“塩試合”で勝利を手繰り寄せた一発

 プレミアリーグ第6節が現地26日に行われ、トッテナムはバーンリーに1-0で勝利を収めた。ジョゼ・モウリーニョ監督率いるチームはセットプレーから勝利を手繰り寄せた。今季のトッテナムにおいて大きな違いを生み出しているソン・フンミンとハリー・ケインが結果を残し、歴代最強コンビへの道をひた走っている。(文:舩木渉)

———–

 いわゆる“塩試合”である。

 現地26日に行われたプレミアリーグ第6節のバーンリー戦、前半にトッテナムが放ったシュートはわずかに3本。ゴールの枠内に飛んだシュートは1本しかなかった。

 振り返ってみれば、ジョゼ・モウリーニョ監督は自ら主導してエキサイティングな試合を作り出すタイプではない。チェルシー時代もマンチェスター・ユナイテッド時代も、結果的には勝っているけれど、内容に見どころが少ない試合は珍しくなかった。

 今回のバーンリー戦も、手堅く守り、淡々と攻める、モウリーニョ監督らしい試合展開になった。今季はいまだ3得点しか奪っていないバーンリーに対してなら、先に1点取ってしまえば問題ないという計算もあったかもしれない。

 後半もボールと人は動くもののスコアが動かず、決定機の数も多くはなかった。そんな中で、トッテナムはセットプレーからゴールをこじ開けることに成功する。

 76分、途中出場のエリック・ラメラが蹴った右コーナーキックを、ペナルティエリア内でハリー・ケインが頭で逸らし、最後はソン・フンミンが押し込んだ。ケインの下がりながらヘディングで味方にパスする高難度のアシストと、味方を信じて飛び込んだソン・フンミンの咄嗟の反応が決勝点を生み出した。

 GKウーゴ・ロリスが横っ飛びでキャッチするシュートを前半に2度放たれ、後半にはコーナーキックの場面でケインがゴールライン上で相手のヘディングシュートをクリアした。こうしたピンチはいくつもあったが、最終的に1-0で勝利したのはトッテナムである。

 モウリーニョ監督は「選手たちは私が求めたクオリティのプレーを見せられていなかった」と苦戦を認めつつ、「それはバーンリーのせいであり、我々に原因があるわけではない」と苦戦を認めた。

「試合前に『これは美しいサッカーや多くのゴールが決まる試合ではない』と言ったね。ショーン・ダイチは組織だったチームの作り方を心得ているし、格上のチームを止める方法もよくわかっている」

 得点力不足は積年の課題で、中位以下が定位置のバーンリーは、プレミアリーグで生き残る術を熟知している。その象徴でありブレーンがショーン・ダイチ監督なのだから、堅い試合になるのは当然というわけだ。

ソン・フンミンとハリー・ケイン

 バーンリーの本拠地ターフ・ムーアからロンドンに勝ち点3を持ち帰るべく、ピッチ上で違いとなったのはトッテナムをけん引する2人のストライカーである。

 決勝点を奪ったソン・フンミンと、技巧的なヘディングでその1点を演出したケインのコンビはプレミアリーグ歴代最強への道をひた走っている。

 前者は今季のリーグ戦ですでに8得点2アシスト、後者は5得点8アシストを記録している。さらに特筆すべきは「ケイン→ソン」のゴールが7つ、「ソン→ケイン」のゴールが2つ生まれていることだ。6節終了時点で9得点が2人の関係性から決まったことになる。

 しかも、得点記録でゴールとアシストに2人の名前が刻まれた回数「29回」は、プレミアリーグ歴代2位タイに躍り出た。並んでいるアーセナル時代の「ティエリ・アンリとロベール・ピレス」や、マンチェスター・シティの「セルヒオ・アグエロとダビド・シルバ」はすでに解散済みのため、記録が伸びることはない。

 ソン・フンミンとケインを唯一上回っているチェルシー時代の「フランク・ランパードとディディエ・ドログバ」の「36回」に追いつくのも時間の問題だろう。韓英のエースたちが名実ともにプレミアリーグ歴代最強コンビになる日は近そうだ。

 モウリーニョ監督は2人のコンビネーションについて「マウリシオ(・ポチェッティーノ)の時代からあるものだということはわかっている。だから全て自分の功績にはしたくない。マウリシオとシェアするものだ。彼らは長く共にプレーしてきて、プレースタイルが異なっているのもいいんだろう。今のハリーは常に『9番』ではないからね」と語っている。

モウリーニョも絶賛の関係性

 トッテナムの下部組織で育ったケインが、同クラブのトップチームで継続的に出場機会を得るようになったのは2014/15シーズンから。その後、2015年夏にソン・フンミンがレヴァークーゼンから移籍加入し、2人が同僚になって今季で6シーズン目を迎えている。

「彼らはトッププレーヤーでありながら、親しい友人であり、2人の間に嫉妬はなく、ともにチームのためにプレーしているのは、私にとっては喜ばしいことだ」

 モウリーニョ監督はソン・フンミンとケインの良好な関係性がチームの勝利に直結することを非常によく理解しているのだろう。ガレス・ベイルはバーンリー戦終了の笛をベンチで聞き、スタジアムにデリ・アリの姿はなかった。クリスティアン・エリクセン退団以降、チャンスメイクにおける創造性の不足を指摘する声もある。

 ただ、それ以上にプレミアリーグ歴代最強への道を歩むコンビの存在感が大きく、彼らの不在の影響を感じることは、今のところそれほど多くない。

 ケイン自身はソン・フンミンとの関係性が劇的に向上していることについて「なぜかは自分でもよくわからない」と語っていた。しかし、「今季は例年よりも自分のボールをもらう位置が下がっていて、その間にサイドの選手たちが裏に走ってくれている。その動きが僕にスペースを与えてくれていて、顔を上げてプレーし、彼らにパスを通すことができている。ここ数年、そういうことはあまりやっていなかった」とプレーの変化を分析している。

 ソン・フンミンは左ウィングでの起用が多いため、下がりながらボールを受けて前を向いたケインから、決定的なラストパスを受けられる場所へ適切に走り込めていることが数字につながっているのかもしれない。

プレミア歴代最強コンビになれるか?

 さすがにケインもバーンリー戦のアシストは「ああいうのは珍しい」と述べていた。それでも2人が阿吽の呼吸で、もはや互いがどこにいて、どう動いて、何をしようとしているのか感じ合いながらプレーしているのは間違いない。

 ソン・フンミンは試合後、「誰がゴールを決めるかは全く重要ではない。最も重要なのはチームであって、共に戦い、助け合うこと。僕たちはピッチ上で互いに愛情を感じながらプレーしているのがわかるだろう。家族のように助け合うべきだ。もちろんこういう難しい試合に勝って、ゴールを決められたのは嬉しい。3ポイントをロンドンに持ち帰ることができるからね。ベリー・ハッピー・マンデー!」と笑顔で勝利の喜びと手応えを語った。

 ランパードとドログバ、アンリとピレスなどのコンビも素晴らしかったが、ソン・フンミンとケインは2人とも本質的にはストライカーという違いがある。

 1994/95シーズンに優勝したブラックバーン・ローバーズには2人で49得点を挙げたアラン・シアラーとクリス・サットンという名コンビがいた。1998/99シーズンにはマンチェスター・ユナイテッドのドワイト・ヨークとアンディ・コールが2人で53得点を奪ってリーグタイトル獲得に大きく貢献した。この年、ユナイテッドはプレミアリーグ、FAカップ、UEFAチャンピオンズリーグの3つを制し、“トレブル”を達成している。

 頂点に立ったチームには、屋台骨となるストライカーコンビがいたのである。韓英のエースたちは昨季のリーグ戦で合計29得点を奪った。今季は間違いなく、2人でもっと多くのゴールを決められる。

 まずはランパード&ドログバの記録を更新し、さらにヨークとコールのゴール数を超える。そうしてソン・フンミンとケインは歴代最強となり、プレミアリーグを席巻してきた名コンビの歴史を塗り替えられるだろうか。

(文:舩木渉)