ピッチの積雪に苦しめられ…

 現地15日にブンデスリーガ第21節が行われ、バイエルン・ミュンヘンとアルミニア・ビーレフェルトが3-3で引き分けた。昇格組のビーレフェルトは絶対王者バイエルンを追い詰めたが、代償として堂安律を負傷で欠くことに。なぜ合計6つものゴールが生まれた乱打戦になってしまったのだろうか。(文:舩木渉)

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 史上2クラブ目の6冠を達成してドイツに戻ってきたバイエルン・ミュンヘンは、休む間もなく次なるタイトル獲得に向けた戦いに挑んでいる。

 FIFAクラブワールドカップ決勝が行われたカタールからミュンヘンに到着したのが現地12日の朝。それから2日間のオフを挟み、1日だけ練習して現地15日のアルミニア・ビーレフェルト戦に臨んだ。

 夏場のような気候のカタールから真冬のドイツに戻って、コンディション面への影響が心配されていた。実際、ビーレフェルト戦ではヨシュア・キミッヒやバンジャマン・パヴァールがベンチスタート。カタール遠征中に新型コロナウイルス陽性と判定されたトーマス・ミュラーも欠場となった。

 結果は3-3のドローとなった。昇格組に6冠の絶対王者が不覚をとったということになるが、今回に限っては一部の主力不在が主な原因ではない。バイエルンを苦しめたのは、ミュンヘンに降った雪だった。

 試合前からしんしんと降り続けていた雪は、キックオフの笛が鳴ってからどんどん勢いを増していく。もちろんピッチは真っ白に。途中でボールはオレンジ色のものに変更。前半途中に2度、降雪で見えなくなったラインを目立たせるための雪かきが試合を中断して行われるほどだった。

 短いグラウンダーのパスをつないで攻めるバイエルンにとって、雪で重くなったピッチは強敵だった。パスが走らず、攻撃のテンポが上がらない。予想だにしないミスも起こる。気力も体力も奪われていく過酷な環境だった。

 一方、ビーレフェルトもボールポゼッションを重視する傾向にあるが、バイエルンに圧倒されるのは想定内。ならばと降雪の影響でリズムに乗れない相手の隙を突いて、数少ないチャンスを生かして見せた。

 開始9分、スローインの流れからバイエルンのクリアボールを拾ったマルティン・プリートルが、すかさずゴール前に縦パスを入れる。そしてミシェル・フラップがパスを受けて素早く反転。GKマヌエル・ノイアーの守るゴールに先制弾を突き刺した。冬にアンデルレヒトから加入した長身のオランダ人MFは、相手がディフェンスラインを上げてボールに意識を向けたタイミングを利用してフリーになっていた。

バイエルン怒涛の反撃

 さらに37分、今度はフラップのコーナーキックにセンターバックのアモス・ピーパーが頭で合わせ、ビーレフェルトに追加点をもたらす。ブンデスリーガデビューのフラップは前半だけで1得点1アシストと大きなインパクトを残し、ビーレフェルトは絶対王者バイエルン相手に2点リードを手にして前半を終えた。

 ところが、雪によるアドバンテージは後半開始とともに消えてしまった。降雪は前半の終わり頃には小康状態となり、ハーフタイムにピッチの除雪作業も完了。後半が始まる頃には元どおりの緑色が姿を現していた。

 積雪がなくなると、バイエルンも本来の強さを取り戻す。後半開始早々の48分、ダビド・アラバの浮き球パスに抜け出したロベルト・レバンドフスキが、技ありのボレーシュートを叩き込んでバイエルンが1点を返す。

 直後の49分に速攻からビーレフェルトのクリスティアン・ゲバウアーに3点目を奪われるも、57分にレロイ・ザネのクロスをコランタン・トリッソが頭で押し込み再び1点差に。そして69分にはアルフォンソ・デイビスが、クリアのこぼれ球を豪快なボレーシュートでビーレフェルトのゴールに突き刺した。

 雪という大きな足かせが外れたバイエルンの強さは本物だった。前半はシュート「6本」だったのが、後半は「13本」と倍以上に。枠内シュート「3本」で3得点したビーレフェルトのしたたかさは称賛されるべきだが、後半のバイエルンにはやはり王者の威厳があった。

 ハンジ・フリック監督は「前半は多くのことがあってうまく守れなかったが、後半にチームは素晴らしいメンタリティを示した。クレイジーだったね。今日は3-3という結果に満足しなければならない」とバイエルンの選手たちを称えた。

 10日あまりでドイツとカタールを往復して4試合をこなす過密日程に加え、心身ともに最も厳しい状況で降雪や寒さの影響を受けた。この過酷さは察するにあまりある。後半に3つのゴールを奪って同点に追いつくまで、もはや勝利への執念ともいうべき狂気的な勢いが感じられた。

堂安律が負傷。奥川雅也にはチャンス?

 リーグ戦の5連勝が途切れ、2位のRBライプツィヒとの差は5ポイントに縮まったが、簡単に追いつかれることはないだろう。UEFAチャンピオンズリーグも再開して日程はさらに過密になっていくが、ドイツ国内での強さはいまだ圧倒的だ。

 一方、ビーレフェルトを率いるウーヴェ・ノイハウス監督は「勝ち点を獲得できたことには満足している。試合運びは我々にとって非常にポジティブなものだった。前半は陣形をしっかりと保って、カウンター攻撃を狙っていた。その結果、2-0とリードすることができた」と王者バイエルンに肉薄したチームの戦いぶりを称えた。

 現在18チーム中16位で残留争いに巻き込まれているビーレフェルトにとって、勝ち点は1ポイントでも貴重だ。それをバイエルンから、しかもアウェイでもぎ取れたというのは大きな成果だろう。冬の新戦力であるフラップも存在感を発揮し、チームを勢いづけてくれそうだ。

 だが、心配事もある。前半の40分にドリブルでアルフォンソ・デイビスとマッチアップした際、堂安律がプレーをやめて自ら交代を要求。41分にゲバウアーとの交代を余儀なくされた。座り込む約5分前にも右ひざのアイシングを受けていたため、おそらく同箇所を痛めたと思われるが、攻撃の軸だった日本代表FWの離脱はあまりに痛い。

 冬の新戦力でまだビーレフェルトでは実戦デビューできていない奥川雅也にチャンスは広がるかもしれないが、ノイハウス監督も堂安の離脱には頭を悩ませることになるだろう。今季2度目の3得点で王者に肉薄し、ポジティブな収穫を持ち帰ることに成功したビーレフェルトも大雪の試合で代償を支払うことになった。

 バイエルンが苦しんだのも、ビーレフェルトが堂安を欠くことになったのも、ぜんぶ雪のせいだ…と思いたい。画面越しに見ていても、サッカーの試合を開催するにふさわしい天候でないのは間違いなかった。

(文:舩木渉)