エースの復帰と勝利

ラ・リーガ第8節、ビジャレアル対バジャドリードが現地時間2日に行われ、2-0でビジャレアルが勝利した。直近3試合に先発出場していた久保建英は、64分からピッチに立ったが得点には絡めず。今季初ゴールを決めたサミュエル・チュクウェゼらとの2列目のポジション争いはさらに激しくなりそうだが、そのカギを握るのはゴールにつながるプレーではないのかもしれない。(文:加藤健一)
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 10月のスペイン代表での活動中にハムストリングを負傷したジェラール・モレノはこの試合で復帰を果たした。2トップの一角でスタメンに名を連ね、チームもエースの復帰を2-0の勝利で祝福している。

 ビジャレアルは試合開始からゲームを支配した。ボールを動かし、奪われても鋭いプレッシングでボールを奪回。バジャドリードはここまで未勝利で最下位に沈んでいるが、前半はその不調を象徴するかのように何もできなかった。

 先制点はバジャドリードの一瞬の隙から生まれた。ルーズボールを回収したバジャドリードがボールをつなごうとしたところで、ペドラザがインターセプト。そのまま持ち上がってゴール前に折り返し、サミュエル・チュクウェゼがダイレクトでゴールに流し込んだ。

 ジェラール・モレノが右に張り、チュクウェゼが中央にポジションを取っていた。パコ・アルカセルが両センターバックを引き連れ、ジェラール・モレノがサイドに張っていたことでバジャドリードの左サイドバックは絞り切れなかった。この2人の動きによって危険なエリアにいたチュクウェゼをフリーにしてしまった。

2列目の選手に求められる役割

 チュクウェゼはこれまで、右サイドに張ってプレーすることが多かった。スピードとドリブルという特徴はタッチライン際をスタートポジションにしたほうが発揮しやすい。

 しかし、この試合ではジェラール・モレノとポジションを入れ替わってパコ・アルカセルの背後に潜んだり、セットプレーからの流れではあるが、16分のシーンのように左サイドに張るシーンもあった。これまでとは異なるエリアで結果を残したことで、ビジャレアルとしても戦い方に幅が生まれるはずだ。

 久保建英とチュクウェゼについてウナイ・エメリ監督は以前、「エリア内でより効果的なパスやフィニッシュを見せてほしい」と言っていた。「2列目の選手に(ゴールが)生まれたことが重要だ。サム(チュクウェゼ)にゴールが生まれて満足している」と指揮官も称えている。

 そのチュクウェゼに代わって久保は64分にピッチに立った。右サイドだけでなく、83分からはトップ下でもプレー。84分にはセンターサークル付近からアタッキングサードまでボールを運び、ペナルティエリア内でリターンパスをもらったが、左足のシュートはGKに防がれた。チュクウェゼに負けじと決定機を生み出したが、結果につなげることはできなかった。

「信頼を失うのは一瞬、取り戻すのは一生」

 練習や試合を通して指揮官の信頼度は上下する。もちろん、結果につながらなかったとしてもいいプレーは賞賛され、悪いプレーは咎められる。そして、マイナスになった瞬間に信頼を失い、出場機会がなくなる。「信頼を失うのは一瞬、取り戻すのは一生」という格言がある。

 久保が信頼を失いかねないプレーが81分にあった。後ろ向きでボールを受けた久保は出しどころに迷い、バックパスが相手に渡ってしまった。結果的に事なきを得たものの、失点につながっていてもおかしくないプレーだった。

 久保は出場時間平均のボールロスト数が他のアタッカー陣に比べて多い。判断のミスはこの試合に限ったことではない。粗探しをしているわけではなく、こういうプレーによって台無しになってしまう。

 モイ・ゴメスは今季ここまで得点もアシストもないが、リーグ戦の全試合に先発している。攻撃から守備への切り替えが速く、押し込まれた際にはディフェンシブサードまで戻って献身的に守備に加わる。軽率なミスやボールロストも少ない。指揮官の信頼度を下げるようなプレーが少なく、得点やアシストがなくても計算が立つ選手は必要とされる。

 久保はスィヴァススポル戦で大活躍を見せたが、チュクウェゼも負けじと結果を残し、UEFAヨーロッパリーグでゴールを決めた18歳のジェレミ・ピノも虎視眈々とポジションを狙っている。若い選手たちのポジション争いは、チームにとっては追い風となるだろう。それだけに、指揮官の信頼を失いかねないミスだけは避けたいところだ。

(文:加藤健一)

【了】