バルセロナ(2010/11シーズン)

サッカーの長い歴史の中で、後世に語り継ぐべきチームがある。その後の戦術に大きな影響を与えたチームや、金字塔とも呼べる成績を収めたチーム…。今回は2000年以降を彩ったスペインの5チームを紹介する。
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バルセロナ
2010/11シーズン成績
・リーガ・エスパニョーラ:優勝(勝ち点96/30勝2敗6分)
・コパ・デル・レイ:準優勝
・チャンピオンズリーグ:優勝
・スーペル・コパ:優勝
監督:ペップ・グアルディオラ
スタイル:ポジショナル

チャンピオンズリーグ決勝・マンチェスター・ユナイテッド戦スターティングメンバー
GK:ヴィクトル・バルデス
DF:ダニエウ・アウベス、ハビエル・マスチェラーノ、ジェラール・ピケ、エリック・アビダル
MF:セルヒオ・ブスケッツ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ
FW:ペドロ、リオネル・メッシ、ダビド・ビジャ

 バルセロナBの指揮官を1年務めたペップ・グアルディオラは、2008年夏にトップチームの監督に就任した。ラ・マシア(バルセロナの下部組織)出身の選手を積極的に登用し、1年目からリーガ・エスパニョーラ、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)、UEFAチャンピオンズリーグの3冠獲得を達成している。

 09年夏に獲得したズラタン・イブラヒモビッチは指揮官とそりが合わず、1年で退団。ヤヤ・トゥーレ、ティエリ・アンリ、ラファエル・マルケスらもチームを去っている。前線にはダビド・ビジャを加え、守備的MFのハビエル・マスチェラーノ、サイドバックのアドリアーノを獲得してスカッドに厚みをもたらした。

 それまでも中央でプレーすることは度々あったが、エースのリオネル・メッシはこのシーズンの途中から偽9番(ファルソ・ヌエベ)でのプレーが定着した。CLでは12ゴールを挙げて得点王に輝き、公式戦53ゴールという驚くべき数字を残している。

 グアルディオラ監督によって抜擢されたセルヒオ・ブスケッツに、アンドレス・イニエスタとシャビ・エルナンデスの中盤3人は不動。この年にリバプールから加入したハビエル・マスチェラーノはブスケッツの控えだったが、膝を負傷したカルレス・プジョルの代役としてセンターバックにコンバートされた。

 リーガでは第2節で初黒星を喫したが、そこからシーズン終盤まで無敗記録は続く。そして、大きな注目を集めたのはシーズン終盤のクアトロ・クラシコ。リーガ第32節、国王杯決勝、CL準決勝2試合がレアルとの顔合わせとなり、4試合が2週間半の間に行われた。

 初戦となるリーガは1-1のドロー。独走状態だったリーガで、優勝を手繰り寄せる勝ち点1だった。続く国王杯決勝ではメッシがペペにマンマークされて封じられ、延長戦の末に0-1で敗れた。しかし、CL準決勝ではアウェイの1stレグに2-0で勝利し、2ndレグも1-1で凌いだ。バルセロナは決勝でマンチェスター・ユナイテッドを破り、2年ぶりの欧州制覇を成し遂げている。

 翌シーズンはリーガ4連覇を逃し、宿敵ジョゼ・モウリーニョ監督のレアルに優勝を譲った。グアルディオラは就任から4年で退任。1年目の08/09シーズンはセンセーショナルだったが、10/11シーズンはグアルディオラが作り上げたチームが最も完成度の高さを見せたシーズンだった。

レアル・マドリード(2013/14シーズン)

レアル・マドリード
2013/14シーズン成績
・リーガ・エスパニョーラ:3位(勝ち点87/27勝5敗6分)
・コパ・デル・レイ:優勝
・チャンピオンズリーグ:優勝

監督:カルロ・アンチェロッティ
スタイル:ポゼッション

チャンピオンズリーグ決勝・アトレティコ・マドリード戦スターティングメンバー
GK:イケル・カシージャス
DF:ダニ・カルバハル、ラファエル・ヴァラン、セルヒオ・ラモス、ファビオ・コエントラン
MF:サミ・ケディラ、アンヘル・ディ・マリア、ルカ・モドリッチ
FW:ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド

 ペップ・グアルディオラ監督と舌戦を繰り広げたジョゼ・モウリーニョ監督は、11/12シーズンにリーガ・エスパニョーラのタイトルを獲得する。しかし、翌シーズンはスーペル・コパの1冠に終わり、マドリードを去ることに。2013年夏にやってきたのがカルロ・アンチェロッティだった。

 ガレス・ベイルを当時の最高額となる移籍金で獲得し、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドと「BBC」と呼ばれる強力3トップを形成する。ロナウドは公式戦51ゴールを挙げ、3人合計97得点という驚異的な破壊力を誇った。

 アンヘル・ディ・マリアは右ウイングから中盤へとポジションを移したことでアシスト能力が活かされた。他にもルカ・モドリッチやイスコ、中盤の底にはサミ・ケディラとシャビ・アロンソと、MFは層が厚かった。

 センターバックはセルヒオ・ラモスとペペが全盛期で、若いラファエル・ヴァランも控えていた。サイドバックはマルセロとレバークーゼンから復帰した若いダニ・カルバハルが台頭している。まさに定石とも言える布陣が揃っていた。

 リーガでは序盤にアトレティコ・マドリードとバルセロナに敗れるが、その後は勝ち点を重ねて一時は首位に躍り出る。しかし、バルセロナとセビージャに痛恨の連敗。3強による優勝争いで、レアルは直接対決で1度も勝てず。104得点はリーグトップだったが、38失点は3強の中で一番多かった。結局、勝ち点3差の3位という結果に終わっている。

 しかし、カップ戦ではその2チームにリベンジを果たす。まずはコパ・デル・レイ決勝ではバルセロナを2-1で下して1つ目のタイトルを獲得。ディ・マリアとベイルがゴールを決めている。

 UEFAチャンピオンズリーグではシャルケ、ドルトムント、バイエルン・ミュンヘンとドイツ勢を倒して決勝に進んだ。リーガで優勝したアトレティコとの決勝戦は、前半にアトレティコが先制する。しかし、セルヒオ・ラモスが起死回生のゴールで後半アディショナルタイムに追いつき、試合は延長戦に。延長後半にベイル、マルセロがゴールを決めて突き放すと、最後はロナウドがPKを決めて試合を決めた。

 アンチェロッティ監督の1年目は、コパ・デル・レイを制し、10度目のCL優勝を果たした。「BBC」と司令塔ディ・マリアの最適なバランスを見つけ、選手たちの個性を最大限に生かすアンチェロッティらしさがあふれたシーズンだった。

アトレティコ・マドリード(2013/14シーズン)

アトレティコ・マドリード
2013/14シーズン成績
・リーガ・エスパニョーラ:優勝(勝ち点90/28勝4敗6分)
・コパ・デル・レイ:ベスト4
・チャンピオンズリーグ:準優勝
・スーペル・コパ:優勝
監督:ディエゴ・シメオネ
スタイル:カウンター

リーガ・エスパニョーラ最終節・バルセロナ戦スターティングメンバー
GK:ティボー・クルトワ
DF:ファンフラン、ミランダ、ディエゴ・ゴディン、フィリペ・ルイス
MF:ガビ、チアゴ・メンデス、アルダ・トゥラン、コケ
FW:ダビド・ビジャ、ジエゴ・コスタ

 ディエゴ・シメオネが現役時代を過ごしたアトレティコ・マドリードに監督として戻ってきたのは、2011年の年末だった。「強くて献身的で、チャンスに速く動けるチームをつくりたい」という就任会見での言葉通り、チームにファイティングスピリットを植え付けた。1年目にUEFAヨーロッパリーグを制し、2年目はコパ・デル・レイで優勝。着実に力をつけるアトレティコは、バルセロナとレアル・マドリードに立ち向かえるだけの力をつけていた。

 迎えた13/14シーズン、アトレティコは開幕8連勝という好スタートを切った。序盤戦はバルセロナとの一騎打ちだったが、出遅れたレアルも追い上げて三つ巴となった。前半戦でアトレティコはアウェイでレアルに勝利し、ホームでバルセロナとスコアレスドローの激戦を演じた。

 DFラインはディエゴ・ゴディンが統率し、中盤では主将ガビがエネルギーを注入する。ジエゴ・コスタはリーガで27得点を挙げるだけでなく、ファーストディフェンダーとしての貢献度も高かった。リーガ最少の26失点をマークした鉄壁のディフェンスは、リーガ史上でも最高レベルだった。

 2位バルセロナとの最終節は引き分け以上で優勝が決まる状況だったが、アトレティコは絶体絶命のピンチに陥る。前半にエースであるジエゴ・コスタとアルダ・トゥランが負傷交代。両者は涙を流しながら、ピッチを後にした。先制を許したが、ガビのCKからディエゴ・ゴディンが頭でたたき込んだ。シメオネイズムを体現する2人によるゴールで試合を振り出しに戻したアトレティコは、自慢の堅守でバルセロナの猛攻をしのいだ。

 コパ・デル・レイでは準決勝でレアルに連敗して連覇を逃した。一方、UEFAチャンピオンズリーグでは決勝トーナメントでACミラン、バルセロナ、チェルシーを無敗で撃破。6試合で10得点だが、失点はわずか3と鉄壁の守備が光った。レアルとの決勝では、バルセロナ戦に続くゴディンのゴールで先制。しかし、試合終了間際に追いつかれ、延長戦で3失点を喫して力尽きた。

 それでも、リーガで9シーズン続いたバルセロナとレアルの2強時代に終止符を打っている。アトレティコが18年ぶり10度目のリーグ優勝を成し遂げたことで、その後のリーガは3強時代が始まることになる。

<h2>バルセロナ(2014/15シーズン)

バルセロナ
2014/15シーズン成績
・リーガ・エスパニョーラ:優勝(勝ち点94/30勝4敗4分)
・コパ・デル・レイ:優勝
・チャンピオンズリーグ:優勝
監督:ルイス・エンリケ
スタイル:ポゼッション&カウンター

チャンピオンズリーグ決勝・ユベントス戦スターティングメンバー
GK:マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン
DF:ダニエウ・アウベス、ハビエル・マスチェラーノ、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ
MF:セルヒオ・ブスケッツ、アンドレス・イニエスタ、イバン・ラキティッチ
FW:リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール

 バルセロナはこれまでいくつかの黄金期を迎えたが、ルイス・エンリケ監督が指揮を執った時代の強さは圧倒的だった。わずか1年でチームを去ったヘラルド・マルティーノ監督の後任として、ルイス・エンリケを迎えた。前年にネイマールを獲得し、エンリケ監督が就任した2014年夏にはルイス・スアレスを獲得している。

 リオネル・メッシを含めた3人のアタッカーをどう共存させるかはバルセロナの課題となったが、前線に並んだ3人はゴールを量産した。「MSN」結成1年目に3人がリーグ戦で決めたゴールは81。中央のスアレスが両ウイングの得点力の高さを引き出していた。

 13/14シーズン限りでカルレス・プジョルが現役引退し、ヴィクトル・バルデスも退団。GKはリーガがクラウディオ・ブラボ、カップ戦をマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンと併用。ジェラール・ピケとハビエル・マスチェラーノがセンターバックで、両サイドはジョルディ・アルバとダニエウ・アウベスという超攻撃的な布陣だった。

 アンドレス・イニエスタは怪我に苦しみ、ラストシーズンとなるシャビ・エルナンデスが控えに回る中、新加入のイバン・ラキティッチが中盤にフィットした。メッシとアウベスという超攻撃的な2人を右サイドに抱えるゆえ、ラキティッチは献身的にピッチの右サイドをカバーしている。

 これまでのようにボール保持率は高かったが、ハイプレスと即時奪回の強度は下がっている。しかし、ボールを奪えば素早く3トップに預ける。シャビとイニエスタが常時ピッチにいなかったこともあるが、ペップ・グアルディオラ監督就任以来積み上げてきたものとは異なるスタイルだった。

 このシーズンのバルセロナは本当に強かった。リーガは3月のエル・クラシコでレアル・マドリードに勝利して優勝に突き進んだ。コパ・デル・レイではアスレティック・ビルバオをメッシの2得点とネイマールのゴールで粉砕して2冠目。UEFAチャンピオンズリーグは12試合で26得点という数字で決勝まで駒を進めた。

 ラキティッチのゴールで開始早々に先制。55分に追いつかれたが、メッシのシュートをGKジャンルイジ・ブッフォンが弾いたところをスアレスが詰めて勝ち越した。試合終了間際にはカウンターからネイマールが決めて3-1。欧州最高峰の舞台でもMSNの威力は圧倒的で、4年ぶりとなるCL制覇を成し遂げた。

 フランク・ライカールト監督やグアルディオラ監督の時代も圧倒的な強さを見せたが、MSNの脅威を最大限に生かすことができたこのシーズンは、記憶にも記録にも残る年になった。

<h2>スペイン代表(2010年)

スペイン代表
2010年成績
・FIFAワールドカップ:優勝
・EURO予選:3勝0敗0分
・国際親善試合:4勝2敗1分
監督:ビセンテ・デル・ボスケ
スタイル:ポゼッション

南アフリカワールドカップ決勝・オランダ代表戦スターティングメンバー
GK:イケル・カシージャス
DF:セルヒオ・ラモス、カルレス・プジョル、ジェラール・ピケ、ジョアン・カプテビラ
MF:シャビ・アロンソ、セルヒオ・ブスケッツ、ペドロ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ
FW:ダビド・ビジャ

 2008年のEURO(欧州選手権)で、スペイン代表は優勝する。セルヒオ・ラモスやアンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャ、フェルナンド・トーレスら20代の選手たちが活躍。6試合で12得点を挙げ、ドイツ代表に勝利した決勝まで全勝でタイトルを獲得した。

 大会終了後にルイス・アラゴネス監督が退任。レアル・マドリードで銀河系軍団を率いて欧州制覇を2度達成していたビセンテ・デル・ボスケが後任に就いた。デル・ボスケはレアルでそうだったように、選手の特性を活かす形でチームの強化を図る。

 スペイン代表は08/09シーズンに3冠を達成したバルセロナのスタイルを取り入れた。システムこそバルセロナの4-3-3とは異なる4-2-3-1が当初の基本だったが、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツのトリオをスペイン代表でも重用した。

 迎えた2010年のワールドカップ本大会に、デル・ボスケはバルセロナから7人を連れてきた。センターバックはカルレス・プジョルとジェラール・ピケのコンビをそのまま持ち込み、中盤にもブスケッツ、シャビ、イニエスタを配置した。1トップのダビド・ビジャと交代要員だったセスク・ファブレガスも後にバルセロナに加わる。決勝ではペドロも加えた6人のバルセロナ所属選手が先発起用されている。

 初戦でスイス代表に思わぬ黒星を喫してしまうが、そこからが凄かった。極限までボール保持率を高め、相手に攻撃する時間を与えない。第2戦以降で失点を喫したのは第3戦のチリ代表戦のみ。リオネル・メッシのいるバルセロナのように大量得点を取ることはなかったが、ブスケッツとシャビ・アロンソの2人を同時起用したスペイン代表は安定感があった。

 決勝トーナメントではポルトガル代表、パラグアイ代表、ドイツ代表をすべて1-0で退け、決勝に進出する。激しい戦いとなったオランダ代表とのファイナルは、0-0のまま延長戦へ。109分にヨニー・ハイティンガが2枚目のイエローカードで退場となると、数的優位となったスペイン代表が決勝点を決める。セスク・ファブレガスからパスを受けたイニエスタがゴールネットを揺らし、スペイン代表を初のワールドカップ制覇を成し遂げた。

【了】