久保建英はトップ下で先発

ラ・リーガ第30節、ヘタフェ対カディスが現地時間10日に行われ、0-1でヘタフェは敗れた。久保建英は先発出場したものの、後半開始からわずか6分で交代。ホセ・ボルダラス監督は久保のパフォーマンスを評価しているが、それが報われる試合はなかなか訪れない。(文:加藤健一)
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 ヘタフェは勝ち点2差で上回るカディスとの直接対決を落とした。順位は暫定で15位のままだが、降格圏とは4ポイント差。ヘタフェはレアル・マドリード、バルセロナ、ビジャレアルとの対戦を残しており、残留争いに両足を突っ込んでいる。

 久保建英は前節のオサスナ戦で約10分間の出場に留まり、ボールを一度も触ることができなかった。プレー時間が短かったのは、日本との往復による疲労を考慮してのものだったのだろう。代表戦前のエルチェ戦でアシストを記録し、U-24アルゼンチン代表戦では第2戦で2アシストを記録。いい流れでヘタフェに戻ってきた久保は、カディス戦で2試合ぶりに先発している。

 エルチェ戦では[4-2-3-1]の右サイドハーフを務めたが、カディス戦ではカルレス・アレニャが右サイドハーフを務めている。アレニャと入れ替わる形で、久保はトップ下で起用された。

 2人は頻繁にポジションを交換しながらプレーしていたが、前半の半分を終えたあたりからスタートポジションから久保が右、アレニャがトップ下に変えた。右サイドでボールを持った久保は可能性を感じさせるプレーを見せたが、ボックス内で決定的な仕事をすることができず、前半をスコアレスで終えている。

 久保としても、ヘタフェとしても悪くない前半だった。敵陣で過ごす時間も長く、相手を上回る8本のシュートを放った。しかし、後半開始からわずか5分が経ったところで、久保は下げられてしまった。

「孤立していた」、51分に交代された理由

 ホセ・ボルダラス監督は試合後、「タケ(久保)にとって最初の方は難しかったが、とても良いパフォーマンスを見せてくれた」と評価している。では、なぜ51分という早い時間に下げられたのだろうか。

 その理由は、久保が下がった後の40分間を見ればわかった。相手のクロスがディフレクションしてダビド・ティモールのオウンゴールという形で失点したが、後半の主導権を握っていたのはヘタフェだった。リードしたカディスが引いて守ったこともあるが、久保が下がった後はシュート本数でヘタフェは12対2と圧倒している。

 アンヘル・ロドリゲスが久保に代わって入ったことで、ヘタフェは前線にタメができた。ハイメ・マタとアンヘルの2トップに、サイドハーフのアレニャとククレジャが有機的に関わる。久保がプレーした時間帯にはあまりできなかった厚みのある攻撃を繰り返した。

「スコアボードを見るとこの交代は成功していないように見えるが、フットボールでは起こることだ」と指揮官は前置きしつつ、「我々はより敵陣へ顔を出していた。もし得点できていれば勝てた可能性もあっただろう」と手応えを感じていた。

 ボルダラス監督は久保の交代について、「これは戦術的な交代で、トップの存在感が不足していた。ハイメ(・マタ)は孤立していた」と分析している。戦術的なかみ合わせを優先させた交代だった。

久保建英が報われない世界線

 久保のプレーが悪くなかったというのは、スタッツにも表れている。データサイト『Whoscored』によれば、チーム最多となる2回のドリブルを記録し、パス成功率でもチーム平均を上回った。2本のシュートはともにブロックされたが、3回のタックルに加えてインターセプトも1度マーク。51分間で下がったが、攻守に渡って貢献していた。

 活躍できなくて替えられるならまだ納得できる。しかし、一定のパフォーマンスを見せたのに、それがチームの成果につながらなかった。本人としてはどうしようもない分、こちらの方が状況としては苦しい。この試合がたまたまそういう試合だっただけならばいいが、これがスタンダードになるとどうしようもなくなる。

 カディスのように力関係が拮抗する相手であれば、この日のようにある程度ボールを持つことができる。マウロ・アランバッリとネマニャ・マクシモビッチのダブルボランチがボールを落ち着かせることができれば、テクニックのある2列目の3人が活きる状況は多くなる。

 しかし、ヘタフェは先述の通り、バルセロナやレアル・マドリードといった相手との対戦を控えている。当然、ボールを持たれる時間は長くなるだろう。ヘタフェはボールを持っても前線に蹴る回数が増える。そのとき、マタの相棒としてFWを入れた方が久保を起用するより合理的だ。

 自身の良さを出そうとすれば、チームが活きない。久保は理想と現実の間で板挟みとなってしまった。自身の奮闘が報われない世界線でプレーを続けている。

(文:加藤健一)

【了】