勝負が決まった前半

プレミアリーグ第6節、アーセナル対トッテナムが現地時間26日に行われ、3-1でホームチームが勝利している。アーセナルの冨安健洋はデビュー戦から3試合連続で先発に名を連ねた。チームは大一番で3-1と大勝を収めたが、自身のサイドから加入後初の失点を喫している。(文:安洋一郎)
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 「今日の試合は我々が力強いスタートを切った。特に前半のあの時間帯は、これまで見た中で最高の試合だった」

 勝利したアーセナルのミケル・アルテタ監督はカメラを前に満足気に「ノースロンドン・ダービー」を振り返った。

 一方で、敗れたトッテナムのヌーノ・エスピリト・サント監督は、「私たちはうまくスタートできず、試合をコントロールすることができなかった。特に前半は非常に悪かった」と、アルテタとは対象的なコメントを残した。

 開幕3連敗の後に2連勝と調子を上げているアーセナル。一方のトッテナムは開幕3連勝こそ飾ったが、直近2試合は続けて0-3の大敗と調子を落としている中での直接対決となった。日本代表DF冨安健洋はデビューから3試合連続でスタメン出場している。

 試合は序盤から誰も予想していなかった展開で進んだ。

 開幕5試合でわずか2ゴール、決定率はわずか2.8%と得点力不足に悩まされていたアーセナルが12分、27分、34分と立て続けにゴールを決めたのだ。

 ホームでの3点リードのアドバンテージは大きかった。トッテナムは後半開始と同時に2選手を入れ替えて修正を図ったが試合をひっくり返すことはできず。79分に1点を返したが、3-1でアーセナルが「ノースロンドン・ダービー」を制した。

 アルテタとヌーノの言葉通り、試合の勝敗は3ゴールが入った前半で決まっていた。

 なぜ、これまで得点力不足に悩まされていたアーセナルが前半だけで3ゴールを決めることができたのだろうか。

エースが見せた特筆すべき動きの「質」

 アーセナルのホームでの「ノースロンドン・ダービー」は2019年9月以来の”有観客”で行われた試合だったこともあり、サポーターからの後押しが選手たちを勇気づけたことは間違いない。いつも以上に前線から激しいプレスを行うなど、スタメン出場した選手全員のコンディションが良かった。

 そして特筆すべき活躍を披露したのがキャプテンのピエール=エメリク・オーバメヤンだ。

 前節はボールをキープできず、不調気味だったオーバメヤンだが、今節はボールを引き出す動きと味方選手を活かすプレーの精度が抜群だった。

 右サイドでボールを受けたブカヨ・サカが縦に仕掛け、マイナス気味のクロスを中央に入ってきたフリーのエミール・スミス=ロウがゴールに流しこんだ先制点の場面。オーバメヤンはあえてファーポストにポジションを取ることで、スミス=ロウが入ってくるスペースを作り出してゴールを演出していた。

 また、自陣からのカウンターで生まれた2点目の起点となった場面。この時、トッテナムの右SBのジャフェット・タンガンガは前線に上がっており、右CBのダビンソン・サンチェスの裏には広大なスペースがあった。そのためオーバメヤンはサンチェス側でティアニーからのボールを引き出して、裏のスペースに走り出していたスミス=ロウにワンタッチでフリック。そのままスミス=ロウがエリア内まで仕掛け、マイナスのクロスをオーバメヤンが左足でゴールに流し込んだ。

 オーバメヤンの周りの選手を活かすプレーが非常に効果的だったことが、味方選手との連携で崩すことを得意としている2列目のサカやスミス=ロウのプレーを引き立てており、前半だけで3ゴールを奪う結果に繋がっていた。

トッテナムに狙われた冨安健洋

 初の「ノースロンドン・ダービー」でも右SBで先発出場した冨安健洋。

 プレミアリーグ第4節ノリッジ戦でのデビューから3試合連続で先発に名を連ねており、チームに合流してから1ヶ月も経過していないが、すでに不動の存在となっている。

 冨安は試合開始直後から前への意識が高く、特に前半は出足の早い守備で対峙した選手たちに思うような仕事をさせなかった。61分にはハリー・ケインのシュートのこぼれ球にソン・フンミンが反応するが、冨安が先にスライディングでクリア。集中した守備でピンチの芽を摘んだ。

 データ会社『Squawka』によると冨安はチーム最多の67回のボールタッチと8回のボール奪取を記録。英『Sky Sports』のレーティングでは1ゴール1アシストを記録したスミス=ロウに次ぐ10段階中「8」の高評価を得ている。

 この試合でも空中戦の強さは光っており、5戦4勝と好成績を収めている。また、データサイト『SofaScore』によると、これまで出場した3試合の空中戦勝率は87.5%を記録しており、ワイドの選手と競ることが多いとはいえ、素晴らしい成績であることは間違いない。

 一方で後半には自身のサイドから崩されて加入後初となる失点を喫した。

 61分にはケインに背後をとられ、決定機なシュートを打たれるなど、後半から徐々に冨安の背後を突き始めたトッテナム。70分には冨安のサイドにトッテナムはブライアン・ヒルを投入し、左サイドで数的優位の形を作って、明確な意図を持って冨安の背後を狙った。

 そして79分、オリヴァー・スキップからの縦パスを冨安がカットするもクリアが中途半端になり、ボールをヒルに奪われてセルヒオ・レギロン、ソン・フンミンと繋がれて失点した。

 失点シーンも含め、冨安は前への意識が高い故に、試合終盤にかけて自身の背後を狙われる場面が目立った。自身の裏のスペースを周りの選手と連携しながら、どのようにケアをするのか再確認する必要があるだろう。

(文:安洋一郎)