新加入選手が絶好調の立役者に

 欧州の2020/21シーズンが開幕し、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、各国の主要クラブはそれぞれどんな動きを見せたのだろうか。今回は昨季のプレミアリーグを12位で終えたエバートンの補強動向を読み解く。

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 プレミアリーグに大きな地殻変動が起きるかもしれない。

 昨季は12位と苦しんでいたエバートンが、10月の国際Aマッチウィークによる中断期間を首位で迎えるとは誰が想像しただろうか。

 好調をけん引しているのは、この夏の新加入選手たちだ。

 レアル・マドリードで完全に居場所を失っていたハメス・ロドリゲスは、恩師カルロ・アンチェロッティ監督によって攻撃の軸に据えられた。右サイドを始点にいたるところに顔を出し、高精度のサイドチェンジや、カットインしての左足シュート、意表を突くラストパスなどで違いを生み出している。

 ハメスが抜群のキープ力や対面する相手を手玉に取る超絶技巧を駆使して起点になることで、逆サイドのリシャルリソンや、1トップのドミニク・キャルバート=ルーウィンも昨季以上のパフォーマンスを発揮できるようになった。前者はサイドチェンジを受けて、フリーでゴールに向かって仕掛けられる回数が増加。後者はハメスからのクロスや精度抜群のセットプレーの恩恵を受け、ゴールを量産している。

 彼らアタッカー陣が気持ちよく仕事に専念できるのは、中盤の働き者たちがサポートに奔走しているからでもある。ナポリ時代にアンチェロッティ監督の薫陶を受け、ブラジル代表にまで上り詰めたアランは初挑戦のプレミアリーグに素早く順応。持ち前のボール奪取力と豊富な運動量を遺憾なく発揮している。

 2部降格となったワトフォードから迎えたアブドゥライェ・ドゥクレも広範囲に動き回りながら、リンクマンとしての役割を全う。対人の力強さのみならず、的確な配球も光り、攻守両面において重要な存在となった。

 そして、移籍市場最終盤には選手層の薄さが課題だったディフェンスラインに若手DFベン・ゴッドフリーを獲得した。ノリッジで名をあげた22歳のセンターバックには、同クラブの2部降格にともなってステップアップの噂が絶えなかったが、最終的にエバートン行きに落ち着いた。

 ジェリー・ミナとマイケル・キーンのセンターバックコンビは盤石だが、この2人にゴッドフリーが割って入るようになればディフェンスラインの頼もしさは増す。安定感を著しく欠いているイングランド代表GKジョーダン・ピックフォードにも、スウェーデン代表のロビン・オルセンという競争相手が現れた。

 中盤より前ではすでにベストな組み合わせが確立されつつある一方、ディフェンス陣はこれから本格的にポジション争いが繰り広げられるはずだ。抜群の攻撃力と今の好調ぶりを維持しつつ、競争によって守備面の強化を図れれば、エバートンのチーム力は飛躍的に向上するだろう。

 上位陣の顔ぶれが固定化しつつあるプレミアリーグで、アンチェロッティ監督率いるエバートンが台風の目になるか。まずは欧州カップ戦出場権の確保を目標にし、その先に来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場を見据えて戦っていくことになる。

補強・総合力評価

IN
GK:ロビン・オルセン(ローマ/期限付き移籍)
GK:ヨナス・レスル(ハダースフィールド/期限付き移籍から復帰)
DF:ベン・ゴッドフリー(ノリッジ)
DF:ニールス・ヌゥクンク(マルセイユB)
DF:ションジョ・ケニー(シャルケ/期限付き移籍から復帰)
DF:マシュー・ペニントン(ハル・シティ/期限付き移籍から復帰)
MF:アラン(ナポリ)
MF:アブドゥライ・ドゥクレ(ワトフォード)
MF:ハメス・ロドリゲス(レアル・マドリード)

OUT
GK:マールテン・ステケレンブルグ(アヤックス)
DF:ルーク・ガーバット(ブラックプール)
DF:レイトン・ベインズ(現役引退)
DF:クコ・マルティナ(未定)
DF:ジブリル・シディベ(モナコ/期限付き移籍期間満了)
MF:モルガン・シュネデルラン(ニース)
FW:モイーズ・ケーン(パリ・サンジェルマン/期限付き移籍)
FW:テオ・ウォルコット(サウサンプトン/期限付き移籍)
FW:シャニ・タラシャイ(FCエメン/期限付き移籍期間満了→未定)
FW:ウマル・ニアッセ(未定)

補強評価:A

 いまのところ新加入選手たちが期待以上の活躍を披露している。特にハメス・ロドリゲスの躍動ぶりは見事で、一度地に堕ちた評価が回復しつつある。ドゥクレや、アンチェロッティ監督の愛弟子アランの仕事ぶりも目覚ましく、移籍市場終盤に獲得したオルセンやゴッドフリーが競争に割って入ってくれば、さらに面白くなりそうだ。

総合評価:C

 新加入選手たちは素晴らしい働きを見せているが、一方で気になるのは選手層の薄さだ。テオ・ウォルコットやモイーズ・ケーンといった貴重な控え選手たちが移籍し、ハメス、リシャルリソン、キャルバート=ルーウィンといった主力を支える控えのメンバーがやや心許ない。現状のままではビッグ6と年間を通して肩を並べ続けられる保証はなく、凡ミスを連発するGKピックフォードの扱いも再考しなければ、拾えたはずの勝ち点を取りこぼす試合も出てきそうだ。