運にも見放されたドロー

 プレミアリーグ第32節、アーセナル対フルアムが現地時間18日に行われ、1-1のドローに終わっている。アーセナルは「勝利に値した」。しかし、結果的には勝ち点2を失うことになっている。本当に改善すべきポイントはどこにあるのだろうか。(文:本田千尋)

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“痛恨のドロー”を演じた。現地時間18日に行われたプレミアリーグ第32節。アーセナルは降格圏でもがくフルアムに対し、一見ボールを保持して優勢に試合を進めながら、58分に与えたPKをモノにされてリードを許す。それまでフルアムが放った枠内シュートは1本だった。

 しかし、時に7バックにもなる相手に苦しみながら、ガナーズを敗戦の危機から「救い上げた」のは、U-21イングランド代表FWだった。

 試合が終わる寸前の97分、最後とも言えるコーナーキックのチャンス。ブカヨ・サカが蹴ったボールを、攻撃参加したGKマシュー・ライアンが頭でフリック。逸れたボールをダニ・セバージョスがシュート。GKアルフォンス・アレオラが弾いたところに、エディ・エンケティアが詰めて、起死回生の一撃を決めた。

 U-21イングランド代表の主将は、試合後に次のようなコメントを残した。

「1ポイントをチームのために救い上げたのは素晴らしいことだ」。

 しかし、安堵のエンケティアとは対照的に、ミケル・アルテタ監督はフルアム相手の1-1に納得していないようだ。

「アーセナルは疑いようもなく3ポイントに値した。創り出した複数のチャンスを振り返れば、我々はトータルで勝ちに値した。2つのゴールが却下され、与えた枠内シュートは1本だ」。

 スペイン人の指揮官がこう振り返ったように、どん引きのフルアムに対してアーセナルは18本のシュートを浴びせてチャンスの数で圧倒したが、41分のセバージョスのゴールはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の“際ど過ぎる”判定で取り消されるなど、運に恵まれないところもあった。“内容”だけを振り返れば、確かにアルテタ監督の言うとおりに「トータルで勝ちに値したのは」「疑いようもなく」アーセナルだ。

「内容」という言葉の中に落とし穴が潜んでいる

 だが、どれだけボールを保持してどれだけシュートを打とうとも、ゴールを決めなければ勝てないのがサッカーであり、逆に言うと、どれだけボールを持てなくてどれだけシュートを打てなくても、ワンチャンスをモノにしてしまえば勝てるのがサッカーである。そのように考えると、敗戦の後に“内容”に手応えを感じることが、果たして“前進”に繋がるかどうかは、熟考すべきところなのかもしれない。

 決してアルテタ監督にケチをつけるわけではないが、アーセナルに限らず、一般的にサッカーの“内容”と“結果”は必ずしもリンクしないところがある。特にポゼッション・スタイルを嗜好するチームでは、敗戦の後に「内容は悪くなかった」という弁が飛び出しがちだ。

 しかし、その「内容」という言葉の中に落とし穴が潜んでいるのではないだろうか。つまり、ボール支配率や創り出した決定機の数に満足してしまうことで、本当に改善すべきポイントを見逃しがちになってしまうところもあるのではないか――。

 では、フルアム戦のアーセナルを振り返って「本当に改善すべきポイント」とは何だろうか。

再考すべきは…

 1つは、“ジャカの左SB起用”だ。

 今月3日のリバプール戦で、左SBの主軸キーラン・ティアニーが負傷離脱。以来、直後のヨーロッパリーグ(EL)スラヴィア・プラハ戦はセドリック・ソアレスが同ポジションに入ったが、1-1のドローに終わると、ここ2試合は本職がボランチのグラニト・ジャカが左SBを務め、チームも複数得点で連勝した。しかし今回のフルアム戦を振り返ると、“ジャカの左SB起用”が効果的だったとは言い難い。

 連戦で疲労の影響もあったのか、マイボール時に素早くポジションを上げてビルドアップに参加することが難しいところがあったようだ。フルアムがどん引きしてゴールを固めた時には、ジャカもポジションを上げてボール回しに参加し、チャンスを演出する場面もあったが、一方でポジショニングに戸惑っている場面もあった。

 おそらくアルテタ監督としては、ボランチとしてのビルドアップ能力を基に偽SBの役割を託したのだろう。だが、この気性の荒いスイス代表MFは、ジョアン・カンセロのように機動力に優れているわけではないので、上がった中盤でセバージョスらとポジションチェンジをすることまでは難しいようだ。今後も“ジャカの左SB起用”を続けていくかどうかは、再考の余地があるだろう。

 降格圏にいるフルアムと“痛恨のドロー”を演じた時点で、アーセナルは9位。後に試合を控えているリーズやアストン・ヴィラの結果次第では、さらに順位を落とす可能性もある。

 リーグ戦の最終結果で来季もヨーロッパの大会に参加することは困難な状況になりつつあるが、まだ今季のEL制覇の可能性は残されている。決して試合毎の“内容”に満足することなく、“前進”したいところだ。

(文:本田千尋)