若手積極補強で漂う期待感

 欧州の2020/21シーズンが開幕し、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、各国の主要クラブはそれぞれどんな動きを見せたのだろうか。今回は昨季のセリエAを6位で終えたミランの補強動向を読み解く。

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 昨季のミランはマルコ・ジャンパオロ監督の下でスタートダッシュに失敗していた。しかし、ご存じの通りステファノ・ピオーリ新監督就任、そしてズラタン・イブラヒモビッチが加入してからチームは劇的に変化。最終的に12試合負けなしのまま、2019/20シーズンのセリエAを終えている。

 良い空気を維持したままオフを迎えることができたミランは、今夏の移籍市場でもおおむねポジティブな結果を残している。今や悲願とも言うべきチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得に向け、例年にはなかったような期待感が漂っていると言ってもいいだろう。

 昨季のミランは若手を中心に補強を行っていたが、それは今年も同じだった。その中で目玉となったのは、国内外の様々なクラブが興味を示していたイタリア代表MFサンドロ・トナーリの獲得。将来有望かつ攻守両面のクオリティーは十分で、フランク・ケシエやイスマエル・ベナセルのいる中盤の層にさらに厚みが増すという意味でも、大きな戦力強化となった。

 さらにミランはレアル・マドリードからブラヒム・ディアス、ヨーロッパリーグ(EL)予選でサプライズ発掘したイェンス・ペッター・ハウゲの獲得にも成功。両者ともにサイドだけでなくトップ下としても機能するため、ここにラファエル・レオンやサム・カスティジェホらもいる2列目の選手層は十分と言えるはずだ。

 また、最終ラインにはディオゴ・ダロとピエール・カルルの若手サイドバックが加入。即戦力ではないとはいえ、ダビデ・カラブリアやテオ・エルナンデスらの負担を減らすことを考えれば、満足いく戦力補充と言えるはずだろう。

 そして、イブラヒモビッチが契約延長。シモン・ケアー、アンテ・レビッチ、アレクシス・サレマーカーズの買い取りに成功したのも大きかった。イブラヒモビッチはもちろんのこと、今やこれらの選手はミランというクラブにおいて欠かすことのできない戦力となっている。

 一方で不安な面ももちろんある。まずは、センターバックの選手層だ。

 主将アレッシオ・ロマニョーリとケアーがファーストチョイスだが、その控えはまだまだ未熟なマッテオ・ガッビアと昨年2月から出番のないマテオ・ムサッキオ、そして実力を発揮しきれていないレオ・ドゥアルテ。十分とは言えない。今夏にオザン・カバクやマティヤ・ナスタシッチ、ニコラ・ミレンコビッチ、冨安健洋らを加えることができなかったのは、少なからずダメージを受けたと言える。

 また、ミランは良くも悪くもイブラヒモビッチのチームである。同選手の他に純粋なCFタイプは若いロレンツォ・コロンボしかおらず、レビッチやレオンを最前線に置くメリットは今のところ少ない。やはり背番号11が何らかの理由で不在となった場合は、苦戦を覚悟しなければならない。

 とはいえ、先述した通り今季が最も期待できることは確かだ。ピオーリ監督の下、攻守両面の質が高く、リーグ開幕4連勝とスタートも上々である。この勢いをできるだけ継続させ、笑ってシーズンを終えたいところだ。

補強・総合力評価

IN
GK:チプリアン・タタルシャヌ(リヨン)
DF:シモン・ケアー(セビージャ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
DF:ディオゴ・ダロ(マンチェスター・ユナイテッド/期限付き移籍)
DF:ピエール・カルル(リヨンB)
MF:サンドロ・トナーリ(ブレシア/期限付き移籍)
MF:アレクシス・サレマーカーズ(アンデルレヒト/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW:ブラヒム・ディアス(レアル・マドリード/期限付き移籍)
FW:イェンス・ペッター・ハウゲ(ボデ/グリムト)
FW:アンテ・レビッチ(フランクフルト/期限付き移籍期間満了→完全移籍)

OUT
GK:ホセ・マヌエル・レイナ(ラツィオ)
GK:アレッサンドロ・プリッツァーリ(レッジーナ/期限付き移籍)
GK:アスミル・ベゴビッチ(ボーンマス/期限付き移籍期間満了)
DF:リカルド・ロドリゲス(トリノ)
DF:ガブリエレ・ベロディ(アレッサンドリア/期限付き移籍)
DF:ディエゴ・ラクサール(セルティック/期限付き移籍)
DF:グスタボ・ゴメス(パルメイラス/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
MF:ルーカス・パケタ(リヨン)
MF:ジャコモ・ボナヴェントゥーラ(フィオレンティーナ)
MF:ルーカス・ビリア(ファティ・カラギュムリュク)
MF:トンマーゾ・ポベガ(スペツィア/期限付き移籍)
MF:アレン・ハリロビッチ(未定)
FW:アンドレ・シウバ(フランクフルト/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW:スソ(セビージャ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW:ガブリエレ・カパンニ(チェゼーナ/期限付き移籍)
FW:リッカルド・フォルテ(カヴェーゼ/期限付き移籍)
FW:フランク・ツァジュウト(チッタデッラ/期限付き移籍)

補強評価:B
トナーリ、B・ディアス、ペッター・ハウゲら若手を積極的に補強し、レビッチやサレマーカーズらもしっかりと買い取り。とくに2列目や中盤の層に厚みが増した。一方でCBの人材はやや不安で、今夏に冨安ら何名かの候補が挙がりながらも獲得できなかったのは少なからずダメージ。欲を言えば純粋なCFタイプも加えたかったところだ。

総合評価:C
セリエAではスタートダッシュに成功し、期待値は例年よりも遥かに大きい。しかし、評価は厳しめのC。全体的な選手層という意味ではユベントスやインテルには及ばず、イブラヒモビッチ不在の場合を考えると、やはりすべてを楽観視することはできない。ELも戦う中で日程も厳しくなるが、固定されつつある主力メンバーでどこまで強度を保てるかは大きなポイントとなりそうだ。