F・トーレスの穴を埋めるどころか…

 リバプールはイングランドが誇る名門クラブで、これまで数々の著名な選手を獲得してきた。額面通りの活躍を見せた選手もいれば、期待を裏切った選手もいる。ここでは、2001年以降に加入した選手の中から、チームを大きく変えた選手を紹介する。※移籍金などのデータは『transfermarkt』を参照

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FW:ルイス・スアレス
生年月日:1987年1月24日
移籍金:2650万ユーロ(約32億円)
在籍期間:11年冬〜14年夏
リーグ戦成績:110試合69得点39アシスト

 2011年冬、リバプールはフェルナンド・トーレスがチェルシーに活躍の場を移したことで莫大な移籍金を手に入れている。そのお金を使って獲得したのが、ニューカッスルで活躍していたアンディ・キャロル、そしてアヤックスでプレーしていたルイス・スアレスの二人だった。

 当初期待されていたのはキャロルの方である。リバプール加入前からプレミアリーグで活躍していたので、“わかりやすかった”という点が大きいだろう。しかし、スアレスはその期待を良い意味で裏切っている。プレミアリーグデビュー戦で得点を決めると、その後もコンスタントに得点を生産。2年目にはさっそくリーグ戦二桁得点を記録した。

 キャロルが期待を裏切る中、スアレスの凄みはどんどんと増していく。2012/13シーズンにはリーグ戦20得点という大台を突破し、スティーブン・ジェラードに説得され残留した2013/14シーズンはPKを一回も蹴らずになんと31得点17アシストを記録。リバプールの選手としては1998/99シーズンのマイケル・オーウェン以来となるプレミアリーグ得点王に輝いた。なお、スアレスはヨーロッパ・ゴールデンシュー、さらにPFA年間最優秀選手賞も受賞している。

 スアレスは2014年、かねてより憧れと話していたバルセロナに移籍。結果的にリバプールには3シーズン半在籍することになったが、公式戦133試合の出場で82得点42アシストという圧巻の成績を残した。F・トーレスの抜けた穴を埋めるどころか、それ以上の存在になったと言える。

エジプトの爆速王

FW:モハメド・サラー
生年月日:1992年6月15日
移籍金:4200万ユーロ(約50億円)
在籍期間:17年夏〜
リーグ戦成績:139試合92得点34アシスト

 チェルシーやフィオレンティーナ、ローマでプレーしたモハメド・サラーは2017年にリバプールにやって来た。移籍金は4200万ユーロ(約50億円)とされているが、今思えばかなりお買い得な金額だったと言えるのかもしれない。

 爆発的なスピードと決定力の高さを武器に、サラーは瞬く間にユルゲン・クロップ監督率いるチームの「顔」となった。1年目でいきなりプレミアリーグ得点王に輝くと、2年目もゴールを量産し、フェルナンド・トーレスを抜いてクラブ史上最速でプレミアリーグ通算50得点に到達。最終的に2季連続で得点王に輝き、チャンピオンズリーグ(CL)でも5ゴールを叩き出すなど、ビッグイヤー獲得の立役者となっている。

 リバプールでの3シーズン目はプレミアリーグ得点王の座こそ逃したものの、34試合で19得点を挙げている。さらにアシストも「10」を記録するなど、クラブのプレミアリーグ初優勝の原動力となっていた。

 サラーは今季でリバプール在籍4年目となるが、すでにクラブの歴代得点ランキング・トップ10に名を連ねている。その10人の中で最も出場試合数が少ないのがサラーで、1試合あたりの得点数に関してはサラーが同10人中1位となっている。エジプト代表FWの獲得もまた、リバプールの歴史を動かしたと言えるはずだ。

記憶に残る司令塔

MF:シャビ・アロンソ
生年月日:1981年11月25日
移籍金:1600万ユーロ(約19億円)
在籍期間:04年夏〜09年夏
リーグ戦成績:143試合14得点14アシスト

 レアル・ソシエダの下部組織出身で、エイバルへのレンタルなどを経験しながら成長。2002/03シーズンには2部降格候補と思われたラ・レアルを2位に導くなど非凡なパフォーマンスを示し、その名を世に轟かせた。翌シーズン、チームはリーグ戦でこそ不調に喘いだが、チャンピオンズリーグ(CL)ではベスト16に進出。シャビ・アロンソはその立役者となっていた。

 ソシエダでの活躍があり注目の的となったMFは、2004年にルイス・ガルシアらと共にリバプールへ移籍。同年よりレッズの監督に就任したラファエル・ベニテスは当時「シャビはとてもクレバーだ。彼は長いパスも短いパスも上手く、力よりも技を持っている。彼は知的だから、いいプレーをするだろうね」とアロンソを評価。スティーブン・ジェラードと共に最高のMFになると信じていたようだ。

 そのベニテスの期待に応えるように、アロンソは中盤に君臨し躍動。激しいタックルが横行するプレミアリーグの中でもスペイン時代のようにエレガントにプレーし、繊細なパスを捌き続けてリズムを生み出すなど瞬く間にリバプールにおいて欠かせない存在となった。ミランとのチャンピオンズリーグ(CL)決勝ではPKのこぼれ球を押し込んで同点弾を見事マークし、大逆転優勝の立役者となっている。

 その後もリバプールで輝きを放ったアロンソ。2006/07シーズンのニューカッスル戦では自陣でボールを奪ってそのままロングシュートを蹴り込みゴールネットを揺らすなど、クラブ史に刻まれるスーパーゴールを決めている。最終的に2009年夏までリバプールに在籍したアロンソは、他の存在を凌ぐ派手さこそなかったが、とにかく巧く記憶に残る、そんな選手だった。

現代最高のセンターバック

DF:フィルジル・ファン・ダイク
生年月日:1991年7月8日
移籍金:8465万ユーロ(約102億円)
在籍期間:18年冬〜
リーグ戦成績:95試合10得点3アシスト

 2017/18シーズン前半、リバプールは開幕節のワトフォード戦でいきなり3失点し、マンチェスター・シティ戦では5失点、トッテナム戦で4失点と守備の脆さを露呈していた。そんなディフェンスラインを立て直すための補強ターゲットとなったのがフィルジル・ファン・ダイク。2018年、リバプールは8465万ユーロ(約102億円)という大金を費やしオランダ代表DFをチームの一員に加えている。

 当初は「高すぎるのでは?」という声もあったが、ファン・ダイクはすぐに自身の価値を証明。圧倒的な強さ、高さ、そして速さを武器に名だたるFWを完璧に封じ込め、さらに足元の巧さを駆使して攻撃面でも存在感を示している。その後もオランダ代表センターバックのパフォーマンスは際立つばかりで、リバプールのディフェンスラインは見事に引き締まった。

 2018年3月から約1年5ヶ月の間、ドリブルで一度も抜かれないといった信じられない記録を打ち立てたこともあった。こうしてピッチ上でハイパフォーマンスを維持し続けたファン・ダイクは「世界最高のCB」と称されるようになり、チャンピオンズリーグ(CL)とプレミアリーグ制覇に貢献。2019年にはUEFA欧州最優秀選手賞にも選出されている。

 元フランス代表のフランク・ルブーフは以前、「ファン・ダイクはリバプールを変えたと思っている。彼こそが(リバプールを)チャンピオンになれるチームにしたんだ」とコメントを残している。リバプールにとってこれ以上ない補強になったと言えるはずだ。

不屈のキャプテン

MF:ジョーダン・ヘンダーソン
生年月日:1990年6月17日
移籍金:1800万ユーロ(約22億円)
在籍期間:11年夏〜
リーグ戦成績:290試合27得点40アシスト

 リバプール在籍が長いため同クラブ一筋といった印象が強いが、もともとはサンダーランドで育った選手。レッズの一員となったのは2011年で、移籍金は1800万ユーロ(約22億円)となっている。

 ジョーダン・ヘンダーソンのキャリアは決して最初から輝いていたわけではない。2012年に就任したブレンダン・ロジャース監督の下では当初、事実上の戦力外扱いだった。実際、英『talk SPORT』には「ロジャース監督はヘンダーソンの才能を意識しておらず、監督就任直後には売却を望んでいた」と書かれている。さらに「フラムのクリント・デンプシーとのトレードが成立寸前まで進んだ」と伝えられているが、最終的にはヘンダーソン本人が残留を望んだため不成立になったという。

 そのような状況でもヘンダーソンは腐らず努力を重ね、徐々にリバプールで存在感を示すように。そして2015年、偉大なる先輩スティーブン・ジェラードから腕章を受け継ぐなど、クラブを代表する選手となった。

 リバプールはしばらくビッグタイトルとは無縁で、苦しい時期も味わっている。その中でもヘンダーソンは味方を鼓舞し続け、チームを牽引した。そんな同選手の努力が報われたのか、ユルゲン・クロップ監督に率いられたチームは近年急激に力をつけ、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ(CL)、FIFAクラブワールドカップなどを制覇。一時事実上の戦力外を通告されたヘンダーソンは、自らの手でトロフィーを天に掲げることができた。

 苦しい時期を経験したヘンダーソンだからこそ、リバプールという歴史あるクラブのリーダーを担うことができる。もし同選手が主将でなかった場合、同クラブはここまでの強さを手に入れることはできなかったかもしれない。クラブの新たな時代をリーダーとして築いてくれたという意味で、やはりリバプールにとって最高の補強になったと言えるはずだ。