スペイン代表、攻撃の狙いは…

UEFAユーロ2020(欧州選手権)グループリーグE組第1節、スペイン代表対スウェーデン代表が現地時間14日に行われ、0-0の引き分けに終わった。なぜスペイン代表がゴールを奪えなかったのかを、様々な側面から考える。(文:加藤健一)
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 この試合で最も活躍した選手に贈られるスター・オブ・ザ・マッチ・トロフィーは、スウェーデン代表のビクトル・リンデロフに与えられた。4-4-2の守備ブロックを築くスウェーデン代表はスペイン代表を無失点に抑え、グループリーグ突破の可能性を広げた。

 立ち上がりからスペイン代表がボールを握り続けた。ボール保持率は前半が79%で、90分では75%。スウェーデン代表がボールを持つ時間はほとんどなく、カウンターの場面を除けばハーフコートゲームに近い。それでもスペイン代表はゴールネットを揺らすことができなかった。

 スペイン代表も17本のシュートを放っていたので、チャンスはある程度作れている。チームの共通理解として狙っていたのはポケットへの侵入。スウェーデン代表のDFラインは低かったので、シンプルに裏を取るのは難しい。そこで、1トップのアルバロ・モラタや右ウイングのフェラン・トーレスの斜めのランニングでディフェンスラインの背中を取る。もしくは、ジョルディ・アルバが果敢に攻め上がり、中央や右サイドからのパスを受ける。ミドルパスを織り交ぜながらDFの身体の向きを動かしていくことで、スペイン代表はゴールに迫った。

 スウェーデン代表はハーフウェイ付近からプレスを開始するが、コケが落ちてマルコス・ジョレンテを高い位置に上げる。コケは低い位置から何度かいいクロスを入れていた。さらに、反対サイドでフリーランニングを見せるジョルディ・アルバに展開し、危険なエリアに侵入するシーンも前半によく見られた形だった。

アクシデントをカバーする苦肉の策

 後半に入ると、左サイドからの攻撃の形も見えてきた。ペドリが前半より少し低い位置に下がってボールを触り、ジョルディ・アルバを高い位置に押し上げた。

 しかし、左から攻撃を組み立てると、右サイドがうまくいかない。さらに、攻撃がワンパターンになってしまったことで、スウェーデン代表も比較的対応しやすかったのかもしれない。アタッキングサードの連係が精度を欠いたというより、バリエーションの少なさが問題だったようにも見える。

 無得点に終わったもう1つの理由に、相手GKの活躍がある。背番号1を背負うロビン・オルセンは会心のパフォーマンスを見せた。データサイト『WhoScored』によると、この試合で5つのセーブをマークし、8.0という最高評価を与えられている。DFラインの集中力も90分途切れず、身体を張ってボールを跳ね返し続けた。

 スペイン代表からしてみれば、ピッチ外のアクシデントが足かせになったことは間違いない。大会直前にセルヒオ・ブスケッツに新型コロナウイルスの陽性反応が認められ、チームは一時隔離状態となった。

 大会前最後の実践となった8日のリトアニア代表戦は、U-21欧州選手権に出場していたU-21スペイン代表が代わりに出場している。集団感染は避けられたが、チームは予定されていたスケジュールをこなせなかった。

 この日の先発メンバーは準備不足を埋め合わせるための苦肉の策だったのかもしれない。右サイドバックにはマルコス・ジョレンテで、右インサイドハーフにはコケ。左サイドバックはジョルディ・アルバで、左インサイドハーフはペドリ。それぞれアトレティコ・マドリードとバルセロナのセットを移植している。

 センターバックのアイメリック・ラポルテは代表デビュー戦だったが、前方にマンチェスター・シティで同僚のロドリがいたことで最低限の呼吸を合わせることができたのかもしれない。ルイス・エンリケ監督の選んだ11人は応急処置のようなものだった。

スペイン代表の伝統

 全勝で優勝した2008年のユーロは例外として、スペイン代表はスロースターターだ。2010年のワールドカップは初戦でスイス代表に敗れたが、そこからわずか1失点で優勝。2012年のユーロでも初戦のイタリア代表戦はドローだったが、そこから無失点で決勝に進み、イタリア代表を4-0で撃破して連覇を果たした。

 2014年のワールドカップでも初戦でオランダ代表に1-5と惨敗。しかし、次戦でチリ代表にも敗れ、1勝2敗でグループステージ敗退となった。ポルトガル代表との初戦で勝ち点1を分け合った2018年のワールドカップでも、ロシア代表に敗れてラウンド16敗退。良くも悪くもスロースターターで、エンジンがかからないまま大会から姿を消すこともある。

 準備時間の短さがこの試合に影響したのであれば、スペイン代表は試合を経るごとに成熟していくはずだ。パフォーマンスを上げていけば、決勝トーナメントにピークを持っていくことはできる。しかし、歴史を振り返ればこのまま大会が終わってしまう可能性もある。

 今回のスペイン代表どちらになるか、初戦だけではそれを判断することはできない。1週間も経てば答えと思しきものが出ているだろう。

(文:加藤健一)

【了】