中盤の潰し屋

 フランスサッカー連盟(FFF)は2日、東京五輪に臨むU-24フランス代表メンバーを発表した。1984年大会以来となる金メダル獲得を目指す同国には、果たしてどのような選手が名を連ねたのだろうか。今回は、東京五輪本大会で注目すべきU-24フランス代表の5人をピックアップする。

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MF:リュカ・トゥザール(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)
生年月日:1997年4月29日(24歳)
20/21リーグ戦成績:26試合出場/1得点1アシスト

 ヴァランシエンヌの下部組織出身で、2015年夏にリヨンへと完全移籍。まだ19歳だった2016/17シーズンからレギュラーに定着し、アーセナルなどから興味を示されるまでに成長を果たした。そんな中、昨年1月にヘルタ・ベルリンへ活躍の場を移すことが発表。移籍金は同クラブ史上最高額の2500万ユーロ(約30億円)と言われている。それほど、価値と将来性のある選手と評価されたのである。

 フランス代表にはまだ招集されたことがないが、年代別代表でのプレー経験は実に豊富だ。2016年のU-19欧州選手権ではキャプテンとして母国を優勝に導いており、U-21フランス代表では24キャップを記録している。そして今回、東京五輪メンバーにも名を連ねることに。選手本人は「個人的な目標だったから、五輪に参加できることはとても光栄」と話していた。

 身長185cm・体重83kgの体格を誇っており、運動量が抜群に豊富。そのためピッチの幅広い場所に顔を出し、確実にボールホルダーを潰すことを可能としている。そうした激しく泥臭いプレースタイルゆえカードを貰うことも多いのは事実だが、それが対戦相手にとって大きな脅威となっているのだ。また、時折見せる強烈なミドルシュートも持ち味。東京五輪ではどのような活躍を見せるか。

ロシアワールドカップ優勝メンバー

MF:フロリアン・トバン(ティグレス/メキシコ)
生年月日:1993年1月26日(28歳)
20/21リーグ戦成績:36試合出場/8得点8アシスト(マルセイユ)

 2018年ロシアワールドカップ優勝メンバーの一人が、オーバーエイジ(OA)として東京五輪に参戦する。計8シーズン在籍した名門マルセイユではエースとして活躍し、公式戦281試合86得点61アシストを記録。281試合出場はクラブ史上4位、得点数86は同3位の成績である。そんな経験豊富な男のメンバー入りは、他の若い選手にとって大きな力になることだろう。

 今年5月にマルセイユからメキシコのティグレスへ移籍することが発表されたが、欧州ビッグクラブで見たかったと思うほどの実力があることに疑いの余地はない。右サイドを主戦場とするレフティーは鋭いカットインでDFを無力化し、高質な左足のキックで確実にゴールを仕留めることができる。ちなみに昨季のリーグ・アンではチームトップとなるドリブル成功数を記録している。グループリーグで対戦するU-24日本代表は、最大の注意を払わなければならない。

 ちなみにU-24日本代表OAの酒井宏樹とは昨季までチームメイト。過去に「僕が上手くいっているとしたら、それは彼(酒井)のおかげ」と話すほど、二人の相性は抜群に良かった。その酒井と、東京五輪グループリーグの最終節で対戦する。ポジション的にマッチアップする可能性は低そうだが、元相棒の目の前で輝きを放つのか。注目である。

ミランで一気に評価を高めた男

MF:テジ・サバニエ(モンペリエ)
生年月日:1991年12月22日(29歳)
20/21リーグ戦成績:27試合出場/5得点5アシスト

 これまで年代別含めフランス代表に招集されたことはなかったが、オーバーエイジ(OA)の一人として東京五輪に参戦することが確定した。29歳のMFは五輪に出場することを「全く考えていなかった」ようで、シルバン・リポル監督から電話を受けた際のことを「驚いたよ。とても嬉しかったけど、とにかく驚いた。でも、監督が自分を頼りにしているとわかった」と振り返る。そして「僕たちはメダルを獲得するために東京に行くよ」と意気込んだ。

 決して世界的に有名な選手というわけではないが、MFとしての質はフランス国内でも屈指のものがある。最大の武器はキック精度の高さと視野の広さを活かしたチャンスメイク能力で、2018/19シーズンにはリーグ・アンで14アシストを記録し、アシスト王に輝いている。また、昨季はアシスト数が「5」とやや物足りない成績となってしまったが、1試合平均のキーパス数「2.3本」はアンヘル・ディ・マリア、メンフィス・デパイに次ぐ3位の数字だった。東京五輪でもこの男のパスからゴールが生まれる可能性は高い。

 29歳のMFの特長としてもう一つ挙げられるのは、アグレッシブな守備だ。とにかくボールホルダーに対して厳しく、身長172cmという小さな身体を果敢に投げ出していく。そのスタイルゆえファウルを貰うことも多く、2018/19シーズンには強烈なタックルを繰り出しキリアン・エムバペを激怒させた。ちなみに昨季リーグ戦でのファウル数は58回でトップ10入り。U-24日本代表は色々な意味で注意が必要だ。

ミランで一気に評価を高めた男

DF:ピエール・カルル(ミラン/イタリア)
生年月日:2000年6月5日(21歳)
20/21リーグ戦成績:13試合出場/1得点0アシスト

 ASサン=プリエストから名門リヨンの下部組織に移ったのは2010年のこと。そこから順調に成長し、リヨンBでは主将も任されていた。しかし、2020年6月で切れる契約を延長することなく、他クラブへの移籍を決断。そこへテクニカルディレクターのパオロ・マルディーニ氏が直接獲得交渉に関与したことで、イタリアの名門ミランへの移籍が決定することになった。

 新天地デビューは昨年10月のヨーロッパリーグ(EL)、スラヴィア・プラハ戦だった。フランスの若きDFはここでハイパフォーマンスを披露し指揮官にアピールすると、以降もまずまずの出場機会を確保。さすがに主力の座に躍り出ることはなかったが、初の国外挑戦とは思えぬクオリティーを示した。シーズン中には「移籍の噂が出ているが、ミランはフランス人DFのポテンシャルを強く信じており、市場に出していない」と伊『カルチョ・メルカート』で報じられるなど、クラブのハートを掴んでいる。

 センターバックや左サイドバックでも問題なくプレーできるが、本職は右サイドバックである。クロスの質にやや物足りなさを残すものの、スピードとフィジカルに長けているため縦への推進力が非凡で、守備ではあらゆるタイプのFWを封じ込めることができる。まだまだ向上が必要だが、ビルドアップの貢献度も決して低くない。東京五輪で他国にとっての壁となる可能性は十分だ。

パワフルなゴールハンター

FW:アンドレ=ピエール・ジニャック(ティグレス/メキシコ)
生年月日:1985年12月5日(35歳)
20/21リーグ戦成績:35試合出場/16得点2アシスト

 フロリアン・トバン、テジ・サバニエと共にオーバーエイジ(OA)として東京五輪メンバー入りを果たすことになった。このベテランFWはフランス代表で36キャップを誇っており、2010年の南アフリカワールドカップや2016年のユーロ(欧州選手権)にも出場しているなど経験値が豊富。若い選手はもちろんのこと、トバンやサバニエにとっても頼りになる存在と言えるだろう。

 現在35歳であるが、ストライカーとしての輝きはほとんど失われていない。2015年より所属しているメキシコのティグレスでは今も主力を張っており、昨年にはFIFAクラブワールドカップとCONCACAFチャンピオンズリーグの両コンペティションで得点王に輝いている。そして今年2月にはクラブとの契約を2024年まで延長。昨季リーグ戦では最終的に16得点を挙げており、これで6シーズン連続の二桁得点となった。

 そんなベテランは身長186cmという恵まれた体格を誇っていて、そこから繰り出すパワーで相手を圧倒する。ゲームの組み立てなどの貢献度はあまり高くないものの、ボールが来れば迷わずシュートを狙いGKを襲うなど、良い意味でクラシカルなストライカーと言っていいだろう。東京五輪では吉田麻也や冨安健洋らを擁するU-24日本代表を含め、他国のDFにとってどこまで脅威となれるか。U-24フランス代表が上位へ進出するためのカギと言えそうだ。