試合の全体感

プレミアリーグ第5節ニューカッスル・ユナイテッド対マンチェスター・ユナイテッドの一戦は1-4でアウェイチームが勝利を収めた。今季1試合未消化のマンチェスター・ユナイテッドは、戦前の段階では3試合中1試合しか勝利を収めていない。そのためこの試合は敵地セントジェームスの一戦とはいえ、絶対に負けられない重要な一戦だった。さて、そんな大切なゲームで、どのように勝ち点3を手にしたのか。そしてチームとしての収穫はあったのだろうか。(文:内藤秀明)
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 結果だけを見ると3点差がついての勝利になったニューカッスル戦だが、決してユナイテッドとしては楽な展開ではなかった。

 まずユナイテッドは、前節のトッテナム戦では屈辱の6失点を喫したこともあり、失点しないことを強く意識して臨んだ試合だったはず。しかし開始早々にその意気込みは打ち砕かれた。

 オーバーラップしてきたニューカッスルの右SBエミル・クラフトのクロスが、ユナイテッドのルーク・ショーに当たって方向が変わり、無情にもボールはゴールに吸い込まれていった。このアンラッキーな事故は開始2分のことである。幸先悪いスタートだったのだ。

 なおこの後、ユナイテッドは攻めに攻めた。最終的なポゼッションが64%、シュート本数は28本というスタッツがその前がかりな姿勢を証明している。確かに同点弾まではスムーズだった。23分にフアン・マタのコーナーキックからハリー・マグワイアが力強いヘッドでゴール。直近は低調なパフォーマンスに終始していたこともあり、キャプテンが明確な結果を残した事実はチームにポジティブな影響も与えたはずだ。

 ただしその後が長かった。どれだけ攻めてもリトリートするニューカッスルを崩しきれない。58分にはマーカス・ラッシュフォードが得たPKを、ブルーノ・フェルナンデスが外すという痛すぎるミスもあった。これまでユナイテッドでは10本連続でPKに成功していたポルトガル代表MFのPKミスは、正直チームにとって想定外の事件だ。そしてその後、試合終了間際の86分まで逆転弾が決まらなかった。

 改めて言うがユナイテッドにとって苦しい展開だった。引き分け、あるいは、前掛かりに攻めた結果、カウンターで失点を喫して敗戦する展開も十分ありえたのである。対するニューカッスルは有効なチーム戦術を持つチームではないものの、ドン引きの状態から個人の力で決定機を作り出すタレントが豊富だ。

実際、力強いドリブルで複数名引きちぎることが可能なフランス人ウインガーのアラン・サン=マクシマンや、ミドル&ロングレンジのパスを正確に通すイングランド人MFのジョンジョ・シェルヴィーらの対応にユナイテッドは苦しんでいた。

不調だったが試合を決めたのはブルーノ・フェルナンデス

 ただ最終的に試合を決めたのは、PKこそ失敗したももの、やっぱり頼れる男ブルーノ・フェルナンデスだった。後半途中からニューカッスル側も疲れが見え始めており、守備ブロックは明らかに間延びし始めていた。

 そんな中、76分に途中交代で入ったドニー・ファンデベークが低い位置でボールを拾うと、フェルナンデスとのワンツーでタメを作り、カウンター発動の起点となる縦パスをマタに入れる。縦パスを受け取った小柄なスペイン人MFは、左サイドを駆け上がるラッシュフォードに素早く展開すると、イングランド代表FWはそのままボックス内までボールを持ち運ぶ。

 その後、ボックス内でカットインしているラッシュフォードから、背後を追い越すことでボールを引き出すことに成功したフェルナンデスは、一度右足で前方に持ち出すと、角度があまりない位置からファー上隅に絶妙なシュートを決めた。そこまで好セーブを繰り返していたニューカッスルのGKカール・ダーロウにとってはノーチャンスのシュートだった。

 その後はゴールラッシュになった。90分にラッシュフォードから受け取ったスルーパスをアーロン・ワン=ビサカがニア上に強烈な3点目を決めた他、94分にはブルーノの完璧なロングフィードでのお膳立てをラッシュフォードが決めて4点目をマーク。試合終盤に突き放したユナイテッドは勝利を収めることに成功した。

 さて、この日も試合を決めたのは、前述の通りブルーノ・フェルナンデスだったわけだが、彼の評価は難しいところだ。

 正直なところフェルナンデスのパフォーマンスはやや精彩に欠いていたのだ。もともとフェルナンデスはチャレンジパスが多いタイプのためパス成功率がやや低めなのだが、この日は特にパスミスが多かった。この試合では、低い位置での安全なパスワークも多く全体のパス成功率は80%と、昨季平均の76%よりもやや高いスタッツになっているが、アタッキングサードでのパス成功率は65%と非常に低い数字になっていた。

 代表戦に参加した疲れもあって、万全ではなかったのかもしれない。それでも結果を残すあたり役者が違うと言うべきか。最終的にはPKミスやパスミスも吹き飛ばす1ゴール1アシストの結果を残すことに成功した。

鍵となった二人の選手

 ただしマン・オブ・ザ・マッチが文句なしでブルーノ・フェルナンデスかというと、悩ましいところである。この試合では他にも活躍した選手たちが複数いる。取り上げだすとキリがないので、ひとまず二人に絞って紹介していきたい。

 まずは1ゴール2アシストを記録したマーカス・ラッシュフォードだろうか。この日のラッシュフォードは、単純にゴール直結のプレーだけでなく、その他のプレーでもチームを牽引した。昨季のリーグ再開以降、ドリブル突破を見せない消極的なプレーに終始していたユナイテッドの10番は、数カ月間、明らかに本調子ではなかった。

 しかしニューカッスル戦では、まだまだ足元にボールが詰まるようなシーンはあったものの、トップレベルのスピードと技術を活かしたドリブル突破で、自ら何度も好機を作り出し、味方にチャンスを供給するだけでなく、自身で7本ものシュートを放った。まだまだ100%の状態ではないものの、エースの復調を印象づける一戦になったことは間違いない。

 そして忘れてはならないのは大ベテランのフアン・マタだ。右ウイングで出場したマタは、様々なエリアに顔を出して攻撃のリズムを作り続けるどころか、ボックス内にも何度も飛び込み相手を撹乱。判断の良いパス出しで決定機も演出し続けた。アシスト自体は同点弾の1のみだが、マタ抜きでは今日の逆転劇がなし得なかったことは間違いない。

 今年32歳になったマタは、20代の頃に比べると、コンディションの良い日と悪い日でプレーの質が変わるようになってしまったが、良い日であれば間違いなく頼れる存在である。フェルナンデスやポグバなどトップレベルのゲームメイカーが複数ユナイテッドにはいるが、マタもまだまだ戦力だ。ピッチ外だけでなくピッチ内でも潤滑油になれる存在なのである。

ブルーノ、ポグバ、ファン・デ・ベーク共存の可能性

 ここまでは個人としての活躍にフォーカスしてきた。というのもこの日のユナイテッドが戦術的な創意工夫が多かったわけではないからだ。しかし組織としても一つ興味深い示唆もあったことも最後に明かしておきたい。

 その示唆とは、ブルーノ・フェルナンデス、ポール・ポグバ、ドニー・ファン・デ・ベークは共存できる可能性があるということだ。

 この日、69分にフレッジに代わってポグバが、76分にダニエル・ジェームズに代わってファン・デ・ベークが投入されたことで、スタメンのフェルナンデスと共にこの3人が共演することになった。

 その際、左ウイングにフェルナンデス、トップ下にファン・デ・ベーク、中盤にポグバが入る形だったのだが、彼らはポジションチェンジを繰り返しながら見事に連動を見せていた。基本的には左ウイングの位置にはラッシュフォードや、アントニー・マルシャル、ダニエル・ジェームズらが入るため、これがメインの配置になることは少ないだろうが、選択肢としては全然ありだ。

 やはりフェルナンデスはサッカーIQが高い選手のため、サイドでも周りとの連係で上手く状況を打開するプレーを見せただけでなく、ウイングとしての守備も難なくこなしていた。この日は左での起用だったが、今後、右でも試して問題なくプレーできそうであれば、采配の幅は広がっていくだろう。

 ちなみにリーグカップのブライトン戦で、オーレ・グンナー・スールシャール監督は70分頃からファン・デ・ベークを左ウイングとしてプレーさせる実験を行っている。ただオランダ代表MFは、ウイングとしての守備をイマイチ理解できていないようで、守備面で大きな穴になっていた。

 結果、10分後の80分には選手を代えてファン・デ・ベークを中央に戻す修正を行っている。実験は失敗だったようだ。守備意識が高い選手ではあるので、守備さえ覚えれば、将来的にはサイドでの起用もなしではないだろうが、そもそもドリブルで運んだりできるタイプではないので、基本的には中央での起用が妥当なところだろう。

ユナイテッドが上位を争う可能性は?

 試合自体は攻めあぐねる展開だったこともあり、ファンの中には、不満を感じる者もいるかもしれない。ただそんな試合では、個人という視点でも、組織という視点でも収穫は少なからずあった。

 あるいは監督自体に対して改めて懐疑的な意見を持ったファンもいるだろう。それも理解できる。監督の適任者に関する議論は長くなるので今回は避けるが、また幸いというべきか、チームの状態は100%ではないため、現体制のままでも上積みは望める。

 いずれにしても、チーム全体のコンディションを上げつつ、新戦力のエディソン・カバーニというワールドクラスのストライカーを上手くハメれば、まだ今のユナイテッドでも上位争いに食いこんでいけるはずだ。シーズンはまだ始まったばかりだ。もう少し見守ってから結論を出していきたいところである。

(文:内藤秀明)

【了】