメンだけをみれば今季もセリエAで上位に食い込むことは可能だろう。しかし、昨季終盤の失速が証明するように選手層の薄さはかなりの懸念点。今季は激しい戦いが繰り広げられるCLにも出場する中、どこまで強度を保つことができるか。

D評価

マンチェスター・ユナイテッド
昨季チャンピオンズリーグ出場権獲得に貢献した主力選手は軒並み残留。そこへアレックス・テレスにエディンソン・カバーニ、ドニー・ファン・デ・ベークら即戦力級選手も加わった。陣容はかなり豪華と言えるだろう。しかし、オーレ・グンナー・スールシャール監督の采配は相変わらず質が低く、チームとしての形は未だバラバラな印象だ。やはり“総合力”と言う意味では落ちる。

アヤックス
ダビド・ネレスやエドソン・アルバレス、そして今夏に加わったアントニーやモハメド・クドゥスなど、相変わらず面白い若手が多い。しかし、ハキム・ツィエクやドニー・ファン・デ・ベークといった主力が引き抜かれた穴は決して小さくないのが事実。エールディビジ制覇は十分可能性があるが、経験値不足も否めないため欧州の舞台では苦戦を強いられるかもしれない。

ボルシア・メンヒェングラートバッハ
昨季はレヴァークーゼンを2ポイント差で振り切って4位フィニッシュ。1年前に3ポイント差で逃したCL出場権を確保した。しかし、移籍市場での動きは非常に静かで、補強も放出も最小限にとどまった。RBライプツィヒから借り受けた21歳のハンネス・ヴォルフと、2シーズン前のインテル移籍以降精彩を欠くヴァレンティーノ・ラザーロ、この2人のオーストリア人アタッカーたちの活躍がCLでの躍進の鍵を握りそうだ。

マルセイユ
PSGに大きく離されはしたが、昨季はリーグ戦中止が決まる段階で2位につけていた。アンドレ・ヴァラン・ボアス監督就任1年目でCL出場権獲得は大きな成果と言っていいだろう。新シーズンに向けた補強は若手中心で、バイエルン・ミュンヘンからフランス人MFミカエル・キュイザンス、ボルシア・ドルトムントからアルゼンチン人MFレオナルド・バレルディ、フランス2部ル・アーヴルからMFパペ・ゲイエなどを迎え入れた。唯一の例外がガラタサライを退団してフリーになっていたDF長友佑都の獲得である。この33歳の経験豊富なサイドバックは、懸案だった左の選手層の問題を解決しうる。酒井宏樹との日本代表サイドバックコンビがCLの大舞台に挑む。

ポルト
財政問題で今夏の主力放出は避けられなかった。18歳のFWファビオ・シウバを4000万ユーロ(約50億円)でウォルバーハンプトンに売却したのを皮切りに、移籍市場閉幕間際になってアレックス・テレスのマンチェスター・ユナイテッド移籍や、ゼ・ルイス、チキーニョ・ソアレスの売却も成立。主将のダニーロ・ペレイラも買い取りオプション付きのレンタルでPSGへと去った。一方、新戦力は国内リーグで実績を残した安価な中堅選手が中心で、ややスケールダウン感は否めない。純粋なタレント力では4大リーグのビッグクラブに見劣りするが、フェリペ・アンデルソン、マラン・サール、マルコ・グルイッチという、それぞれウェストハム、チェルシー、リバプールから市場閉幕日にレンタルした選手たちの活躍がカギを握りそうだ。