マンUが苦しんだエバートンの狙い

 プレミアリーグ第8節、エバートン対マンチェスター・ユナイテッドが7日に行われ1-3でアウェイチームが勝利している。カルロ・アンチェロッティ監督は対ユナイテッド用の狙いをいくつか準備してきていたが、結果的には完敗を喫することに。一体なぜ。(文:小澤祐作)

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 イスタンブール・バシャクシェヒルに負け、再びマンチェスター・ユナイテッドに向かい風が吹いていたが、やはり彼らはそんな時にこそ強い。オーレ・グンナー・スールシャール監督の「生命力」は恐るべしである。

 結果的にエバートンを3-1で下すことになったが、前半序盤はホームチームの狙いにかなり苦しんでいた。

 右サイドのハメス・ロドリゲスは自慢の左足を駆使して大きくサイドを変えてくる。ユナイテッド守備陣は当然ながら横へスライドするが、そのことで生まれる一瞬のギャップをエバートン側に突かれていたのだ。

 とくにエバートンの左サイドは脅威だった。リシャルリソンこそ不在だが、ブラジル人アタッカーのベルナルジもドリブルの切れ味は抜群。そこへサイドバックのリュカ・ディーニュも懸命なランニングで絡んでくる。ここを阻止するのは容易ではなかった。

 6分にはハメスからディーニュへ展開。ベルナルジにボールを預け、フランス人レフティーは縦へ。そこにはファン・マタとアーロン・ワン=ビサカが対応していたが、二人は深さを取るディーニュを警戒。その瞬間ベルナルジは中へと切り込み、最後はクロスでチャンスを演出している。

 その他の場面でも、ベルナルジが仕掛けワン=ビサカをつり出し、プレスバックが間に合わないマタを置き去りにしたディーニュが今度は内側のスペースを利用するなど、左サイドは柔軟な攻めをみせていた。とくにベルナルジは見事なゲームへの入り。リシャルリソン不在を感じさせない序盤だった。

 エバートンのもう一つの狙いは、強さと跳躍力のあるドミニク・キャルバート=ルーウィンをヴィクトル・リンデロフにぶつけ、競り勝ったところで一気に押し込むというもの。非常にシンプルなものだった。

 しかし、このシンプルな狙いこそが先制点に繋がっている。ロングボールをキャルバート=ルーウィンが頭で落とし、最後はそれを拾ったベルナルジがシュートを流し込んだ。巨漢ハリー・マグワイアを避け、対人であまり強さを発揮できないリンデロフを狙ったエバートン側の勝利と言える。

共通した2得点

 そして、カルロ・アンチェロッティ監督は対ユナイテッド用の守備の狙いもしっかりと用意していた。

 ユナイテッドの弱点は明白である。引いた相手に対し攻め切れないということだ。チャンピオンズリーグ(CL)でもアグレッシブな守備を披露したRBライプツィヒには5-0と大勝したが、引いてきたバシャクシェヒルには1-2と敗北している。RBライプツィヒのFWユスフ・ポウルセンが話す通り、ユナイテッドは相手の「ハングリーさを利用」するのがうまい。

 エバートン側もそれを十分に理解していたのだろう。ボールを持つユナイテッドに対し前からプレスを与えるのではなく、4-5-1のリトリートを用いたのだ。

 しかし、その狙いは裏目に出た。

 エバートン側は確かに自陣でブロックを築いていたが、守備の「精度」という部分で物足りなさを露呈していた。ボールの奪いどころが定まらず、ユナイテッドの攻撃を停滞させるどころか、危険な場面を多々作られた。

 結果的にエバートンは前半のうちに2点を失うのだが、その2失点は共通した形で起こってしまった。

 運動量抜群であらゆるエリアに顔を出せるアブドゥライ・ドゥクレは相手のボランチを警戒してか、ポジショニングが少し前目となっていた。そうすると、もう一人の中盤アランの脇が空く。エバートンはそこを利用されたのだ。

 1失点目は前に出たドゥクレが自身の背後、アランの右側をマタに突かれサイドに展開。クロスをマイケル・キーンとメイソン・ホルゲイトの間に放り込まれ、最後はブルーノ・フェルナンデスに頭でゴールネットを揺らされている。

 そして2失点目。ハーフウェーライン付近でフレッジがボールを持つ。この時ドゥクレは少し前にポジショニングしていたが、その後ろを今度はB・フェルナンデスに突かれた。脇を突かれたアランは懸命に戻るが間に合わない。最後はサイドに展開され、再びキーンとホルゲイトの間にクロスを放り込まれる。これに対し誰も反応できず、ボールはゴールへ吸い込まれた。

 不思議なほど同じ形での失点。機動力のあるドゥクレがリトリートの中で少し動きすぎてしまった点、そこをチームとしてカバーできなかった点、クロスに対しての両センターバックの対応など、すべてが曖昧だった。

 とくにライン間で仕事ができるB・フェルナンデスを擁するユナイテッドにこのような守備精度は致命的。アンチェロッティ監督も試合後「問題は自分たちが得点した後にうまく守備が出来なかったこと」、「我々はコンパクトではなかったし、彼らにライン間でプレーする機会を与えすぎてしまった」と守備面に関して反省を述べている。

躍動したダブルボランチ

 さて、そんなエバートンの曖昧な守備を見逃さず3得点を奪ったユナイテッドだが、マン・オブ・ザマッチは間違いなくブルーノ・フェルナンデスだろう。2得点1アシストと全得点に絡む大活躍で、ホームチームを恐怖に陥れた。

 そんなB・フェルナンデスをサポートした二人の戦士、スコット・マクトミネイとフレッジの活躍も見逃せない。エバートンに勝利するうえで、彼らの存在は不可欠だったと言えるだろう。

 ライン間で仕事できるB・フェルナンデスに、フレッジとマクトミネイの両者は効果的なボールを送り続けた。とくに2点目が生まれるきっかけとなったフレッジの斜めのパスは見事の一言。マクトミネイも中距離の正確なパスで何度か攻撃を加速させている。データサイト『Who Scored』によるパス成功率はフレッジが91%、マクトミネイが86%。キーパスも前者2本、後者1本と申し分ない。

 もちろん、守備面での貢献度も絶大。フレッジは前半序盤に左サイドをベルナルジにドリブルで突破されピンチ、と言う場面で見事なカバーリングをみせるなど、集中力高く対人、そしてエリアで勝負できていた。マクトミネイはより対人戦で強さを発揮。フィジカルに優れるアラン、ドゥクレらにも劣ることがなかった。

 より機動力のあるフレッジと対人戦で潰せるマクトミネイのコンビは非常にバランスが取れている。中盤の質で優位に立つことができたのは、彼らの守備、そして何よりも攻撃での貢献があったからに他ならない。スールシャール監督も試合後に「今日のような気持ち、意識、アプローチで毎試合に臨めれば、我々は厄介な存在になれる。中盤でスコットとフレッジが勝ったタックルもそうだが、今日のチームはタイトで、コンパクトで、ボールを奪い、スペースを見出せた」と話す。アンチェロッティ監督からしても、彼らの活躍は計算外だったのではないだろうか。

(文:小澤祐作)