「生命線であり、魂」だった偉大なキャプテン

マンチェスター・シティはイングランドを代表する強豪クラブで、これまで数々の著名な選手を獲得してきた。額面通りの活躍を見せた選手もいれば、期待を裏切った選手もいる。ここでは、2001年以降に加入した選手の中から、チームを大きく変えた選手を紹介する。※移籍金などのデータは『transfermarkt』を参照
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DF:ヴァンサン・コンパニ(元ベルギー代表)
移籍金:850万ユーロ(約10億円)
在籍期間:2008年夏〜19年夏
リーグ戦成績:365試合18得点9アシスト
代表通算成績:89試合4得点5アシスト

 マンチェスター・シティのカルドゥーン・アル・ムバラク会長は、ヴァンサン・コンパニを「極めて才能にあふれたスカッドの生命線であり、魂、心臓の鼓動だった」と評している。1つひとつのプレー以上に、チームに多くのものをもたらす偉大なキャプテンだった。

 コンパニがシティに加入したのは2008年の夏。アンデルレヒトの下部組織出身で、04年にはベルギー年間最優秀選手に選ばれた。06年夏からはハンブルガーSVで2シーズン在籍。コンパニが加入する前のシティは2部に降格したこともあり、コンパニが加入する直前のシーズンはプレミアリーグで9位という成績だった。

 コンパニの加入と同時期にシティはUAEの投資グループへと売却され、豊富な資金力を大型補強へと注入していった。コンパニは中盤とセンターバックを兼務する守備者からDFリーダーへと成長。11/12シーズンに主将に任命されると、優勝争いを演じるチームを引っ張った。優勝を争うマンチェスター・ユナイテッドとのダービーで決勝点となるゴールを決め、劇的なリーグ優勝の原動力となった。

 13/14シーズンに2度目のリーグ優勝を経験したが、30歳を境に負傷離脱も増えていく。出場機会は減っていたが、ペップ・グアルディオラ監督が作り上げるチームを支えた。コンパニは在籍11年で4度のプレミアリーグ、2度のFAカップ、4度のリーグカップ優勝を経験し、19年夏にシティを退団。古巣アンデルレヒトの選手兼監督を1年間務め、昨夏からは監督業に専念している。

<h2>在籍4年で3度目の優勝へ、勝てるチームへと変えた守護神

GK:エデルソン(ブラジル代表)
移籍金:4000万ユーロ(約48億円)
在籍期間:2017年夏〜現在
リーグ戦成績:142試合100失点
代表通算成績:11試合6失点

 ペップ・グアルディオラ監督がマンチェスター・シティに来た1年後に、エデルソンはポルトガルのベンフィカから移籍している。サンパウロからベンフィカの下部組織に移り、ローン移籍したリオ・アヴェで台頭。復帰したベンフィカでも正GKを務め、シティへとステップアップしている。6年という長期契約は異例の長さで、その1年後には契約期間をさらに2年延ばしている。

 最終ライン後方の広大なスペースをカバーする能力はグアルディオラ監督が求めていたものだった。1対1の局面で見せるショットストップや判断力にも優れ、ピンチを未然に防いでいた。類まれなる左足のキックは攻撃の起点にもなり、プレミアリーグでは通算2アシストをマークしている。グアルディオラ監督はチームにPK失敗が続いた際に、「私のチームで一番PKがうまいのはエデルソンだ」と言い、そのキックの精度と動じないメンタルを高く評価されている。

 シティはエデルソンが加入したシーズンからプレミアリーグ連覇を達成。今季もこのまま優勝すれば、エデルソンは在籍4年で3度目の優勝を経験することとなる。エデルソン加入後、シティの失点が試合数を上回ったシーズンはない。エデルソンは、攻撃的なスタイルを貫くグアルディオラ監督のチームを勝てる集団へと変えた。

<h2>グアルディオラ監督も称賛する左利きの司令塔

MF:ダビド・シルバ(元スペイン代表)
移籍金:2875万ユーロ(約35億円)
在籍期間:2010年夏〜2020年夏
リーグ戦成績:309試合60得点107アシスト
代表通算成績:123試合35得点32アシスト

 バレンシアが育んだ才能は、強豪へと成り上がるマンチェスター・シティの中心に据えられた。ダビド・シルバはシティで10年間を過ごし、4度のプレミアリーグ優勝と、2度のFAカップ、5度のリーグカップ優勝にチームを導いている。

 2008年にUAEの投資グループに買収されたシティは大型補強を繰り返していた。ダビド・シルバは10年夏に加入すると、1年目からチームの中心となった。11/12シーズンには17アシストを記録して、シティのプレミアリーグ初制覇に貢献。その後も毎年のように2ケタアシストをマークし、チームの司令塔として活躍を続けた。

 16/17シーズンから指揮を執るペップ・グアルディオラ監督はダビド・シルバをインサイドハーフで起用し、ケビン・デ・ブライネとともにアシストを量産した。狭いスペースでもボールを扱える技術と判断力を持ち、左足のキックは芸術的。グアルディオラ監督からは「私が見てきた中で最高の選手の1人だ」と称賛されている。

 スペイン代表ではEURO(欧州選手権)連覇とワールドカップ優勝を経験し、シティにも多くのタイトルをもたらした。キャリアの全盛期をシティに捧げたダビド・シルバは昨夏にシティを退団し、母国スペインへと戻った。1月には35歳となったが、レアル・ソシエダでも変わらぬテクニックと戦術眼を見せている。

<h2>指揮官とは確執も、強烈な個性で優勝へと導いたMF

MF:ヤヤ・トゥーレ(元コートジボワール代表)
移籍金:3000万ユーロ(約36億円)
在籍期間:2010年夏〜18年夏
リーグ戦成績:230試合59得点35アシスト
代表通算成績:86試合18得点15アシスト

 コートジボワール出身のヤヤ・トゥーレが、マンチェスター・シティに加入したのは2010年の夏。2007年夏にバルセロナに移籍したが、翌年にペップ・グアルディオラ監督が就任すると出場機会が減少する。アンカーでプレーすることが多く、慣れないセンターバックで起用されることもあった。

 190cm近くある体躯を活かしたフィジカルと高いテクニックを持つヤヤ・トゥーレは、シティで攻撃的なタスクを任されたことでポテンシャルを爆発させた。1年目から主力として活躍すると、2年目の11/12シーズンにはシティのプレミアリーグ初優勝に貢献。13/14シーズンにはMFながら20得点の大台に乗せ、2度目の優勝へとチームを導いている。

 名実ともにシティの中心として活躍したが、16年夏に状況が一変する。グアルディオラがシティの監督に就任すると、ヤヤ・トゥーレはUEFAチャンピオンズリーグのメンバーリストから除外された。ヤヤ・トゥーレの代理人に批判されたグアルディオラ監督はヤヤ・トゥーレを戦力外状態に。その後、ヤヤ・トゥーレが謝罪したことでチームに戻ることができたが、18年夏に契約満了によりシティを退団となった。

 確執が何度も報じられた両者だが、退団が決まった際にグアルディオラ監督は「我々がこの地位を確立できたのは彼の功績によるもの」とコメント。シティの歴史において、ヤヤ・トゥーレは重要な役割を果たした1人だった。

<h2>マンC史上最高のストライカー

FW:セルヒオ・アグエロ(アルゼンチン代表)
移籍金:4000万ユーロ(約48億円)
在籍期間:2011年夏〜現在
リーグ戦成績:273試合182得点54アシスト
代表通算成績:97試合41得点17アシスト

 11/12シーズンのプレミアリーグ初優勝から9年が経ち、当時の優勝を知るメンバーは次々とクラブに別れを告げている。パブロ・サバレタは17年夏、ヴァンサン・コンパニは19年夏、そしてダビド・シルバは20年夏に退団。そして今夏、初優勝を決めた試合で劇的なゴールを決めたセルヒオ・アグエロもクラブを去ることが決まった。

 アルゼンチン出身のアグエロはアトレティコ・マドリードのエースに成長し、2011年夏にシティに加入した。173cmと小柄だが、プレミアリーグの屈強なDFに負けない身体の強さと、どこからでもゴールを狙える技術があった。1年目から23得点を挙げてリーグ優勝へチームを導くと、14/15シーズンにはゴールデンブーツ(得点王)を獲得。昨季までの9シーズンで180得点をマークし、プレミアリーグにおける外国籍選手の最多ゴール記録を樹立している。

 公式戦通算258得点というクラブ歴代最多得点記録を持つアグエロは、4度のリーグ優勝をはじめとするシティの隆盛の象徴となった。昨季に負った膝の負傷や新型コロナウイルスの影響で、今季は思うような数字を残せていないが、アグエロが残してきた功績が色あせることはない。クラブ史に名を残すストライカーとして、今後も語り継がれていくだろう。

【了】